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インクルーシブ教育で健常児の勉強は遅れるかどうか、我が家の場合

ニューロダイバーシティ(脳の多様性)が社会に存在するのは、私たちの顔立ちに多様性があるのと同じで、犬の種類に多様性があるのと同じで、桜の木の種類にも多様性があるのと同じで、普通に考えれば当たり前のことです。なんですが今の社会ではそう受け取られていないですよね。

ニューロダイバーシティがなんて言葉がなくても多様性を理解し、尊敬し、受け入れる社会を作るのがゴールだと思うのですが、道のりは長いです。しかし先を見ると途方に暮れる。だから今できることをコツコツやる。

で、私のコツコツはインクルーシブ教育を推すことです。

子供が二人いますが、二人ともインクルーシブ教育を実践する小中学校で学びました。兄は発達障害児の枠で入り、弟は健常児の枠ででしたが、二人ともポジティブで素晴らしい学校生活を送りました。親としては泣けるほどありがたいことです。

また私も今の学校に勤める前は、インクルーシブ教育を実践するプリスクールで教えていました。アメリカのインクルーシブ学級には、Individualized Education Program (IEP) という個別の教育プランを持つスペシャルニーズの生徒たちが、一つの教室に最大で4割まで在籍するクラスです。

親として、教師として、アメリカでこのインクルーシブ教育の経験を通して感じたのは、健常児と障害児が一緒に学ぶベネフィットはとても大きいということ。双方にとってです。

日本の状況はわからないのですが、アメリカでは特別支援学校の教室には(理由があって)教材やおもちゃ、本、アクティビティ、校外活動など、学びの要素が全体的に減ります。つまり環境からくるインプット量が絶対的に減る。生徒たちの学びの特性に合わせているのでしょうが、一見して何も吸収していないようでも、2割は理解してるかもしれないし、実は全て理解しているのかもしれない。そういった生徒のポテンシャルに目を瞑っている可能性が大いにある。

また健常児の行動からの学びも大きい。

挙げればキリがないかもしれませんが、上の2点だけでも障害児がインクルーシブの教室に入ることのメリットは大きいです。

では健常児が受けるメリットは何か。

日本でインクルーシブ教育の是非が色々と議論されていますが、一番よく聞くのが「勉強に遅れが出るのでは」かもしれません。ペースが遅い子供に合わせると、全体のスピードが落ちるという懸念。

ここでもアメリカの例でしか話せませんが、健常児枠で入った私の次男の経験からいくとそれは全くありませんでした。むしろ先生の人数が増え大人の目が届きやすく、一斉授業ではなくプロジェクトベース。結果的に皆んなにわかりやすい(日本は一斉教育が主ですが、そこから変えないとインクルーシブは難しそうだなとは思います)。とは言え受け持つ先生によってもサポートの量はかなり違ったようですが、先生は一人ではなく最低でも3人いたので、助けてくれる先生は必ずいた。

もう一つの利点。むしろこっちの方がメインで大切なんですが、「世の中には学び方の違う人々がいる」と学べたこと。これは絶対に貴重。メガネをかけて学ぶ人がいれば、スピーチ・デバイスを使って学ぶ人もいて、鉛筆で書く人がいれば、パソコンで書く人もいる。一人で学ぶ人がいれば、大人がいつも側でサポートしながら学ぶ人もいる。床に座って話を聞く人がいれば、立ち上がって教室を歩きながら話を聞く人もいる。そんな感じ。

そしてこの何が凄いのかというと、人はみんな違うということを肌で吸収して理解すること。毎日同じ教室で息をして、学んで、笑って、怒って、泣いて、一緒に過ごす。

すると、

大人になった時に
多様性が空気のように
自然なものとなる

んですよ!!!!


ニューロダイバーシティを社会に受け入れてもらうには、大人がその環境を作って子どもたち与える。その環境で毎日生活する。そこなんだなと私は思います。個人的には高校とかじゃ遅いと思う。幼稚園、保育園から始める。

じゃあなんでこんなにも、その先にあるニューロダイバーシティが当たり前な社会を押しているのかというと、その社会がもたらすベネフィットが大きいからです。大きい。それは何か。長くなったので持ち越します。



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