【2024年受験】第1回サピックスオープンの合判資料を眺めて雑感

 サピックスオープンを受験することの最大のメリットは、「『合判資料』を手に入ること」と言っても過言ではありません。SAPIXがサピックスオープンの結果をまとめた資料で、SAPIX生の動向がわかる資料です。特に他塾生は重要な資料で、この資料を手に入れるためだけでも、サピックスオープンの受験には価値があります。

 そんな資料の中でも特に重要なのが、「第3部:昨年との志望状況比較」です。これは、各受験日毎の志望者数の増減を昨年比で分析している内容になっています。このデータからは、今年のSAPIX生の受験傾向が、去年との比較でわかります。このデータは、他塾生にとって非常に重要なものになります。
 というのも、SAPIX生の受験者数が増えるということは、そのまま他塾生が押し出されるということになる可能性が高いからです。正直、SAPIX生にとっては、1日校最難関校以外のデータは、それほど重要ではありません。しかし、SAPIXの占有率が確定していない中堅どころの学校のデータに関しては、とても重要になります。SAPIXが急激に占有率を拡大している学校に関しては、荒れた受験になる危険性があるからです。
 他社の模試で合格判定を確認したとしても、それはあくまでSAPIXの動向を考慮しない合格判定です。SAPIXの動向次第で、良くも悪くも変わってしまうものだと考えています。他社の模試で昨年比でそれほど変わっていない学校でも、そこにSAPIX生が大挙して受験しに行けば、状況は大きく変わるものです。SAPIXに通っている子は、気にする必要のない危険性が、他塾生には、常につきまとっているものです。
 その意味で、大手学習塾に通うのであれば、SAPIXが一番良いと言えます。中学受験は、講師の指導力だけはありません。様々な意味で情報戦を制することが大切です。その中学受験の情報戦を勝ち抜くのに、「SAPIX生である」というのは、それだけで有利なものです。
 「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と『孫子』には書かれておりますが、その「彼」とは、中学受験においては「SAPIX」と置き換えることが大切です。

 さて、そんな『合判資料』ですが、サピックスオープンを受験した御家庭から見せていただきましたので、自由が丘近隣で気になるところについて、少しだけ言及させていただこうと思います。

・男子校

 まず、男子校で気になったのは、1日の攻玉社です。

去年の志望者が67人だったのに対して、今年は38人増加して、昨年比157%になっています。どういう層から志望者が増えているかはわかりませんが、去年の攻玉社が出した1日合格者数174人で考えると、そこでSAPIXの合格者数が30名程度増えたら、他塾生の合格確率を大きく狂わせるかもしれません。
 それゆえに、攻玉社を第一志望にする子ですら、サピックスオープンを受けておいた方が良い時代になったかもしれません。

 他に気になるのは、2日の高輪と3日の成城です。

 2日の高輪は、61人から46人増加して昨年比175%、3日の成城は、120人から49人増えて昨年比141%になっています。共に、1日の志望者数をそれほど増やしていない中で、増加しているところを見ると、上位勢が押さえとして高輪や成城を視野に入れていることがうかがえます。今年、この日程は非常に荒れるかもしれません。
 これらの学校は、以前の記事でSAPIXが合格者数を増やしている学校として紹介させていただいております。

そのことを考えても、もしSAPIXがさらに合格者数を増やしていくのであれば、他塾生にとっては非常に危険です。
 ゆえに、成城や高輪を押さえにと考えている御家庭に関しては、SAPIXの動向を注意深く見守る必要がありますし、何よりもサピックスオープンでSAPIX生との相対化をしておいた方が良いかもしれません。

・女子校

 自由が丘近郊の学校では、東洋英和女学院が53人から32人増やして昨年比160%となっています。

 女子の上位校は、最近どこも厳しい戦いを強いられているので、そこで苦戦している子達が東洋英和に流れ始めているのかと推測します。受験者数を減らしている学校との相関性を考えても、横にスライドしているところが見当たらないので、純粋に昨今の受験者増が徐々に適正化していっているように感じます。

 もう一つ気になるのは、2日午後の山脇学園です。

118人から62人増やして昨年比153%です。もう、この日程の山脇学園は無いものとして考えた方が良いと思います。もちろん、第一志望の子は受験するとしても、この日程の山脇学園を押さえとして考えると痛い目を見る危険性があります。2日午後の山脇学園を押さえに考えるような受験パターンを組むのなら、サピックスオープンの受験をお勧めします。少なくとも、SAPIX生の中で戦えないのであれば、安易に考えてはならない日程です。

・共学校

 共学校では、ダントツで東京農業大学第一が気になります。

細かい数字は割愛しますが、全日程で昨年比120%を超えています。共学校の午後受験では、広尾学園が手の届きづらい存在になり落ち着いた今、次の急上昇株として東京農業大学第一が選ばれたというところだと思います。学校が「第一志望で入ってきてくれなくても良い」と公言している潔い受験日程ということもありますが、学校自体の評判の良さが、受験者数を集める最大の理由なのでしょう。東京農業大学第一を第一志望で目指すのであれば、もうSAPIX生の動向を注意しないわけにはいかないでしょう。

 サピックスオープンを受験した特典として得られる『合判資料』は、中学受験家庭にとって貴重なものになります。基本的に難関校受験を考えている御家庭は受けておいた方が良いのですが、問題の難易度的にサピックスオープンを受験する必要が無い学校でも、場合によってはSAPIX生の動向を確認しておかなければならないこともあります。
 いずれにせよ、様々な点において6年後期のサピックスオープンは受験する価値が高いものです。


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