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SAPIXからの転塾基準を考える@女子編

 学習相談には、SAPIXに通塾している御家庭の方にもお越しいただいています。

転塾を前提としないで学習相談を行っているので、客観的な基準を以てお話しさせていただいています。今回の記事では、その基準についてまとめます。
 なお、「女子編」としたのは、男子校受験を考える男の子に関しては、基本的に転塾を勧めないためです。男の子なら最後まで歯を食いしばってSAPIXで続けていいと考えています。男子校を目指すのであればSAPIXのテキストが一番信頼値が高いので、そのままSAPIXのテキストの効率化を図った方が良いです。
 ゆえに、今回の記事では「女子編」とさせていただきた次第です。

 さて、まず大前提の基準についてです。それは、SAPIXの偏差値40を超えていれば、基本的に転塾を勧めません。偏差値40台と偏差値30台を行き来している場合は要検討で、偏差値40を超えられない場合は転塾を勧めるようにしています。
 SAPIXの偏差値40以上を維持できていれば、ある程度SAPIXのテキストについていってると判断できます。それでいて偏差値45以上の可能性もあるのであれば、やはりテキストを変えずに効率化を考えた方が良いです。
 環境を変えるというのは、それだけでリスクが大きいものです。SAPIXの環境が合わないのであれば一日も早く転塾するべきですが、偏差値40以上を維持できているのであれば「合わない」とは言えません。そのラインよりも上の子は、メリットよりもデメリットの方が大きいと思います。

 では、「なぜ、偏差値40なのか」ということを、SAPIXの2025年度用偏差値一覧のvol.1と日能研の2024年結果偏差値を比較しながらまとめていきます。

 まず、1日のSAPIX偏差値40の女子校を見ていくと、田園調布学園・富士見・横浜共立の3校があります。これらの学校を日能研で見ると、

田園調布=SS52
 富士見=SS51
横浜共立=SS48

となります。ちょっと横浜共立のSS48はちょっと異常な気がしますが、凡そ補正が±10掛かるとお考え下さい。
 そこからSAPIXの偏差値35以下の女子校に目を向けますと、

※学校名=SAPIX→日能研
昭和女子=SS35→SS49
カリタス=SS34→SS49
大妻中野=SS32→SS45
 三輪田=SS31→SS49

と、日能研では差が無い学校でも、SAPIXでは差がついている学校が多いです。これは、学校の問題の難易度によって起こっている現象だと考えています。つまり、SAPIXの偏差値35以上の子は、日能研の偏差値50程度の子達よりも、基礎学力がしっかりと身についていることの証左になると。
 さらに、偏差値36-39の学校にも目を向けると、

 共立女子=SS39→SS50
 品川女子=SS39→SS51
 山脇学園=SS39→SS53
 晃華学園=SS38→SS50
東京女学館=SS38→SS48
日本女子大=SS38→SS46
清泉女学院=SS37→SS45
普連土学園=SS37→SS48

となります。SAPIXの偏差値40以上に位置すれば、基本的に日能研の偏差値50程度の女子校は余裕で合格することでしょう。また、偏差値はあくまで度数分布なので、SS50からSS60に上げるよりも、SS40からSS50に上げる方が楽です。それであれば、最後までSAPIX偏差値50以下の頌栄女子学院、香蘭女学校、立教女学院、東洋英和あたりの女子校を目指すのは、その層の合格実績も多いSAPIXにいる方が確率が高いというものです。
 ゆえに、SAPIXの偏差値40を維持できる子には、基本的に転塾を勧めません。

 そうすると、次に「なぜ、偏差値40以下は転塾を勧めるのか」という疑問が出てくるかと思います。
 その理由は、精神的・体力的に大変だからです。ずっと最下位ブロックから抜け出せないというのは、本人もそうですが家族も精神的に大変だと思います。SAPIXの偏差値30台でも、一般的に言えば決して悲観する必要のない学力を有していますが、SAPIXという環境にいることで劣等感を抱きながら成長するのは、どこの学校に進学するかという話とは別にあまり良い人生ではないと思います。
 また、女の子の場合は、中学受験が身体の成長と重なることも多く、体力的に大変な思いをすることがあります。もちろん最難関を目指すのであれば、それを乗り越えなければなりませんが、偏差値30台の学校までは無理をしてSAPIXについていく必要はありません。何を優先して小学生の時期の成長を考えるか次第では、必ずしもSAPIXがベストとは限らないものです。
 ゆえに、偏差値40に届かない御家庭には中学受験の価値を見つめ直していただき、志望校や優先順位が変わるのであれば、転塾していただくようにしています。

 以前の記事にも書きましたが、SAPIXの偏差値に対する世の中の評価は低すぎると考えています。

 私たちも含めて学習塾は営利企業なので、自分たちに利益が回ってくるようにしなければなりません。そのために、SAPIXに食らいつく必要があります。ただ、そういう風に考えてしまうと不誠実な対応になってしまうこともあるでしょう。それが、そしてSAPIXに通われている御家庭の疑心暗鬼を大きくし、中学受験を苦しいものにしてしまうこともあるはずです。
 今の中学受験は、しっかりとした住み分けが必要です。中学受験の目的や目標に合わせて学習塾を選ぶべきだと考えています。しかし、それは、より誠実に、より合理的に進められなければなりません。そうしなければ、ただ不安だけが募り、あまり良い中学受験にはならないでしょう。
 今の中学受験がSAPIXを中心に回っていることは、動かしがたい事実だと考えます。ほぼ一強状態で、そのシステムの完成度を考えれば、その一強状態が崩れることは当分ないでしょう。だからといって、SAPIXの足を引っ張っても良いという道理はありません。
 巷の風説を見ると、SAPIXに対する不当な評価を目にすることが多いです。もちろん、SAPIXが無条件で良いとまでは言いません。悪いところも多々あると思います。ただ、現状で難関校以上を目指すのにbetterであることは間違いない事実だと思います。まず、そこを認めた上で建設的かつ現実的に考えなければ、不当に不幸な中学受験が増えてしまうと考えています。それは、社会全体で考えれば大きな損失ではないでしょうか。

 私たちの教室では、そういう考え方に立ち、SAPIXの御家庭の学習相談も承っています。


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