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冥土喫茶に逝こう⑭

デート

 9月に入った。
 まだ暑さは続く。
 夏の空は好きだ。
 入道雲を見ると心が落ち着く。

 今日はデートの日だ。
 1日に2人と遊ぶのは失敗だったかもしれないが、情報が早く欲しかった。
 最近は気力、体力、精神力も万全だ。
 空を見ながらそろそろ答えがでるかもしれないと、心を踊らせていた。

 その場所で働いている人しかわからない情報というのが必ずある。
 相手は女性だ。
 お客の前では猫を被れることも簡単だろう。
 だが、一緒に働いている女性の前ではどうだろうか。
 猫を被れるのか。
 私はいつも思う。
 女の敵は女なんだと。

 あめさんとは12時にN市で最も人が集まる場所の、ある公園で待ち合わせをした。
 周りには多くの店があり、多くの人が食べたり、服を買ったりと賑やかな場所でもある。
 あめさんに対してはデートに対して全くやる気がない。
 ご飯を食べたらすぐに別れたいぐらいだ。
 はっきりいってお店以外のプランを考えないで、私は待ち合わせ場所で待っていた。

 待ち合わせ時刻になると彼女は現れた。
「ごめんなさい。待ちました?」
「いいや、待っていないよ」
「どうですか似合いますか?」
「とても似合ってるよ」
 私は体のいいお世辞を言った。
 彼女の服装を私は覚えていない。
 なぜなら、彼女に興味がないからだ。

 私は調べていたお店に2人で向かう。
 昼はパスタだ。
 都会でもあるN市。
 おしゃれな店はあちらこちらにある。
 調べなくてもどっかのお店に入ればよかったかなと考えながらお店に着いた。
 横文字のおしゃれな店。
 運よく待ち時間なく入店できた。
 多くのお客さんで、店は賑わい活気がある。
 テーブルに座り、パスタを注文する。

 なぜパスタの名前は長いのか?
 フレッシュトマトとモッツアレラのオイルパスタとか、貝柱とボルチーニ茸とベーコンのクリームソースなど長い。
 ボルチーニ茸って何だ?

 細かいところは気にせず私は目的を遂行する。
「今日は来てくれてありがとね」
「いいえ。この後、買い物付き合ってくださいね」
 最初はたわいもない話で警戒心を解く。
「そういえばぐっさんって誰かと付き合っているの?」
「まいさんと付き合っていますよ。お店の資金もぐっさんが出してくれたんですって」
 その事実に衝撃を受けた。
 なぜ3人で飲んでいるとき、話してくれなかったのだろうか。
 それなりに仲良くなったと思っていたけど。

「店の資金、ぐっさんが出したんだ?」
「はい。付き合い長いですから」
「まいさんはどう思う?」
「嫌い。早く店辞めたいです。もうすぐ辞めるけど」
「どういうこと?」
「そろそろお店のアカウントでも発表があると思いますが、9月末日に私は卒業します」
 メイド喫茶では仕事を辞めることを卒業と言葉を濁す風土があった。

「あ、卒業イベント来てくださいね?」
「もちろん行くよ。辞めてからどうするの?」
「来年の4月には東京に行くので」
 その後、なぜ東京に行くのかいろいろ話してくれたが、興味がないので忘れた。
「あの女には気をつけてください。他にも男が何人かいますから」
「他にもいるの?誰?」
「え!?それはちょっと言えないかな」
 ここは攻め込むわけにはいかないと判断した。
「まいさんの何が嫌い?」
「全部。あと元キャバ嬢ですよ」
 やはり女の敵は女だったな。
 相当嫌いみたいだな。
 キャバ嬢という言葉に、私は彼女がなぜアプローチしてきたかわかった。
 こいつもしかして俺に気がある?と勘違いさせる色恋営業方法である。
 相手を惚れさせる思わせぶりな色恋テクニックである。
「お客さんのことお金だと思っているし、私はすごいことができるんだよっていつも自慢しています」
「へ〜、そんなこと聞いたことないな」
「お客さんの前では絶対言いませんよ」
「確かに」
「絶対にあの女には気をつけてください」
 その後、パスタを食べ店を出た。

 そして彼女の買い物になるのだが、苦痛だった。
 欲しいものがあるとこれ欲しいなとか言いながら、私をチラッと見てアピールをする姿に。
 どれだけ私に買って欲しいのだろうか。
 死んでも買わない。
 私はトイレに行くと彼女に告げ電話をかけた。
 もちろんネクタイだ。

「はい」
 よかった出てくれた。
「今から5分後に電話してくれる」
「1時間早くない?」
「苦痛なんだ。頼む」
「了解。5分後ね」
 彼女の元に戻り、5分後電話がかかって来た。
 多少のオーバーアクションを混ぜつつ、彼女に仕事が入ったからと言って彼女と別れることに成功した。

 月さんのデートまで、あと2時間あった。
 私はカフェに入り、コーヒーを注文し考え込む。
 まだありそうだなと。

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