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【4/1〜施行】ユニクロ・リンガーハットも対策済!消費税「総額表示義務化」でやるべきたった1つのこと

2021年4月1日から義務化される、消費税「総額表示」。

これまで、「1480円(税抜き)」と表記していた料金を、「1628円(税込)」など、総額で表示をすることが義務化されたという事です。

ただ表記を変えるだけだと、顧客にとって、支払い金額は同じでも、あたかも値上げしたかのように感じられてしまう不安が残ります。明日から売上が激減、、なんてこともあるかもしれません。これでは、メニュー(料金表)を変えただけで夜も眠れなくなってしまいます。

価格変更を実施する企業も数多く報告されています。

そこで、「そもそも総額表示とは何か」「誰が対象なのか」「何に気をつければいいのか」「どうすればいいのか」など詳しく解説したいと思います!

消費税「総額表示義務」の概要

消費税「総額表示」は、商品を販売したりサービスを提供したりする「消費税を納める義務がある事業者」に対して2021年4月1日から義務化されます。

これまで(2013年10月1日から2021年3月31日)は特例により、下記のように「税込価格と誤認されないように対応していれば、表示する価格が税抜価格であっても問題ない」とされていました。

<2021年3月31日までOK、4月1日からNG>
(1) ○○○円(税抜き)
(2) ○○○円(税抜価格)
(3) ○○○円(税別)
(4) ○○○円(税別価格)
(5) ○○○円(本体)
(6) ○○○円(本体価格)
(7) ○○○円+税
(8) ○○○円+消費税
(9) ※表示価格は税抜です
(10) ※価格はすべて税別価格です

しかし、2021年4月1日以降、値札やチラシなどにおいて、商品やサービスの価格を表示するときに、消費税額を含めた価格を記載しなければなりません(※消費税額には、地方消費税額も含める)。例えば、価格表示は、(商品やサービス、事業者によってさまざまな方法がありますが、)税抜価格 1,000円の商品であれば、値札等に消費税(10%)相当額を含めた「1,100円」と表示する必要があるという事です。

消費者にとって「税抜価格表示」では、レジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分かりにくく、また、同一の商品やサービスでありながら「税抜価格表示」のお店と「税込価格表示」のお店が混在しているため価格の比較がしづらいといった課題が残ります。

そこで、消費者は、いくら支払えばその商品やサービスが購入できるか、値札や広告を見ただけで簡単に分かるようになりますし、価格の比較も容易になりますので、それまでの価格表示によって生じていた煩わしさが解消され、消費税に対する国民の理解を深めていただくことにもつながると考え、実施するようです。

消費税「総額表示義務」の対象

財務省によると、対象は以下のような事業者になります。

消費税「総額表示」の義務付けは、消費者に対して商品やサービスを販売する課税事業者が行う価格表示を対象とするもので、それがどのような表示媒体によるものであるかを問いません。具体的には、以下のような価格表示が考えられます。
・値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログ等への価格表示
・商品のパッケージなどへ印字、あるいは貼付した価格表示
・新聞折込広告、ダイレクトメールなどにより配布するチラシ
・新聞、雑誌、テレビ、インターネットホームページ、電子メール等の媒体を利用した広告
・ポスター など

※ 「総額表示」の義務付けは、価格表示を行う場合を対象とするものであって、価格表示を行っていない場合について表示を強制するものではありません
※ 商品カタログなどは発行後も一定期間利用されることから、平成16年4月前に作成された税抜価格表示による商品カタログ等を使用する場合には、価格表(「税抜価格」と「税込価格」を対比したものなど)を挟み込んでいただくなど、消費者の誤解を招かないような対応をお願いします

基本的に、B2Cサービスを展開している事業者は該当すると考えるべきでしょう。

3つの注意点

1.大幅な顧客離れが懸念される

こちらのnoteでも解説しましたが、990円から1,090円に値上げをした場合、大幅な顧客離れが発生するといったような、ある一点を超えたら大幅に顧客が離れるポイント(価格の閾値)が存在します。

もし、現行価格が「1,480円+税」で、価格の閾値が1,500円だった場合、価格の変更がなくとも、「1,680円税込」と表記することになりますので、大幅な顧客離れが発生する可能性があります(実際の支払い価格に変化がなくても、顧客の知覚する価格が変わっているため、このような現象は想定されます)。

Netflixの場合、1,490円が1,639円と表示されるだけで、約14%の解約が想定されます。MRR1億円のサブスクリプションビジネスの場合、年間2億円の売上減が想定され、決して侮ることができません。当然、新規顧客獲得にも影響するため、被害は計り知れません。

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一度、顧客の支払いに対する意欲調査を実施し、税込表示にすることで価格の閾値を跨ぐ場合、価格の変更を検討するべきでしょう。

2.利益が少なくなる

顧客離れを懸念し、税抜き1,480円を税込1,480円にすることを考えている方も多いでしょう。これでは、利益率が10%も減少してしまいます。

一度、値上げの許容範囲を分析し、表記価格を1円でもあげる事が出来ないか検討するべきでしょう。

3.利用規約違反をしてしまう

いざ価格を変更しよう!と意気込んでも、(これまで価格変更を行ってこなかったサービスでよくあることですが)、利用規約が障害となり、価格変更ができない場合があります。

<一例>
*お客様は本サービスの登録の申込みの時、月額契約と年額契約のいずれかを選択することができます。その場合、次の各号の事項を考慮しなければなりません。
•年額契約は、お客様が設定を変更しない限り、利用契約と同一条件で自動更新されます。お客様は、契約期間終了後に、登録項目の更新、月額契約への転換などができます。

価格変更を検討する場合は、一度法務チェックをした上で、価格変更をしましょう。

やるべきたった1つのこと

価格の変更有無に関わらず、顧客の支払い意欲調査を実施しましょう。

支払い意欲調査を行うことで、価格の閾値が明らかになり、「価格を変更するべきか」、「そうでないのか」が明らかになります。ここでは、外注で実行する場合と、自社での実行方法を紹介したいと思います。

もし、支払い意欲調査と意思決定が、2021年4月1日に間に合わない場合、税抜き価格を税込価格とし(実質値下げを行う)、支払い意欲調査後に、速やかな価格変更をオススメします。

ちなみに、「価格変更を実施した際の解約率を分析し、変更の意思決定をする」方法はオススメできません。一度、顧客に定着したイメージはなかなか払拭できません。

「値上げにより、売上3割減、価格を戻しても、売上が回復しなかった」、「値下げをしても、顧客数が変化せず、単純に値下げ分の売上が減少した」こんな話はよく聞きます。

価格をいじって検証する方法はあまりにもリスクが大きすぎるのです。

1.支払い意欲調査を外注する

ここでは、リサーチ会社、コンサルティング会社、ツール導入の3つの方法について紹介します。個人的には、ツール導入が最も費用が安く、意思決定に使いやすいという観点からオススメです

A.リサーチ会社

 マクロミルのPRICE2や、インテージのネットリサーチパッケージ | 価格調査を利用することで、支払い意欲調査を行うことが可能です。

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メリットは、彼らの持つアンケートパネルに対し、適切なアンケート調査を実施することが可能です。自社でアンケートを回収する手間もかからず、アンケート作成のプロフェッショナルによる価格分析に特化したアンケートを実施するため、回答・交渉バイアスを排除した分析が可能になります。

デメリットは、競合が少ない新規サービスや、高付加価値のサービスを扱う場合、ユーザーの居住エリアが限定的な場合など、アンケートパネルの半数以上が実購買者のペルソナと一致しない場合、パネルは、商品のイメージが湧ず、はちゃめちゃな回答をする恐れがあります。その場合、アンケート結果、分析のアウトプットは全くの無意味になってしまいます。

消費財や大衆的に浸透しているサービスなどに適した方法となります。

また、あくまでもアンケート結果を集計したアウトプットに限るため、価格戦略構築にはファクトが物足りません。調査結果を見るだけで意思決定できる、プライシングの経験者向きな方法になります。

B.コンサルティングファーム

BCGや、マッキンゼー、アクセンチュア、サイモン・クチャーアンドパートナーズなど、プライシングを得意とするコンサルティングファームが存在します。

彼らに発注すると、適切なアンケート調査、価格分析、戦略立案、事業に影響が限りなく低い範囲でのPoCなど、必要なことは全てやってくれるでしょう。

数千万円から数億円の発注単価になりますが、費用対効果がそれに見合う場合、申し分ない選択肢となるでしょう。

C.ツールを利用する

私たちプライシングスタジオが運営している「Pricing Sprint」を活用することで、適切なアンケート調査、価格分析、戦略立案が可能です。また、消費税「総額表示義務」に備えた、価格分析の経験もあります。

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Pricing Sprintは、実購買者に対し、専門のコンサルタントが作成したアンケートを配信できるシステムの提供、アンケート結果をもとに価格戦略立案まで可能です。

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自社サービスで恐縮ですが、アンケート回収のリソースが割ける場合、最もオススメの方法になります。支払い意欲調査の実施を検討している場合は、ぜひ一度ご相談ください。

2.自社で支払い意欲調査を実施する

自社で最も簡単に支払い意欲調査を実施する方法は、PSM分析を実施することです。私たちが運営している「プライスハック」でも紹介している分析になります。

PSM分析(価格感応度分析)とは、バリューベースの価格設定を実現するために、顧客の支払意欲を調査するために使われる手法です。1976年にオランダの経済学者VanWestendorpによって開発されたことから、Van Westendorpモデルと言われることもあります。PSM分析を応用することで、商品・サービスがどの程度の価格なら最も顧客に受け入れられるかを把握でき、売り上げや顧客数を最大化できる価格を試算できます。

PSM分析の方法・手順
一般的にPSM分析は、次の2段階のステップでおこなわれます。

ステップ1.アンケート調査
PSM分析では、アンケートを通じて、実際に顧客が製品・サービスに対して、どれほどの支払意欲を持っているのかを調べます。

PSM分析で実際に使用されるアンケート項目は次の4つです。

<PSM分析のアンケート項目>
①「その製品・サービス」について、あなたが高いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
②「その製品・サービス」について、あなたが安いと感じ始める金額はいくらくらいですか?
③「その製品・サービス」について、あなたがこれ以上高いと検討に乗らない金額はいくらくらいですか?
④「その製品・サービス」について、あなたがこれ以上安いと品質や効果に不安を感じる金額はいくらくらいですか?

直接的に購入したい価格を尋ねるのではなく、製品・サービスの価格に対する顧客の感覚を把握します。

ステップ2.可視化
次に、価格調査の結果を集計し、以下のようにグラフに回答者を累積してプロットします。

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X軸が価格を、Y軸が当てはまる顧客の割合をあらわします。
価格が上がると、「安すぎて品質が低い」「安く感じる」と思う顧客が減り、「高すぎて検討に乗らない」「高く感じる」と思う顧客が増えます。

価格設定の参考となる4つの交点がわかります。

最適価格
最も価格拒否感がないと見られる価格
妥協価格
高い・安いの評価が分かれる価格
上限価格
これ以上高くなると、消費者の購入されなくなると見られる価格
下限価格
これ以上安くなると、消費者が「品質が悪いのではないかと不安になる」と感じる価格さ

交点の価格を参考にすることで、価格設定に目安をつけることができます。

一方で、PSM分析の交点はわかりやすい反面、正確性にかけるという欠点があります。実際には上限価格以上でも購入が検討に乗る人はいますし、同様に下限価格以下でも品質が悪いと思わない人が存在します。最適価格に関しても、本来顧客が最大化する価格は安すぎて品質が低いと思う人と高すぎて検討に乗らないと思う人が最小となる価格で、必ずしも交点と一致しません。PSMで収集したデータをプロットするだけでなく、集計して価格ごとの購買人数を推計した方が正確な結果となります。

しかし、高すぎて検討に乗らない価格に着目することで、価格の閾値を超えるかどうかは判別可能です。

まず、PSM分析を自社で実施してみて、税込価格が閾値を超えない場合、税込価格を表示する。超える場合にのみ、プロコンサルに発注し、価格変更を実施する。が、最も費用的にはお得な方法になります。支払い意欲調査の実施を検討している場合は、ぜひ一度ご相談ください。

事例紹介

1.リンガーハット

リンガーハットは「総額表示義務」を考慮し、2021年3月1日(月)にメニューの価格表示方法を「総額表示」に変更し、同日より商品の価格改定を行いました。

「総額表示」にした場合、多くの商品で端数ができることから、税込価格をキリのいい数字に統一しています

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これを見ると、全ての商品で値上げを実施しているわけではありませんが、よく注文されるであろう主力商品は値上げをしています。あまり注文されないであろう商品は値下げを行う事で、値上げに対するマイナスの印象を緩和する狙いがあると考えられます。

2.ユニクロ、GU

日経新聞によると、ユニクロやGUは値下げする事を発表しました。

ファーストリテイリングは4日、傘下の「ユニクロ」と「ジーユー」の全製品について12日から約9%値下げすると発表した。4月から消費税を含めた「総額表示」が商品やサービスの価格で義務化されることに伴い、現行の税別価格をそのまま税込み価格に切り替える実質的に値下げになるお得感を打ち出し、消費者の購買意欲を高める狙いがある。

また、「¥1,990+TAX」 から、「¥1,990+THANKS」 へ変えた事で、話題になっています。

このように多くの企業で何かしらの施策がとられています。

まとめ

B2Cサービスを展開している事業者にとって、2021年4月1日から適応される、消費税「総額表示義務」は避けて通ることができません。価格を税込で表示するだけで、顧客の価格に対する印象は大きく変わってしまう可能性があります。ただ表記を変えるだけ、税抜き価格を税込価格へ値下げするだけでは、事業に対し大きなリスクを孕むことになります。

顧客の支払い意欲の調査を、自社での実行が難しい場合、リサーチ会社やコンサルティングファーム、プライシングツールを活用し、最適な意思決定をすることが求められます。支払い意欲調査の実施を検討している場合は、ぜひ一度ご相談ください。

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