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占い師やネイルサロンがコロナの影響で大繁盛?! ーーわたしは世の中のできごとの0.000001%も知らないことを痛感
友人の1人がプロの占い師だ。
彼女は、宿曜・統計学・心理学をくみあわせて占う。わたしは7年ほど前から定期的にみてもらっているが、これがよく当たるのだ。
地域では名の知れた占い師で、お得意様には大企業の経営陣もいるらしい。
企業のトップたちは、大事な商談や新規事業の前など、ここぞというときに相談に来るのだとか。
契約によい日時、方角、重大決定をする際に着るべき服装の色や形、連れていくべき部下など、細かいことを占ってもらうらしい。
わたしのように個人で依頼するひとも多く、もともと人気の彼女はあちこちを飛び回っていた。
ウィルス騒ぎから半年ほど経ったころ、一緒にお茶をしているときに彼女が言った。
「この騒ぎがキッカケで、ありがたいことにめちゃくちゃ仕事が忙しくて」
--- ん?ウィルスと占いってなんか関係あんの?
「それがさ、すごく関係あるの。わたしもビックリしたんだけど」
と、キャラメルフラペチーノのホイップをスプーンですくいながら続ける。
「この騒ぎになって、みんな自分の人生を見直してるんだよね。このまま今の会社でいいのか、とか。家族との時間を増やしたいからフルリモートの仕事に転職したい、とか。これを機会に田舎に移住したい、とかさ」
--- うんうん。でもそれって、結構大きな決断じゃん?
「そう!だからなのよ。だから占い師に相談してみよう、ってなるみたい。で、いまは移動制限あるけど、なんでもオンラインでできるでしょ?いままではさ、直接会って占ってたけど、そうじゃなくても占えるわけよ、zoomとかで。だから、次から次へと依頼がきて、ありがたいことに大忙し」
言い終えたあと、彼女はキャラメルフラペチーノをすすった。
--- 遠方からの依頼が増えたってこと?
「うん、そうなの。海外に住んでるひともいる。どこでわたしのこと知ったの?っていう感じなんだけど。早いと朝は5時~、夜中は2時くらいまでzoomで予約が入ってるから、ずっと化粧しとかないといけなくて。zoomないときは鑑定データをそろえたり、メールでの鑑定もあったりして」
彼女の周りにいる人気の占い師さんも、このウィルス騒ぎでさらに忙しくなって大変なんだとか。
心配ごとが増えてカウンセリングを受けるひとが急増した、というのはニュースで聞いていた。
でも、『ウィルス騒ぎ → 占い師さん大忙し』なんて図式をまったく想像していなかったわたしは、とても驚いた。
あぁ、わたしは世の中のできごとを全然知らないんだ。
♢
長年いきつけの美容師さんの奥さんが、ネイルサロンを経営している。
髪を切ってもらいながらときどき奥さんの話がでてくるので、奥様はお元気ですか?と聞いてみた。
「うちの嫁さん、仕事が忙しくなってめちゃくちゃ大変みたいですよ。特にウィルス騒ぎになってから」
--- え?ウィルスとネイルってなんか関係あるんですか?(あれ、コレどっかで聞いたな)
「それがすごく関係あるらしいんですよ。ぼくもビックリしたんですけどね」
--- え?どういうこと?
「ほら、世の中こんなになって、自由に出歩けない、人と会う機会も減った、楽しいことがない。みんなそうでしょ。制限は長期だし。楽しいことないけどなんとかして気分アゲたい、ってなりますよね」
--- うん、なりますなります。特に、若いひとたちはそうだろうなぁ。
美容師さんによれば、女性が手軽に気分をアゲる方法のトップが【ネイル】らしい。
美しく彩られたネイルは、人に見せる機会がないとしてもウキウキするのだという。
わたしはネイルサロン未経験なので、ネイルで気分がアガるというのがピンと来ないのだが、どうやらそうみたい。
「髪や化粧や洋服をいくらキレイにしても、自分では見えないじゃないですか。鏡で確かめない限り。でも、キレイにしたネイルはいつでも自分で見れるから、見るたびに気分がアガるらしいんですよ」
化粧は毎日落とさないといけない。髪も洋服も毎日洗わないといけない。それと比べたら、1度ネイルすればしばらくキレイなまま、というのもポイントなのだとか。
美容師さんの話によると、人気のネイルサロンは2か月先まで予約がいっぱい。売り上げは、ウィルス騒ぎまえに比べて大幅アップのようだ。
『ウィルス騒ぎ → ネイルサロン大忙し』なんて図式をまったく想像していなかったわたしは、またしても驚いた。
あぁ、わたしは世の中のできごとを全然知らないんだ。
♢
テスト勉強をしている我が家の中学生と、石川啄木の話になった。
石川啄木、と聞いてまっさきに思い出す短歌は
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
あまりにも有名なこの短歌は、わたしの中学時代の教科書にも載っていたし、いまの中学生の教科書にも載っている。
長い時を経ても心を打つものはやはり素晴らしいと、この短歌の情景を子どもに聞かせる。
---“空に吸はれし”が効いていて、ここで完全に心を持っていかれる、やっぱり天才だね、石川啄木は。
そんなようなことを子どもに話した。すると
「だけどさ、石川啄木ってマジでクズ男だったんだよね。天才だよ、もちろん文学界では天才だけどさ、私生活はダメダメだったらしいよ」
--- えっっ??そうなの?
子どもはいくつもの啄木エピソードを教えてくれた。驚いた。ほんとだ、マジでクズ男じゃないか、石川啄木は。愛すべきクズ男だ。
あぁ、わたしは世の中のできごとを全然知らないんだ。
♢
こんなふうに、ちょっと話をしたり、ニュースを見たり、本を読んだりするだけで、わたしは世の中を全然知らないんだなと、つくづく思う。
子どもたちの教科書をざっと見ただけで、そこにはわたしの知らない情報がたくさん詰まっているし、noteでほかのひとの記事を読むたびに、知らない世界に出会う。知らないことばかりで驚愕する。
みんなすごいな。わたしの知らないこと、たくさん知ってる。わたしは世の中のできごとの0.000001%も知らない。
今日も明日もあさってもそう感じながら、わたしはそれでも図太く生きていくんだと思う。
大切な時間を使って最後まで読んでくれてありがとうございます。あなたの心に、ほんの少しでもなにかを残せたのであればいいな。 スキ、コメント、サポート、どれもとても励みになります。