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グ・リ・コ

登場人物

小宮 新(こみや あらた)
男子高校生。

ミチル
階段に座っていた青年。


○ 道

  小宮 新(17)、両耳にイヤホンをして道を歩いている。ぶすっとした顔。
  適当に着崩した制服と、背負った通学カバン。
  しばらく歩くと、いつも通る階段の下に見慣れない青年が座っている。青年、ただ空を見上げている。立ち止まってその姿を見つめてしまう新。
  青年、それに気づき笑顔になる。口が動く。
  が、イヤホンをしている新には届かない。新、急いでイヤホンを外して適当にまとめ、ポケットにしまう。青年に少し近づく新。


青年「おかえり」

  つられる新、少し微笑む。


新「ただいま、?」

  青年、笑顔のまま新の歪に膨らんだポケットを指差す。


青年「何聴いてたの」

  新、ポケットを一瞥した後青年を見て、


新「好きなバンドの新曲・・・なぁ」

  言葉を遮って


青年「ねぇ、グリコしない?」

  立ち上がり、お尻をパンパンとはたく青年。新、思わず口が開いてしまう。


新「ヘァ?」

  青年、階段を一段上がるとこちらを振り返って、


青年「僕、ミチル。君は?」

  新、その姿を見上げて


新「・・・新」

  肩を上げ微笑むミチル。


ミチル「ほらやろう、アラタ」

  新の腕を取り、階段の上へ登っていく。


新「おぁっ、ちょ・・・(何故か少し楽しくなり笑顔に)」

○ 階段の上

  ミチル、階段の上でまた空を仰ぐ。何か考えているような表情。
  その姿を横目に見ながらカバンを下ろす新。


新「(グーを出して)ほい」

  空から新の拳に視線を移し、また笑顔になるミチル。同じくグーを出す。


新・ミチル「グーリーコ」

  声を揃える二人。新がグーで勝つ。


新「グ・リ・コ 」

  一段ずつ降りる新。三段降りてミチルの方を振り返り笑う。つられて笑うミチル。またグーを出す二人。今度はミチルがチョキで勝つ。


ミチル「ちょっと元気無さそうだったね?」

  文字数とルールを無視して新と同じ段まで下がるミチル。
  真ん中の手すり越しの二人。
  新、驚くも笑顔になる。


新「何それ、地元ルール?」

  手すりに両手を置き、微笑むミチル。


ミチル「そんなとこだよ」

  またミチルが勝つ。今度はパー。三段だけ降りる。


ミチル「パッとしない顔してた」

  チョキで新が勝つ。少し考えてから、


新「ちょっとつまんなくてな、学校が」

  三段降りる。目線が合う。


ミチル「なんで?」
新「ノリが合わねーの、なんでだろうな」

  目をそらす新。その横顔を見つめるミチル。


ミチル「ふーーん」

  新の目線の先にグーを出すミチル。新、笑ってミチルの方へ向き直り、グーを出す。
  ミチルが勝つ。チョキ。また三段降りる。


ミチル「小さなことだよ、気にしない、気にしない」

  言い終わって振り向き、微笑むミチル。
  呆れたように微笑み返す新。


新「そういうわけにもいかねーの」

  またジャンケン。ミチルが勝つ。パー。三段降りる。


ミチル「パーッと遊んで忘れなよ」

  新がパーで勝つ。考えた後三段降りて、


新「パーッと悩みも飛んでいく?」


  勝った方のパーの手を見せながら手すりに体をもたれかける新。ミチルを見る。
  ミチル、微笑むだけ。気づけばミチルは最後の三段。


新「・・・それでもダメな時は?」


  ミチル、何も言わずにグーを出し、ジャンケン。ミチルがグーで勝つ。


ミチル「グングン広がる空を見る!」

  三段降りて一番下にたどり着くミチル。空を仰いだ後、振り返る。笑顔。
  新、ハッとして自分も空を仰ぐ。大きな空。雲がゆっくり流れている。


新「・・・そうするか」

  笑顔になる新。ミチルの方へ目をやる。が、そこには誰も居ない。


新「・・・」

  階段の上から風が吹く。
  振り向く新。階段を上がっていく。




                                      終



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