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【1号エッセイ】まずは腹筋1,000回やってみろ

鏡に映る醜いお腹はサラリーマン生活5年の代償、いや唯一の遺産とでもいうべきか?
遺産と言える理由は、このお腹を見て3つも教訓を得たからだ。
1つ目は、アルコールと油物を毎日摂ると体重が簡単に20kgくらいは普通に太るということ。(高校卒業時72kg ⇒ 社会人時代のMAX体重96Kg)
2つ目は、太るとスーツも私服も買わないといけないので出費が増えること。
3つ目は、仕事を辞めたら太った体しか残らないこと。

普通ならもっと早く気付くのかもしれないが、酒を毎日のように飲む生活にいると脳内の何かがぶっ飛んで全然気が付かないものだ。
いや、気が付いても無視していたのかもしれない。
むしろ酒を飲む日々をかっこいいとさえ思っていたのだから。
実際に、退社するまでの間に家族や友達、当時付き合っていた彼女等々、、、昔から僕を知る周りの人は、会うたびにでかくなる僕をみんなが心配してくれた。

しかし、そんなことは戯言としか捉えられなかった。

戯言と捉えていたのだから間違いなく無視していたということなのだろう。
ただ、言い訳だけさせてもらいたい。
だってこっちは会社の為に頑張ってるし、会社に必要とされているからやっているんだ。
会社の為に体張ってんだぞ?命かけてんだぞ?と。頑張り認めてよ。と。
接待の場に行ってお酒をバカ飲みをすると、みんなが喜んでくれたし、そのおかげで仕事をとることも何度もあった。
もちろんお酒のせいで回らなくなった仕事も20時間くらいならサービス残業もするし、飲みの場なら終電の時間まで盛り上げてやるわいと頑張った。

だって、こんなにやってるし何かあったら会社が助けてくれるでしょ。と。
中小企業だし、みんな仲いいから大丈夫っしょ。と。
口にはしないが心の中では期待していた。
が、所詮はただのサラリーマンというのが現実。

仕事をやめるころにはボロボロの心身と、ぶくぶくに太ったビール腹だけが残った。
会社が助けてくれると思ってはいたが、そもそも何から助けるのか?
お金の補助か?
新しい就職先か?
それともパーソナルジム代でも出してくれるのか?
助けてくれるというより、助ける術がないというのが近いのかもしれない。結局醜い腹は会社を去っても何も言わずに居座った。

助けてもらえないのなら、即急に自分でこのだらしない体を何とかしないといけない。
自分でとは言いながら、退職金も出ない会社だったので、せめてブルブルマシーンとか、シックスパックとかを買って欲しかったなってのが心の内である。

そんなお腹に困っていた時に、UEFA EURO 2024が開催していた。
(欧州のサッカーのNo.1の国を決める大会のことだ。)

この大会に向けたインタビューがSNSで公開されていた。
そこには、大好きなクリスティアーノ・ロナウドも流れていた。
僕とは大違いでプロの中でも非常にストイックな素晴らしい選手だ。
小中高校とずっとサッカーをしてきた僕は、今でもサッカーが好きだ。
そして、30歳付近の僕の世代のサッカー小僧達は、ほとんどの人がメッシとクリスティアーノ・ロナウドを見て育ったと言っても過言ではない。
絶対に両方もしくはどちらかが好きだ。
そして、サッカーに詳しくない人でも一般教養レベルで知っている選手なのではないだろうか?
いくらすごいロナウドも現在39歳になっていた。
普通だったらそろそろ現役引退か。なんて議論される歳はとっくに過ぎているのに、世界の第一線で戦い続ける、まさしく生きる伝説だ。
サッカーの平均の現役引退寿命は20代中盤と言われている。
これを聞くだけでも、誰もがその異常さをわかってもらえるだろう。

そんなロナウドは、毎日腹筋を3,000回やっていると言われていた。
後に、本人の口から、週に1,000回くらいしかやってないと否定したらしいが、1週間で1,000回もえぐいて。。。
だって、毎日サッカーのトレーニングもしつつ、一日100回以上って。。。

SNSに公開された、今回の大会に向けたインタビューでも、少年のような純粋な目。
しっかり決まったヘアスタイル。そして、インタビュー中は常に笑顔。

かっこいい。
僕がロナウドを知った時は、彼は19歳だった。
つまり、20歳も老いたのに、心のアイドルは今もなおすげーかっこいいのだ。

インタビューを見終えると、すぐに立ち上がり、姿見の前で上半身を脱ぐ。
顔は、顎と髭と首はだらしなく連なり顔の輪郭がなくなっている。
腹を見ると、内臓脂肪でポッコリお腹。
前から見ても横から見ても、そして、試しに後ろから振り返ってみても、どんなに足掻いても太っていた。

やるか腹筋
やるか1,000回
やるか毎日

多少時間がある今こそ、腹筋を始めよう。

そして、決意してから10日が経った。
なんと!まだ腹筋を継続中!

毎時間筋肉痛で腹筋が悶絶している。
でも、それ以上に嬉しい。
もちろん腹筋以外のトレーニングを考えたら全く勝てていないが、今の僕は、この10日間に限っては、ロナウドより、腹筋を多くこなしているのだ。
腹筋の回数だけに限ったらあのロナウド以上なのだ。
世界一の称号を何度も受賞している、あのロナウドに勝っているのだ。
定職についていない僕が勝ったのだ。

そして、腹筋を始めてから、色々と僕を渦巻く環境は変わった。
腹筋を始めて、ビールの量が減った。
なんか腹筋したのがもったいない気がして。

腹筋を始めて、ご飯が美味しくなった。
本当の意味でいただきますを言えるようになった。食べることって当たり前じゃないんだなって気が付いた。

腹筋を始めて、朝が心躍るようになった。
体の痛みが僕に生きている意味を教えてくれるようになった。

腹筋を始めて、自信の付け方を思い出した。
努力だけはやる気さえあれば誰でもできるんだって。
サッカーをやってた時もスタメンになるためにがむしゃらに走っていたなって。

腹筋を始めて、社会人生活の何が悪いのかに気が付いた。
会食を理由に色々なことを正当化して、言い訳して逃げてた自分が一番悪いって。
ついでに、言うと、お酒で仕事をとろうとする会社も、会食の雰囲気でしか取引先を見抜けないような取引先も二番目に悪いって。

そして、腹筋を始めて、小さな幸せが増えたような気がする。
いや、今までの自分は、小さな幸せを見逃していただけなのかもしれない。

いつまで続けられるかはわからないが、今掴めそうなもっとでかい何かの正体を掴めるまでは腹筋を続けていきたい。


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