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アングスト/不安 〜ネタバレ感想文〜

※この文章は「アングスト/不安」の#ネタバレ
感想文です。
結末まで言及しておりますので未見の方ご注意下さい。

目次

・とにかくヤバい映画と聞きまして
・淡々と繰り広げられる、殺戮の一部始終
・映像的には耐えられた。だがしかし…

・とにかくヤバい映画と聞きまして

もともとホラー系の映画は苦手なのだが、深層心理に響くと言うか、人間の内面を描くようなホラーには興味があって(ヒッチコックとか)、今回この映画に興味を持ったのだった。

スプラッタな画像よりも、人が人の精神を喰らうような話が気になってしまう。
何故そうなったのか?
人間の奥底って何が眠っているのか?
いつもそんな事が気になって仕方がない(リアルな生活ではあまり考えたくないけど、フィクションなら興味深い題材)
ただこう言う作品はめちゃくちゃにメンタルに堪えるので人に薦めたりはしづらいけども。

1983年に公開されたけど速攻で発禁になってしまったいわくつきの映画と聞いて、しかもそれがようやく"解禁"されると聞いて、パンドラの箱の中身を見てみたくなってしまったワケです。。

・淡々と繰り広げられる、殺戮の一部始終

この映画の主人公は、殺人事件の犯人その人である。
ミステリーでもサスペンスでも謎解きでもないという事が冒頭から判明する。
事実を基にしている、と言う文が冒頭に流れ、犯人の生い立ちが淡々とナレーションされていく。
ドキュメンタリーに近い手法である。
そう、これは犯人の一人称視点で語られる、
殺戮のドキュメンタリーなのだ。

そしてナレーションに被さるように犯人の独白が始まる。
犯人が銃で人を殺して10年、出所する時の廊下を歩くコツコツコツ…という靴音がまるでメトロノームのように整然としたリズムで響き渡る。
アオリ視点で犯人を追う構図も見事。高い刑務所の天井がより空虚感を醸し出す。
これは犯人にとって新たな殺戮の始まりのチャイムだった。

自由の身になった犯人は、コーヒーショップに寄り食事をとる。
じわじわと犯人の欲望が呻きだす。
子供の頃虐待され、常に不安を抱えていたという心境を綴っていく。そして抑圧されていた殺人衝動が開花し、ある家族に狙いを定める。。
メトロノームのような規則正しいリズムの、ヘビーでやや主張の強い劇伴音楽が印象に残る。
重厚感のある音がクラフトワークっぽく、またこの淡々とした映画に合っている。

カメラは犯人を追い続ける。
家に侵入し、帰ってきた家族に襲いかかる。
役者さん、死に方がプロです。ほんとに死んでると思っちゃうくらい蒼白になった。。
カメラは回り続ける。
娘を殺し、それを親に見せつけてやる……それこそが最高の恐怖だと呟く犯人の心理に、心を抉られる。セリフがマジ怖すぎ。
計画通りに進まず、イライラを募らせて「殺っちまったじゃねぇか!」ってなるところはちょっと人間っぽいなと思ったり(汗)

そしてラスト付近、暗がりに隠れて娘を殺そうと息を潜めて待ってるシーンはめちゃ怖。
暗がりの中のナイフの反射が恐怖を誘う。。
この辺はサイコみたいだなぁと思ったり。
そして…阿鼻叫喚の地下室の惨劇シーン。
目が、目がぁ〜〜怖すぎる…!!!
娘役の人の形相も凄惨で凄かった…。
ここは流石に堪えた場面。。

・映像的には耐えられた。だがしかし…

全編を通して、クールに犯行の一部始終を映し出すカメラと、それとは対照的に犯人の生々しい心情の吐露が際立つドキュメンタリーといった印象だった。 

基になった実際の事件も調べたけれど、完全に事実と同じルポルタージュではなく、1つの物語として成り立つように脚色されているのが分かる。
冒頭、犯人が寄ったコーヒーショップに最後寄って捕まるオチも、実際は一回しか行ってないし捕まった場所も違う。
でも同じ場所に2回寄る事によって、犯人の思考がより浮き彫りになって映画的な面白みが増している。
犯人役の見事な怪演といい、よくできた映画でした。

前評判を聞いた感じだと、もっと過激でスプラッタな感じなのかなと思ってたけど違った。
もっとヒッチコック寄りな、ハートにダメージがくるタイプのやつだ。。
映倫でも「R15+相当だが精神的に滅入る内容」という評価だった。ですね。。
これを見た後にすぐにお昼ご飯を食べよう♫🍚とはなかなかなれない…

食べましたけどね(笑)

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