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ロニー&ペイジの憂鬱な荒野の走馬燈

「とっとと殺れ!」
鈍い鉄が弾けて車体を揺らした。
これで多分三両目はもうだめだ。
目がもう一つあれば正確な判断ができるだろうが、追われてる時は二つで終いだ。今日の仕事分は捨てるしかない。
俺は燃料をくべた。青い炎が頬を照らす。目に悪いっちゅうの。
「ペイジお前死にたいのか!早くアイツらを爆破しろ!」
「なかなか狙いが定まらなくて!」
六駅目。
真っ暗だった線路にようやく明かりがやって来る。
俺は目を横に流した。おいおい。
奴等はお天道様の下を突っ走るインディアンみたいに真っ黒だった。
成程。アホのペイジじゃコルトの一発も当てられないはずだ。見えなきゃ狙いは定まらない。
俺は機関室を離れる。
馬じゃない。ほっといても走る鉄道だ。
ガタゴト揺れるから歩くのは大変だったが、俺は狭い銃座室にたどり着き、ペイジの顔面をぶっ叩いてから大砲を構えた。
「兄貴でも暗いから当たりません! 許してもらいましょうよ」
「ヤマじゃいつでもお先真っ暗だ。容赦は俺の辞書にない」
駅を離れるとまた薄暗くて埃っぽい空気に変わる。
臭いはどんなヤマでも変わらない。
この鉱山もそうだ。
例のクソヤバイ『ニューフロック』なんて虹色の石が眠っていてもだ。いつものようにヤマに入って地下機関車を貰ったはいいがとんだ邪魔が入ってこのざまだ。酒代が無駄になった。
ファック!俺は大砲を発射する。
ドガアン!ドガアン!ドガアン!ドガアン!ドガアン!
「山と線路が持ちません!」 
「これで壊れるなら価値など無いわ!」
爆音から間が開いて、橙色の光が見えて金属がゆがむ音がした。
「……やりましたか?」
俺は完全に油断していたと言っていい。
もう山から出ていた。
そんな事よりも重要なのは、連中のクルマは石を奪って終わらなさそうだった事だ。
確かに機関車の顔だが軍船並みの大砲の数で、天井に付いている主砲は見たことも無い大きさだった。
そいつがこっちに向いたんだ。流石の俺でもタマが縮んだ。

【続く】

コインいっこいれる