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冥土喫茶に逝こう【実話】③

魔法をかけられた男

 3度目のメイド喫茶。
 駅を降りて店まで徒歩で歩く。
 黒の扉を開けばもちろんメイド喫茶だった。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
 いつもの掛け声と共に私は席に着いた。
 今回は店の奥側にある席に着いた。


 初めて行ったときに会ったあめ、2度目に会ったまいという女性と共に見たことがない女性が一人。
 今回はメイドは3人のようだ。
 店が狭いのに3人でも大丈夫なんだなと考えながた。
「生、ちょうだい」
 まいというメイドに話しかけた。
 ビールサーバーからビールが注がれ、コースターを置いたあとビールを置いた。

 飲み物を注文すると必ず行う呪文がある。
「私と一緒にいつものやってくださいね」
「ああ」
 私が言ったあと、両手でハートマークをつくりビールに向かって呪文を言う。
「Sweet trap」
 そのあとビールを飲んでいいようだ。
 ビールを飲みながらメイドと話す。

 10分ほど話したら別のメイドとまた10分話すのローテーションだった。
 初めて会うメイドと話す機会があった。

「月って言います。お願いします」
「よろしくお願いします。ぼうしって言います」

 自己紹介から入り彼女の好きなことや私がなぜメイド喫茶きたかなど話した。
 前回と違い今回は満席だったので、メイドとはあまり話せなかったがかわりに常連の1人、ぐっさんと呼ばれている40代中盤の男性と話が盛り上がった。

 話をしながらは私はまいという女性を観察していた。
 異質な存在。
 なぜそう思ったのか?
 観察していても接客はうまい、話がうまいなーぐらいしか思い当たらなかった。
 そんなこんなで2時間経ったので、私は会計をして店を出た。

 最初は1時間、2度目は1時間半。3度目は2時間。
 少しずつだが店にいる時間が長くなった。

 そして4度目、5度目と店に通った。
 2時間で帰ることはできたが、観察しても話していても答えがでなかった。

 私はある策を思いついた。
 友達に見せよう。

 1人頼りになる男がいた。
 会社で人事をしている男。
 多くの人を見ている男なら何か気づくかも知れないと。
 電車の中、酔いながら私は考えていた。

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