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お坊さんとスクーター

自転車で川の近くを走っていると、いろいろな人とすれ違う。
今日はスクーターに乗ったお坊さんに追い抜かされたとき、なつかしさに思わず「ワァ!」と声を上げてしまった。

子どものころ家の近所にお寺があったので、スクーターに乗るお坊さんを見かけることが多かった。
いつもは歩く時にもスススッとすり足で静かに歩くお坊さんが、ドッドッドッと小さくないエンジン音を鳴らしながら移動する。
いつもはじっと座って手を合わせながらお経を読んでいるお坊さんが、たっぷりの布ををバサバサ風になびかせてスクーターにまたがっている。
いつもは仏さまの大事な話をおごそかな雰囲気でしているお坊さんが、本当はいけないのだけれど、顎ひもをちゃんとつけずに頭の上にヘルメットをのっけたままにしている。
いつもは上唇と下唇をのりで貼り付けたように真面目な顔をしているお坊さんが、祖父母のやっているお店でマンガ雑誌や競馬新聞を受け取るとうれしそうに口元を緩ませる。
大人になった今、役割とその人本人っていうのは別。ということはもちろん理解できる。
けれど子ども心にお坊さんというと、すごくまじめでちゃんとした「立派なおとな」だと思っていた節があったので、そんなギャップを見るたびに小さな驚きがあった。

そんなことが久々に思い起こされて、なつかしさに胸がギュッとなった、曇り空の日の話。

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