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冥土喫茶に逝こう㉑

冥土喫茶に逝こう

 年が明けて、2週間ほどたった日曜日。
 冬の寒さがこたえる。
 コタツから出たくないけど、そろそろ作戦の概要をネクタイに言っておかないと。
 私はある男に電話した。
 もちろんネクタイだ。
「今日暇?作戦の概要話すよ」
「了解!!12時に迎えに行きます」
 20秒で電話は終わった。

 12時頃迎えが来た。
 愛車ハリアーはいつも通り輝いている。
「どうも、ウィルスミスです」
「ウィルスミスさんですか顔黒くありませんね」
「整形したんですよ」
「行きますか?」
「了解」
 一度突っ込みを入れてくれたネクタイ。
 せめて私のボケには突っ込んでほしかった。

 しばらく走っているとネクタイが話を切り出す。
「作戦は?」
「狙いはぐっさんだ」
「ぐっさん、なぜ?」
「サイコ相手にまともに勝負を挑んでも時間の無駄。彼女が一番嫌がることは、ぐっさんというパトロンを失うことだ。失えばお金が逃げることになるんだから」
「なるほど。でもどうやって?」
「マインドコントロールだ」
「どういうこと?」
「相手はもうマインドコントロールにかかっている人間だ。俺のマインドコントロールにも必ずかかる。俺の後についてこいっていうマインドコントロールを」
「どうやって?」
「当日本番にわかるよ。ぐっさんは頭がいい人間だ。マインドコントロールは頭がいい人ほどかかりやすい。頭がいい人ほど考えるからな。何度も何度も考えることが罠でもある」
「かかるかね?」
「かかるさ。4ヶ月ぶりに店にくること自体考える要因の一つになる」
「だから4ヶ月待ったの?」
「それも一つだけど。ぐっさんが地元に帰るって情報の方が大きいかな」

「なるほどね。楽しみだね。でも危なくなったら・・・」
「逃げるさ」

 1月下旬。作戦当日。
 ネクタイの車でK市まで向かう。
 久しぶりのK市。
 K駅周辺に駐車場があるので、車をそこに止めることにした。
 歩いて5分、店の前に着く。
 私は緊張していた。
 サイコパスについては調べに調べた。
 しかし、本物を相手にすること自体が初めてだったので緊張からは逃れられなかった。
 深呼吸をして扉を開け・れない。
 鍵がかかっていた。
 Twitterで店のアカウント見ると、今日は休みだと。
 しまった。
 確認してくれば良かった。
 まいさんは体が弱い。圧倒的な能力がある人は何かしらの欠陥があるものだ。

 私はネクタイに謝ってから帰路に着いた。

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