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プロの翻訳家を目指すなら知っておきたい3つの種類

「“翻訳”にはどんな種類がありますか?」と聞かれたら、あなたはなんと答えますか。

翻訳には3つの種類があります。プロの翻訳家を目指すのであれば、自分の好きな方向を決めましょう。

まず、多くのひとがパッと思いつくのは、本や雑誌などの翻訳でしょう。

たとえば、“星の王子さま”や“7つの習慣”などのベストセラー。海外の本が読めるのは、日本語に翻訳されているからです。翻訳された本は、ネットや本屋さんで簡単に入手できます。意外とたくさんありますよね。

本や雑誌などの翻訳、これを、翻訳業界では【出版翻訳】と呼びます。

翻訳 = 書籍の翻訳、という意識が浸透しているのでしょう。“翻訳”と聞くと、多くのひとは【出版翻訳】を思い浮かべます。

“翻訳”と聞いて次に浮かぶのは、おそらく映画やテレビなどの翻訳でしょう。

ひと昔前までは、映画の字幕を翻訳する人 = 戸田奈津子さん、という黄金の公式がありました。海外映画を見たことのある人なら、彼女の名前を知らない人はいないはず。

見る映画、見る映画、全てに“字幕 戸田奈津子”とあって、ほほぅとなったものです。戸田奈津子さんは、言わずと知れた日本を代表する字幕翻訳家です。

映画のほかにネット配信の映像もあります。翻訳されたネット映像はすっかり日常の1コマ。

映画やテレビなどの翻訳、これを、翻訳業界では【映像翻訳】と呼びます。

日常生活で目にすることの多い【出版翻訳】と【映像翻訳】。翻訳市場のなかでこれら2つが占める割合は、どれくらいだと思いますか?

実は、想像しているよりも案外少ないんです。答えは、約1割。

なじみ深い【出版翻訳】と【映像翻訳】は、翻訳市場のわずか1割なんです。

となると、あとの9割は?翻訳の分野って他にあるの?そう思いますよね。

あるんです、あまり知られていない分野が。

それは【実務翻訳】。翻訳市場の約9割という最大の需要を占めています。ビジネス翻訳や産業翻訳と呼ばれることもあり、世の中の翻訳者の多くは、この分野の仕事をしています。

【実務翻訳】は市場が大きいので、【出版翻訳】や【映像翻訳】と比べ、実力次第でプロの翻訳者としてスタートしやすい分野です。

“翻訳”とひとことで言っても、このように大きく3つ --- ①出版、②映像、③実務 --- に分かれています。

おなじ“翻訳”という呼び名でも、それぞれで求められるスキルや知識はおなじではありません。

簡単に説明してみます。

①:【出版翻訳】
出版物の翻訳。たとえば、小説、雑誌、ビジネス書、ノンフィクション、専門書など。

この分野の翻訳を手がける人は、翻訳者ではなく“翻訳家”と呼ばれることが多い。出版翻訳家への道はきびしく、非常に狭き門。

出版翻訳家に求められるスキルには、以下のようなものがあります。

英語力の高さはもちろん、読者を引き込む表現力やセンス。作者が作品にこめた想いをくみとることのできる感受性の高さ。作品の世界観に合うように訳すスキル。自身が作家として活躍できるくらいの、高いストーリーテリング能力。


②:【映像翻訳】
映像媒体の翻訳。たとえば、映画、テレビ番組、ニュース、配信用映像コンテンツ、ディスク用映像作品など。字幕翻訳と吹き替え翻訳の2種類に分かれる。

映像翻訳者に求められるスキルの筆頭は、リスニング力を含む高い英語力。そのほか、多彩な表現ができる日本語力。国の文化、歴史、宗教、スラングなどの知識に明るいこと。


③:【実務翻訳】
産業界(経済、政治などの場面)で発生するビジネス文書の翻訳。たとえば、法律、契約書、特許、経済・金融、医学・薬学、IT、論文、学術書、など。

さらに具体的にいえば、プレスリリース、事業計画書、WEBコンテンツ、企業案内など、どの業種でも発生するビジネス文書。

そのほか、特許明細書、目論見書、仕様書、新薬承認申請書など、分野や業種に特有の形式・内容をもつ文書。

どの文書でも、“英日(英語から日本語)翻訳”と“日英(日本語から英語)翻訳”があることが特徴の1つ。特許翻訳者のわたしは、特許明細書の日英翻訳をメインとしています。

【実務翻訳】は、それぞれのジャンルの専門性の高さがキモ。実務翻訳者に求められるのは、英語と日本語の翻訳スキルのほか、特定ジャンルの知識やリサーチ力。

“翻訳”とひとことで言っても、こんなふうに違います。

“翻訳”と聞くと、まっさきに【出版翻訳】や【映像翻訳】が浮かぶその気持ち、よく分かります。

だって、華々しいもの。カッコイイじゃないですか、【出版翻訳】や【映像翻訳】って。翻訳者の名前がおもてにドーンと出るし。

【実務翻訳】の翻訳者がスポットライトを浴びる、そんなことはほとんどありません。ひたすら影武者の役割です。非常に地味な仕事。でも、みんなプライドを持ってコツコツと訳しています。

もしあなたが、プロの翻訳者を目指そうと思ったとき。そんなときは、「そういえば【実務翻訳】っていう分野があったな・・・」と思い出してくれたら嬉しいです。


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