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【2号エッセイ②】ギャルは眼鏡をかけない。カラコンをするから。

①はこちら

先日テイクアウトでスタバに寄ったときのこと。
車のミラー越しに見た、冴えない眼鏡姿の自分を見て「あぁ、あんまりギャルじゃないな」と思った。
ギャルを思い浮かべてもらうと、印象的なまつ毛、明るいロングの髪色、大きな声と高いテンションなんかがすぐに出てくるかと思う。
眼鏡をかけた、ショートカットの黒髪の女性を思い浮かべる人はあまりいないのではないかと思うが、どうだろうか?
こんな質問をするのも、その昔、私にもギャルを目指していた時代があったからだ。

私たちは小学生の時、友達の家で読んだ「GALS!!(ギャルズ!!)」をバイブルにし、シール帳片手に公園でおしゃべり。
ミニモニのカードを駄菓子屋で(裕福な子限定)買い回り、学校の好きな男子の話をした。
古き良き平成だ。
中学生になったら、ルーズソックスを履いてミニスカにする予定だったし、プリクラ撮ったり、ダブルデートしてみたい~!なんて話をしていたのだが、転機はすぐに訪れた。
中学から運動の強豪校に間違えて入学してしまい、その後6年間ギャルとも彼氏とも無縁の学園に幽閉されてしまうのである。
もちろん部活をしながらギャルをしている人間もいたが、大概が「筋骨隆々のギャル(笑)」になる。
そういうのを自分がするってゆーのは私のポリシーに反するのだ。
だから学生時代は絶対にギャルになりたくなかった。。。

強豪校での部活経験を経て、何年か経った頃、やっと少し筋肉や肩幅が落ち着いてから、私はジワジワと思い出してきてしまった。
昔読んだ「ギャルズ!!」のことを。(部活と勉強しかしていなかった自分に面白みを感じられなかったことも起因しているが・・・)
そうだ。今こそギャルになろう。

当時のギャルと私が思い出したあのころのギャルはもう見た目は別物になっていたけれど、変わることのないものがある。
それは「マインドと行動」だ。

私の中のギャルの定義
―――――嫌なものには嫌と言い、好きなものには好きという。
ムカついたら直接ムカついたって伝えて、喧嘩をする。
(合ってる?この辺からちょっとギャルでもなんでもなくなってるかも)でも友達のことは一番の仲間だって思ってるからゼッテー裏切らない!
周りのことは考えずに喋りたいときは大きな声で喋り、ストレスが溜まったら夜はクラブではしゃいで発散!明日にはもちろん持ち越さない!――――――――

難しいことは考えず、目の前のことで一喜一憂し、その日を終わらせたい。そのまま結婚とかまだしてないけど子供が出来たりしてなんやかんや結婚して、旦那の文句とかいいながら若いママになって一生涯を終えたい。
本当にそう心から思ったのだ。
その安易なビジョンを元にそこから数年はギャル活動に専念した。

案の定、安易な計画のもと計画した充実ギャル生活(マイルドヤンキー生活?)は続かず、何年かして目が覚めてしまった。
23歳の夏のことだった。

お金がないと夜遊びは続けられない。
資格がないとお金がもらえない。
彼氏がいないから子供もできないし、結婚もできない。いい大学に行き、就職した方がお金があるし、旅行も贅沢もし放題。。
―――お察しの通り、結果が付いてこなかったのである。
分かっていた。いや、分かったつもりになっていた。資格取得や良い大学へ進学することなんて、小学生の時から学校の先生に通算2000回位いわれていた普通のこと。
しかし社会人になり、同級生にいわゆるハイスぺ系の人間が出てくることで、急にそちら側が羨ましくなってきてしまったのだ。
内心めちゃくちゃ焦った。てめーらはいつからそんな収入を得るような活動をしていたんだ?冷静に未来なんか見据えて大学やら資格取得勉強なんかをしてたのか?と。
人を羨ましく思わず、ギャル・マイルドヤンキーを続けられる精神が欲しかったのに、周りの同年代を見まわした途端にギャル道を挫折してしまったのだった。普通にスペック的にも根本的な性格的にもギャルが向いていなかったという結果だが、流石の私でも引き際考えないとまずいなと数年たって感づいたのである。
(なんなら、現役の時よりは少し落ち着いただけで、普通に学生のころの自分のなりたくなかった筋骨隆々のギャルを、大人になってからやってるだけだったので、なぜ数年間恥ずかしくなかったのか。。と突っ込みどころは満載である。)

 人間とは、特に私とは愚かな生き物である。隣の芝は青にも虹色にも見える。
 結局目指していたギャルになりきることも無く、残ったのはクラブ後や合コンの後に、疲れてカラコンを外さずに寝続け視力を悪化させ、運転免許証に記載された「眼鏡等」の3文字と、辞められなくなった煙草の吸殻だけだった。

 未だにギャルは好きだし、自身の目指したものに後悔はない。
しかし今、あてもなくギャル活動を目指し続けることは自身にとって難しい選択になっていった。

 「ギャルは眼鏡をかけない。カラコンをするから。」
 完全に物事の事象の側面だけをすくった偏見だが、私の出した答えはこう。

”ギャルは眼鏡をかける人々とは異なる人種” なのだ。

ギャルはベースがギャルだから、ギャルをしても遊んでも疲れないし、カラコンを外さないで寝てしまうなんてことはまず無いのだ。

ギャルを目指すことをやめた十数年後の今の私はミラー越しに映った通り、ギャルでもなく、インテリでも無く、ただの視力の悪いおばさんになった。
来世では、ギャルかハイスぺ眼鏡かどちらかの濃い人種に身を振れたらいいなと願うばかりである。
救いようのない話だが、今世の私はこれから先も、冴えない眼鏡姿のまま、ちょっとギャルに詳しい、よくいる中間地点みたいなおばさんとして社会を漂っていくのだった。


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