冥土喫茶に逝こう⑰
魔法をかけられた男②
次の週の休みの日、私はメイド喫茶に行かなかった。
ぐっさんに失言したから行かなかったわけではなく、何となく行く気分ではなかった。
Twitterで来週のあめさんの卒業で俺も卒業しようと呟いた。
これも何となくだ。
かまってちゃんだからツイートしたのではない。
日曜日にネクタイにこれまであったことを報告した。
ネクタイは驚いていたが、私が9月末にメイド喫茶に行くことをやめると言ったら安堵していた。
その後、一言つけくわえた。
「もうこれ以上、行かないほうがいい」
9月の最後の土曜日。
私はK駅にいた。
OPEN1時間前に着いてしまった。
せっかくなので私を騙そうとしたあめさんに、花束を買っていった。
卒業なので手ぶらで行ったら、空気を悪くするから。
OPEN時間になり店に入る。
あめさんがいたので花束をあげた。
喜んでくれたようだ。
いつも通り常連たちが店に集まってきた。
卒業ということで、他のお客さんもプレゼントを買ってあめさんに渡していた。
その後は、楽しい楽しい飲みだった。
楽しすぎる飲みだった。
常連の何人かが話しかけてきて、まいさんが日本酒を注いでくれる。
今までしてもらったことがないことを今日に限って。
だんだんとテンションが高くなり、酔っ払いの完成。
隣にはぐっさんとマサさんがいて談笑していた。
酔っ払いながら、ふとある考えが浮かぶ。
接待みたいだな。
私を盛り上げてくれる常連たち。
なぜそこまでするのだろうかという疑問が浮かんだが、酔っぱらっているのでまともな思考ができない。
卒業イベントも終盤になろうとしていた。
「ぼうしさん、来週も一緒に飲みましょうよ?」
「そうですよ。飲みましょう?」
ぐっさんとマサさんが私に問いかけてきた。
来週は忙しいのでとはぐらかそうとしたがなぜか
「よ〜し。来週も飲みましょう」
と言ってしまった。
言葉を言い終えた後、アレッと首を横にした。
目の端でとらえたまいさんがガッツポーズと、目の前にいるお客とハイタッチをしていた。
その後、卒業イベントは無事終了。
あめさんの挨拶、まいさんの挨拶で幕を閉じた。
OPEN、LAST3回目であった。
電車の中、策にはまったかなという考えが浮かんだ。
来週でラストだと浅い考えをしていた私を殴りたかった。
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