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どうやったら翻訳者になれるの?と聞かれて

知り合いからある相談を受けました。

「来年の春に大学を卒業する娘が翻訳者になりたいらしいの。どうやったら翻訳者になれるの?」

これに対するわたしの答えは次のとおり。

翻訳業は、転職してなる職業だよ。

新卒で翻訳者になるのが100%無理なのかというと、そうではありません。翻訳コースを設けている大学もあるので、卒業してすぐに翻訳者として働くことも可能かもしれません。でもそれは、極めてまれなケース。

なぜなら、新卒の翻訳者の募集はとても少ないからです。

ここでは“翻訳業”と呼んでいますが、翻訳は3つの種類に分かれている、という話を以前しました。

上の記事に書いてあるように、世の中にある翻訳マーケットの9割は【実務翻訳】(産業翻訳ともいう)です。

実務翻訳者の平均年齢は、40~50代といわれています。60才70才でも活躍しているベテラン翻訳者がいるなか、新卒で翻訳者になろうと思っても非常に門戸が狭いのが現実。

なぜかというと、翻訳者として必要な知識が不十分なのでは、と雇う側が懸念するからです。

翻訳者をめざす人なら高い語学力を持っているはずなので、そこが問題になるわけではありません。雇う側からすれば、語学力以外の知識をどれだけ持っているのか、そこが非常に重要です。

たとえば、翻訳マーケットの9割を占める実務翻訳では、法律・契約書・経済・金融・医学・薬学・特許・科学技術など、目指す翻訳分野の専門知識が必要です。

また、実務翻訳では、テクニカルライティングスキルが必須。テクニカルライティングとは、Correct (正確に)、Clear (明確に)、Concise (分かりやすく)に書く手法。簡単にいえば、目的や読者対象に応じて、的確かつ分かりやすく表現するスキルです。

わたしの知る限りの翻訳業界では、これらの知識は、翻訳者が自分で習得するものと考えられている。新卒の翻訳者に、それらを教える十分な環境を整えている職場は少ないと思います。

このような状況から、語学力以外の専門知識を実践的に習得している人、つまり、翻訳の実務経験者に対して優先的に門戸を開く、というわけです。

これが、新卒で翻訳者になろうと思ってもなかなか難しい理由の1つ。

では、現在翻訳者として働いている人たちはどうやって翻訳者になったのでしょうか。

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