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“母”という言葉になにかを感じるあなたへ #あなたに送るブックレビュー

例のアレにより、家で過ごす時間が多くなった。

断捨離がサクサクすすみ、家のなかはスッキリ。気分もいくぶん軽くなった。

断捨離の次は“積ん読解消”かな、と思っていた矢先。秋月みのりさんが楽しそうな呼びかけをしているのを知った。

秋月みのりさん、はじめまして。ワタシの“楽しそう”センサーがピピッと反応したので書いてみます。

世界中のすべての人たちはどこからきたのでしょう?

外見も、生活環境も、言葉もまったく違うけれど、みんな同じところからこの世界にやってきた。そう、“母”です。すべての人たちは“母”から生まれてきた。

あなたは、“母”という言葉になにを感じますか?

自分の母親を思い浮かべて、懐かしい気持ちになるかもしれないね。自分自身が母親なら、母としての自分を振り返るかもしれない。これから母親になるかもしれないなら、未来の母親像を思い描くのかな。

これは、“母”という言葉になにかを感じるあなたへのブックレビューです。

ひとりの人間が“母”になるまで、体の変化はもちろん、心の変化もめまぐるしい。

“母”になると分かったときの不安と喜び。
“母”という肩書きに感じる心の揺れ。
“母”になることでガラリと変わる生活。
“母”になれたからこそ発見する新たな一面。
“母”が抱く子供への想い。

喜怒哀楽の4つには到底おさまりきらない感情が“母”には押し寄せる。わたしのなかにこんな感情があったの?と自分でも驚くような、名前のつけられない想いが突然わきあがる。

自分の母親が“母”になったとき、なにを感じていたのかな。自分のパートナーが“母”になるときに、どんな葛藤があったんだろう。自分が“母”になるとしたら、どんなふうに思うのかな。

そんな疑問が浮かんだあなたへ。

俵万智さんの短歌集『プーさんの鼻』を紹介したい。“母”としての心のありようが、たくさんたくさん詰まっている。ギューッと詰まっている。


たとえばこの短歌。

2キロ入りのあきたこまちをカゴに入れ これがおまえの重さかと思う

妊娠32~33週くらいかな、2キロってことは。2キロの胎児をお腹に抱えて買い物をしているときのエピソード。2キロのあきたこまちを持って、お腹にいる子の体重を想像し、まだ見ぬ子に思いを馳せる。


ほかにもね。

読みやすく覚えやすくて感じよく平凡すぎず非凡すぎぬ名

子供の名づけには我が家も頭を悩ませたので、この短歌には共感しかない。どの家庭でも、ああでもないこうでもないと考えるんだよ、子供の名前をつけるときは。一生モノだからね。子供の名前には、親の想いと語られないエピソードが詰まっている、そう思うな。


この短歌は最高にイイよ。わたしは泣いちゃったな、これを読んで。

バンザイの姿勢で眠りいる吾子よ そうだバンザイ生まれてバンザイ

赤ちゃんが気持ちよさそうにスヤスヤ眠っている姿、見たことがありますか?赤ちゃんってね、両手をバンザイしたような形で眠るの。ちっちゃくて柔らかい手のひらをぎゅうっと握ったまま。

この寝顔が可愛くてね。どれほど安らぎをもらえることか。どれほどチカラをもらえることか。どうしてこんなにも安らぎとチカラをもらえるんだろう?

俵万智さんのこの短歌を読んで気づいたの。

赤ちゃんは“そうだバンザイ生まれてバンザイ”だからなんだ、ってね。バンザイなんだよ、命の誕生は。


最後にこれも紹介したい。

子を連れて冷やし中華を食べに行く それが私の今日の冒険

母になると生活はガラリと変わる。生活のすべてが子供中心になる。

子供を授かるまでは、行きたいときに行きたい場所に行ける。近所の冷やし中華を気軽に食べに行ける。口紅と眉だけササッと整えて、スマホと財布を持ってサンダルで行ける。

でも、子供(それも乳児)を連れて、となると話は別。思い立ってもすぐには行けない。「よし行くぞ」と決めたら、子供にミルクを飲ませ、おむつを替えて、次のミルクとおむつの時間を計算する。

大きなカバンに、お気に入りのおもちゃ、おむつ、おしりふき、着替え、ハンカチ、白湯、ミルクetc.を入れる。ほんの小一時間のお散歩でも、荷物が多く重装備になる。

子供中心の生活ってそういうこと。子供を連れて近所で冷やし中華を食べることすら、冒険になる。ドキドキハラハラの冒険。バスや電車を使うおでかけになると、1日がかりの大冒険だ。

この短歌を詠んだ俵万智さんの心情が手にとるように分かる。懐かしいな、あのときの気持ち。

紹介したい短歌がたくさん綴られているこの短歌集。おもに、妊娠期から生後1歳までの子供との日常生活が歌われている。

小気味よい短歌の五・七・五・七・七のリズムに、なにげない情景が浮かび上がる。その情景が自分の子育てエピソードとオーバーラップしちゃう。あのころを思い出して、懐かしくて涙する。

“母”という言葉になにかを感じるあなたも、よかったら読んでみてね。

思いもよらない“母”の気持ちを発見して、“母”という言葉に新しいなにかを見つけるかもしれないから。

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