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字を丁寧に書く大切さ @ 現

 「字を丁寧に書く」ということの大切さは、以前の記事でも指導ポイントとして書かせていただいます。今回の記事では現実問題としての大切さを書かせていただきます。

 私自身は、あまり字を書くことが得意ではないので、自分の字が綺麗だとは思っていません。どちらかと言えば、不細工であるとコンプレックスを抱えています。それでも、子供たちには「字を丁寧に書きなさい」と指導しております。それは、大手学習塾の大規模校舎で指導してきた経験上、字を丁寧に書く子ほど、チャレンジ受験で成功している実感があるからです。

 丁寧に書かなければならない一番の理由は、漢字の採点が厳しい学校があるからでしょう。私立中学校の中には、漢字の採点を厳しくしていると公言しています。そういった学校では、字を雑に書いていた場合、不正解にされることがあります。字に対する誠実さがない子は、ここで何点落とすかわかりません。それが命取りになることもあります。

 さらに、記述解答で読めない字は減点される可能性があります。記述解答で、読めない平仮名や漢字がある場合、「好意的に読んであげる」というのは、公平性に欠けるケースが生まれます。だからこそ、読めない字に関しては減点されているケースがあるのです。記述で答える問題が多い学校は、そういったところでの減点のリスクがあります。特に最難関校に近づけば近づくほど、そういう傾向が強いように感じます。中堅下位校では、そもそも「記述解答を書ける」という子が優秀層になってくるので、好意的に採点してくれているように思うことがありますが、上位校になると「書けるのが当たり前」になるので、細かい部分で差がついている印象です。それゆえに、字の丁寧さが結果を分ける危険性があるのです。

 字の丁寧さが結果を分ける可能性のある学校を受ける子は、普段から丁寧に書く心掛けを育てることが大切です。それは試験の時の落ち着きにも関わります。日頃から心掛けている子は、いつも通り書くことができますが、日頃の心掛けが悪い子は、いざ「丁寧に書かなければならない」と思うと自分の書いた字に疑心暗鬼になるものです。試験時の平常心を生み出すためにも、日頃から試験で通用する字を丁寧に書く心掛けが大切になるのです。

 もう一つの大きな理由は、意外なところにも潜んでいます。実は、国語だけでなく理社の解答も字が雑なことで不正解になることがあるのです。

 大手学習塾に勤めていたときの話です。たまに、模試の「理社の採点がおかしい」という問い合わせがありました。子供は正しい答えを書いているのに不正解になっているというのです。しかし、その不正解の原因の大半は、お子様の字が雑で、ほとんど別の字になっているというものでした。当然、本番で不正解になる可能性のある、全く読めない字を正解にしてしまっては、模試の意味を成しません。だから、模試でも不正解になるのです。

 理社でのこの手の失点は少なくありません。「偏差値に対する考え方」の記事で触れましたが、1 教科だけで言えば、2 点下がれば偏差値 1 下がります。そう考えると、字が雑な子が抱えるリスクを感じていただけると思います。

 中学受験では、字が雑というだけで、少なくとも 3 教科 10 点程度の動きは簡単に生まれます。これを入試本番で考えると、ボーダーラインの子の合格不合格を簡単に変えてしまう破壊力を持っているのです。中学受験では、こういった「得点力」も実力のうちに入ります。単純な「学力」だけでは合格不合格が決まらないのです。

 一番重要なことは、この「丁寧さ」を 6 年生の 1 年間で身につけることが非常に難しいということです。6 年生の 1 年間で間に合わないとは言いません。しかし、一度身体に染み付いた行動を変えることはストレスが伴います。試験に対して「丁寧に書く」ということを心掛けて育ってきた子は、それが当たり前になっているのでストレスを感じなくなります。しかし、心掛けない行動を一度覚えてしまった子は、それを修正するのにストレスを抱えるものです。6 年生になるまでに「丁寧さ」と真逆の動作に慣れてしまった子は、ただ学力を上げるというだけでは消すことのできないリスクを抱えながら受験しなければならないかもしれないのです。

 その意味で、早い段階で「字を丁寧に書く」というしつけを徹底することは、受験という長期的な取り組みで考えたときに非常に重要になってくるのです。

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