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提案力がある美容師さんは「コンフォートゾーン」を抜けるアシストをしてくれる

「カミーノさんの予約が入ると、いつもイイ緊張感があるんですよね」

お店に入ると、5回に1回ぐらいの割合でそういわれる。もう7年ほど通っているが、いままで何回いわれたんだろうか。

美容院での話だ。

予約を入れただけで美容師さんを緊張させるなんてどんな客?と思われるかもしれないが、イチャモンをつけるとか、横柄な態度をとるとか、わたしはそういうたぐいの客ではない。

「カミーノさんのヘアスタイルのオーダーは、美容師にとってチャレンジングなんですよ」

いつもお願いしている美容師さんのコメントだ。

「よっしゃ、やったるで!と奮い立たせてくれるんですよね」

なにかに挑むような笑顔を浮かべ、美容師さんはそういった。

美容師として四半世紀以上も働いている彼の話によると、ミドルエイジのお客さんのなかには、毎回同じヘアスタイルをオーダーするひとも多いらしい。

“いつもの感じで” “伸びた分をそろえるくらいで”

毎回同じスタイルだから、オーダーもせず、美容師さんが切り始めるのを待っているひとすらいるのだという。

「こんな感じのスタイルもお客さんに似合いそうですよ」という提案にも「うーん・・・いつもの感じで大丈夫です」と返すひともいるのだとか。

そういったタイプのお客さんは、美容師さんにとってやりやすいらしい。

いつも同じスタイルに仕上げればいいからだ。

ところが。

美容師さんはわたしのオーダーを聞くときに、毎回ドキドキするんだという。冒頭の「カミーノさんの予約が入ると、いつもイイ緊張感があるんですよね」は、ココにつながる。

わたしは美容師さんを困らせようとしてオーダーしているつもりは、まったくない。

ただ、わたしのオーダーを聞いた美容師さんは、頭をフル回転させ、自分の脳内にあるスタイルリストを一瞬で検索し「こういう感じでどう?」と提案する一連の流れを、いかに短時間でこなすか、そこに心地よい緊張を感じるのだという。

「カミーノ、どんなオーダーしてんねん」と突っ込まれそうだが、自分自身ではとりたててヘンなオーダーをしているつもりは、ない。

例えば、口頭のみで以下のようにお願いする。画像や写真などはまったく準備しない。

今回は、長さはコレくらいで“いかにも大人カッコイイ”感じで。

今回はここくらいまで切って“性別不詳”なスタイルで。

イメチェンしたいので結構切ってもらって、奇抜になりすぎず、だけど「おっ?!」と思ってもらえるようなカラーで。

イメージをそう伝えたあと、必ず付け加えるのがコレ。

「そういう感じでわたしに似合うようにしてください!」

毎回こんな感じ。それを聞いた美容師さんは「ちょっと待ってくださいね」と1~2分静止したままジッと考えこむ。

「分かりました。こんな感じでどうでしょう?」

美容師さんはiPadで画像をいくつか表示させ、前髪はこうしたほうが似合うとか、少しシャギーを入れてもいいかもとか、提案する。

ここですり合わせをし、ようやくヘアスタイルとカラーが決まる、という流れ。

美容師さんはどんな提案をしてくれるのかな、とわたしは毎回期待している。

なぜこんな曖昧とも思われるオーダーをするのか?

それは、美容師さんを100%信頼しているからだ

実をいうと、100%どころか200%くらいは信頼している。いつもお願いしているこの美容師さんを。

いまの美容師さんに切ってもらうようになって7年ほど経つ。美容師としての腕はもちろん素晴らしいのだが、提案力の高さに毎回感心させられる。

わたしのケースでいうと、自分がしてみたいと思うヘアスタイルが自分に似合うとは限らない(そうであれば最高なのだが)。

「コレいいな」と思うスタイルばかりにすると、イメージが固定され、ポテンシャルに気づくチャンスをみすみす逃しているような気持ちになる。

若いころから、いろいろなヘアスタイルに挑戦してきた。

バブルのときに流行ったロングソバージュもワンレングスもフラッパーもしたし、おかっぱ頭もサラサラロングもウルフカットも経験済。

20代でベリーショートにしたときは、なぜかモンチッチのようになってしまったが、友達に笑いを提供できたのでアレはアレでよかった。

ヘアスタイルを変えることに抵抗がないから、アレもコレもやってみようと思えるんだろう。

もちろん失敗も多かったけど、ヘアスタイルが違うだけでこんなにも雰囲気が変わるのか!と驚かされたし、気分転換になって面白い。

信頼している美容師さんからの「いままでやったことないかもしれないけど、カミーノさんの顔の形にはこういうスタイルも似合いますよ」というアドバイスは、自分の新たな一面を発見するチャンスなのだ。

チャンスがあればつかむでしょ?

そういうこと。

いつものコンフォートゾーンを抜けだして、新しい世界にちょっとだけ踏み出す感じ。信頼できる美容師さんはそのアシストをしてくれる。

「カミーノさんの予約が入ると、今度はどんなオーダーがくるのかなと思って、予約当日までいろんなヘアスタイルを提案できるように考えたり、リサーチしたりするんです。その時間が楽しくて。自分の勉強にもなりますし」

この美容師さんをわたしが200%信頼しているのは、彼のこういう姿勢なのだ。お客さんに真摯に向き合ってくれる、そういう姿勢。

彼が20~30代のころは、年間のべ7,500人近くのお客さんから指名を受けて髪を切っていたという。

「あのころは休憩もとれないほど忙しかったけど、当時に培ったスキルや接客がいまの提案力につながっているんでしょうね」

そういいながら腰をかがめ、わたしの襟足をハサミでそろえてくれる。その真剣なまなざしを見ながら「信頼できる美容師さんと出会えたわたしはラッキーだな」とつくづく思う。

年齢とともに変化に臆病になりがちだけど、ヘアスタイルを少し変えるだけで「違う風」が吹く。

その「違う風」は自分の新たな一面を発見するチャンス。

チャンスがあればつかむでしょ?

そういうことなのだ。

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