プライシング/価格戦略の本を30冊以上読んでわかったオススメ書籍
「プライシングの本でオススメのものはありますか?」と本当によく聞かれます。
ふと、丸の内の丸善書店でプライシングのコーナーを探したことを思い出しました。価格に関する本は、15冊程度しかなかった。。どこの大型書店に行ってもあるのは数冊程度。。なんならプライシングコーナーがない本屋ばかり。。。ということを思い出し、オンライン上でどこよりも充実したプライシング本のコーナーを作ろう!ということでこのnoteを書くことにしました!!!
*2024年8月に加筆・修正をしました。
ぜひ寄ってみてくださいね😊
簡単な自己紹介
私はプライシングスタジオ株式会社CEOの高橋と申します。
プライシングスタジオは、2019年に設立したスタートアップ企業で、かれこれ120社超の企業のプライシング戦略策定・価格調査のご支援をさせていただきました。下記に当社の支援事例記事を掲載しています。
*オススメの本には、タイトルの横に☆をつけています。
*また本ブログは筆者個人の見解になりますこと、ご了承ください。
0.値決めの教科書 勘と経験に頼らないプライシングの新常識☆
こちらは私が執筆した本になります。
本書は多くのプライシング本とは異なり、広い知識を網羅的に解説している本という訳ではありません。そういった本は数多く(下記でご紹介します)、充実している所感です。
本書はあえてそうではなく、1つの手法(PSM分析)を深掘り、体系的かつ実践的に解説しています。全ての事業に適応するには少し網羅性に欠けますが、基礎的な内容かつ汎用的な手法を紹介しているため、まずは入門書としてご活用ください。事例も多めです。
1.価格の掟☆
世界最大手の価格コンサルティング会社の共同創業者であるハーマン・サイモンの著。世界的に読まれているプライシングの入門書です。
プロスペクト理論や価格のアンカー効果など価格の心理学、様々な価格戦略、意思決定のポイントなどが事例を交えながら網羅的に紹介されています。
端的でわかりやすく、サクサク読めるのもいい点と思います。読み物としてもとても面白く、プライシングを勉強するならこの本から読むことをオススメします。
2.価格戦略論
「1.価格の掟」を執筆したサイモンの本です。
価格の掟と比べ、約500ページとボリューミーにしっかり解説されています。個人的に難易度はかなり高く、初心者にはオススメできない一冊ですが、(世界的に読まれている古典的な文脈でも)学習を進める中でいつかは読みたい1冊です。
従来型の「コストから発想するプライシング」に代えて、「顧客価値から発想するプライシング」を提唱している点は非常に現代のビジネスにマッチしていると考えています。
3.稲盛和夫の実学 経営と会計
たったの2ページですが、「値決めは経営」という章タイトルで価格の重要性について解説しています。
と記載があり、価格の本質をつく素晴らしい一冊です。
4.ハンバーガーの教訓
マクドナルドの経営哲学について解説している本で、この本も2ページだけだが、価格についての記載があります。
「地域別価格導入」の意味、原価から計算するコストベースの価格設定をしないということ、「プライスセンシティビティ」(価格への受容性)を考慮し1年がかりで価格を決めたことなど、見習うべきことが盛りだくさんです。
5.BCG経営コンセプト 構造改革編☆
本書では、第2章で30ページにわたってプライシングについて解説しています。
まず、BCGが世界各国の主要企業を300社以上リサーチし、プライシングに対する戦略、戦略実行の戦術、ツールやITの導入状況、組織能力に対する考察があります。その考察によると、収益率が高い企業のプライシングアプローチは共通しているという点がとても面白かったです。
他にも、外食チェーンや小売のケーススタディが紹介されており、関連するビジネスのプライシングの事例を学ぶにはうってつけの1冊です。
6.価格優位戦略 7.マッキンゼープライシング
マッキンゼーのプライシング本である2冊です。東証一部上場企業が、価格を1%改善した場合、平均23.2%も営業利益が改善すると提唱している本で、価格の重要性を説いてくれる貴重な1冊です。
戦略コンサルティングファームの本だけあって、大きな視点から解説が展開されます。SMB向けの事業者にはあまり参考になる点は少ないように思いますが、エンタープライズ企業の全社的なプライシング戦略を検討する際は有用な点が多いように感じます。
8.プライシングの技法☆
読み物としても非常に面白いですが、内容もかなり勉強になると思います。
広い知識を網羅的に解説している本のうちの1冊であり、他の本と比べ事例が多く、解説もわかりやすいため、読んでおくことをオススメします。
9.プライシング戦略×交渉術 実践・B2Bの値決め手法☆
プライシングの技法の著者下氏の2冊目の本になります。
B2B事業(特に下請け企業や中小製造業)におけるプライシングと、取引先に対する値上げ交渉に関するお悩みについて相談されるケースが非常に多く、関係される方は多いに悩まれていると想像しています。
それに対する解決策やノウハウを提唱する本はこれまでない(あったとしても非常に稀)でありましたが、本書が風穴を開けたように思います。事例も多く、内容も基礎的かつわかりやすい1冊で、B2B事業(特に下請け企業や中小製造業)には強くオススメしたいです。
10.利益を最大化する価格決定戦略☆
プライシングコンサルティング事業を展開する当社プライシングスタジオでは、本書を入社時の課題図書としていた時期がありました。
というのも、基礎的な本でありながら、内容も網羅的、かつサブスクリプションやダイナミックプライシングなど昨今のトレンドもある程度触れられているため、初学者にはうってつけな1冊だからです。
プライシングの技法か本書のどちらか1冊は読んでおきたいところです。
11.日本一わかりやすい価格決定戦略
2005年に発売された本で、タイトルにある通りものすごくシンプルにわかりやすく解説されています。具体的にどうやって価格を決めるのか?という疑問に対し、コンジョイント分析やPSM分析などの分析手法を紹介しており、他のプライシング本と比べると、かなり実用的な1冊です。(そして、基礎的でわかりやすい。)
12.売上を伸ばすメニューブックの作り方
飲食店経営に特化して、メニューブックの作り方をひたすら解説している本ですが、価格に対する学びもあります。
居酒屋業態では、メニューの中心価格帯の約6倍が客単価になるなど、飲食店経営をするにあたっては読んでもいい本だと思います。
13.良い値決め悪い値決め
キャプティブプライシングなど、いくつか代表的な価格戦略を紹介している本です。ワーディングなど工夫がされており、なかなか面白く理解できますが、網羅性に欠けているのと、実践までおちていないため、必読とはいえません。
14.正しい値決めの教科書
会話形式で、担当者が社長などとやり取りをしながら価格を決める過程が本にされています。小難しい本が苦手な方は楽しく読むことができます。原価計算についてかなり詳しく解説している本ということもあり、インターネットビジネスなどではなく、原価がビジネスに直結する業界(製造、小売、飲食など)の方向けの本となっています。
15.戦略実践ノート
野村総合研究所が2004年に出した本です。第3章で、近年注目されているバリュー・ベース・プライシングについて紹介しています。コストや競合起点ではなく消費者の購買意欲や価値、値ごろ感を重視することの重要性を説いています。
16.航空産業入門
航空産業について網羅的に解説されている(ように思えた)本ですが、プライシングについてもしっかり書いてあります。とはいえ、航空産業などで使われるレベニューマネジメント(いわゆるダイナミックプライシングに近い概念)について深掘りしているため、航空産業のダイナミックプライシングについて興味がある方向けの本になります。
17.価格戦略入門
名前の通りプライシングの入門書です。「価格戦略とは何か」というテーマから始まり、様々な業界の事例に触れつつ、幅広いテーマを扱っています。あくまで入門書ですので、価格について知識が全くない方向けで、知識を深めたり、実践的な知識が欲しい方には適していません。
18.プライシング戦略-利益最大化のための指針
トーマス・T・ネイゲルとリード・K・ホールデンによるおよそ500ページにわたる超大作です。「価格設定は決定的瞬間であるーマーケティングの全てが価格決定に集中するときである。」という序文から始まり、なかなかテンションが上がります。プライシング起点で、財務分析や競争、マーケティングミックス倫理と法則などテーマは多岐に渡ります。率直なところ、広げすぎて実践に全く落ちてこない点と、学術寄りになっていることから、プライシングについてかなり学習が進んできた方や、他の本では物足りない方向けの本になります。2004年に日本語版が出版されたことで若干考察が古い点と、ページ数が多い点、定価で手に入らないという点から、あまりオススメはあまりできません。
19.なんで、その価格で売れちゃうの?
50以上の事例から、なぜそのビジネスではその価格が成立するのかをプライシング理論に触れながら紹介している非常に面白い本です。かなり読みやすく、2時間もあれば完読できるので、教養を深めたり、価格の魅力についてサクッと知りたい方にオススメの一冊です。
20.価格と顧客価値のマーケティング戦略-プライス・マネジメントの本質
1999年初版ということもあり、現代だと若干物足りないか、、?という感想もありつつ。。マクドナルドなど27社の事例を混ぜつつ、バリューマップやコンジョイント分析など様々な分析手法を紹介しています。
21.新しい「価格」の教科書 値づけの基本からプライステックの最前線まで
今までにない切り口の本だと思いました。
プライステック(著者の造語)について書いている本は他にない(?)ように思います。ビジョナリーに価格の未来が描かれており、とても面白く拝読させていただきました。
22.限界利益分析による価格決定戦略
限界利益をしっかり考えて価格や値決めルールの運用をしっかり定めていきましょうというコンセプトの本です。売上高だけでなく、仕入原価、材料費、外注加工費などの変動費をどう扱っていくかなどが解説されており、コスベースのプライシングを強化していきたい方に適した本です。
23.攻めと守りの競争価格戦略
マーケティングをどう考えていくか、原価管理をどうするか、高価格戦略や低価格戦略はどうすればいいかなど、経営戦略論を交えながら、マクロ的な視点から解説している本です。
24.価格の心理学☆
個人的に好きな1冊です。価格の心理学を工夫して、カフェの経営を試行錯誤する会話形式になっています。非常に楽しく、網羅的に価格の心理学を学ぶことができます。初学者向けの本になります。
25. スマート・プライシング
ペンシルベニア大学の教授であるジャグモハン・ラジューやZ・ジョン・チャンが書いた本です。プライシング界隈では有名な彼らがどんな考察をしているか、オタクにとっては見逃せないでしょう。正直なところ、価格決定に携わることになった現場担当者や、日々価格について頭を悩ませている経営者向きの本ではありません。あくまで読み物です。
26.値決めのためのマーケティング戦略☆
菅野誠二氏がマッキンゼー、ディズニー、ネスレで実践してきた値決めの手法について紹介している名著です。個人的にはかなりオススメで、非常に読みやすいです。
顧客価値創造プライシング(同一商品でも異なるセグメントのお客様には、時と場合によって感じている価値が異なるので、それぞれに価値を創造し、最適価格をつけて儲けるための手法)を提唱しており、その実践方法まで丁寧に解説されています。
価格調査に関しても、調査分析の基礎から、プロフィットツリー分析や、コンジョイント分析、コレスポンデンス分析、PSM分析、ポケットプライス分析、価格弾力性分析など多くの手法が紹介されており、どの本よりも実践に移しやすい一冊です。
27.企業成長と価格行動
価格競争の展開、キリンビールの誕生からどのような歴史をたどり価格に向き合ってきたかを紹介している本です。およそ300ページにも渡り、プライシングの一事例を深掘りしている本も珍しいので貴重な一冊といえるでしょう。
28.プライスマーケティング
プライシングの基礎概念についてわかりやすく説明している本ですが、独占禁止法などプライシングで法律に触れる恐れがあるポイントを紹介している非常に珍しい本です。この種の解説は、なかなか見ないので、重宝する日もあるような気がします。
29.勝つための価格戦略とそのメカニズム
様々な価格決定手法を紹介しており、中でも需要志向価格設定法をかなり詳しく解説している本です。
需要志向価格設定法を実施するために、直接価格評価法、診断法、知覚価値テスト(PVP)、ゲーバーグランガー、バリューエンジニアリングの考え方を応用する分析手法、コンジョイント分析、PSM分析など、プロファームでも実践される手法を紹介しているなかなか珍しい本です。社内に1冊あると重宝するかもしれません。
30.絶対に儲かる「値上げ」のしくみ、教えます
①値段を上げる、②客層を変える、③情報を付加する、④経営を回す、の4つのステップを軸に展開する本です。値上げをするとどうなるのか、受け入れてもらうためにどう価値を付加するか、それをどうプレゼンするかという内容の本であり、プライシングについて解説している本ではないため、感想は割愛します。
31.ダン・S・ケネディの世界一ずる賢い価格戦略
プライシングのハウツー本というよりは、「今のあなたの価格に対する考え、間違っていませんか?」という角度から話が進んでいきます。自己啓発本に少し似ている気がします。
32.価格と儲けのカラクリ
50以上の業界について、それぞれどのように収益を上げているか、価格に触れつつ紹介している本です。各業界の事情が知りたい方向けの本になっています。
33.価格はアナタが決めなさい。
これはBtoB輸入ビジネスについて書いてある本で、プライシング本ではありませんので割愛。
34.B2B事業のプライシング戦略50のチェックリスト
50の項目からプライシングに間違いはないか解説してくれている本です。いい内容の項目もあるが、それは違うのではないか、という項目も含まれており、チェックリストとしての活用はあまりオススメできません。
35.このブランドに、いくらまで払うのか
「ブランドの特定部分に消費者が付与する支払価値を解明する」という非常に意義がある意義のあるテーマの本です。ブランド思考の商品展開をしている企業の方は一読することをオススメします。
36.値決め経営 32.儲けの9割は「値決め」で決まる!
15,000円+税。。。初めはすごく驚きました笑 さすが価格を語るだけはある。ついついとんでもなく示唆に富んだ本だと思って、買ってしまいました。それぞれ収益改善コンサルタントである西田順生氏の本になります。同作者ということもあり内容がかなり被るので、まとめて紹介します。
この本は、製造業などのモノづくり企業に特化した内容になっており、彼が考案した収益改善プログラム(IPP)のノウハウを体系立てて紹介しています。徹底的な原価管理と値決め、その運用まで非常に丁寧です。さすが1.5万円!製造業などのモノづくり企業の方で、コンサルティングを依頼するにはお金が、、という方は一度この本の内容で業務改善を試してみるといいでしょう。
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