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冥土喫茶に逝こう⑬

男なら女性を誘わないと②

 したたかさは必要だ。
 生きていく以上、時としてしたたかに生きないといけない。
 いい人ばかりではないから。

 ある女性にLINEで連絡をとった。
 メイドのあめさんだ。
 彼女からアプローチを受けていたからだ。
 連絡を取る手段を考えていたところ、ある策が浮かんだ。
 あの店は、1人のメイドがお客をお見送りしてくれる。
 2つの扉があり、メイドが1つ目を開いて2つ目の扉をあけてくれた時が、連絡の紙を渡すチャンス。

 私は見事に成功し、彼女と連絡をとっていた。
 ただ、まいさんの例もある。
 嘘のアプローチである可能性もある。
 あめさんもまた違った思惑を持って、私にアプローチしていたかもしれない。
 私としては情報だけが欲しいので、情報だけもらったら用はない。

 それに、私は巨乳の女性が好みだ。
 まいさんもあめさんもまあまああるが、巨乳ではない。
 残念だ。

 LINEであめさんに連絡する。
「こんにちは」
 すぐに返信が来た。
「こんにちは。どうしました?」
「美味しい店があるから行かない?」
「う〜ん、奢りなら行きます。あと私買い物にもいきたいので付き合ってくれませんか?」

 奢りならくるのか。
 間違いなく思惑は、私のお金でいろいろ買おうとか考えているな。
 情報のためだ。
 ご飯だけは奢ろう。
 服はどんなにせがまれても買わない。

「いいよ。あとまいさんってどう?」
「どうとは?」
「誰か付き合っているの?」
「う〜ん。LINEだと情報が残ってしまうので、会って話します」
「了解。9月の土曜日に行こうか?時間は12時で場所はどこがいい?」
「は〜い。場所はN駅でいいですよ。待ってます」

 約束は取り付けた。
 次は月さんだな。
 彼女からもアプローチを受けていた。
 あめさんと同じように、紙を渡し連絡がきた。

「ぼうしさん、どうしました?」
「前デザートをたくさん食べたいって行っていたよね?」
「はい。ま、まさか連れてってくれるんですか?」
 私が言わなくても、彼女からアクションを起こしてくるとは。
「連れていくよ。住んでいる場所N市だよね?」
「はい。そうなんですよ」
「わかった。9月の土曜日に行こうか?時間は16時くらいで場所はN駅」
「は〜い。わかりました。楽しみ。ありがとう」
 彼女に対しては、真摯に対応しようとLINEの文面を見て思った。

 2人の約束をとりつけた。
 車で行こうか、電車で行こうか考えた。
 N市は交通量が多い。
 はっきりいって運転したくない。
 電車で行こう。

 私は次にネクタイに電話した。
「今週の土曜日、15時ごろ電話してほしい」
「はい?」
「ネクタイに演技をしてほしい。仕事の電話と称して私に」
「なぜ?」
「詳しい話はまた報告するから。すぐに会社にくるようにっていう演技をしてほしい」
「電話でそれをやるの?」
「そうです」
「よくわからないけど抜け出すために助けが必要なんだね」
 察しが早い。
 頼りになる男だ。
「頼むね」
「了解」

 したたかさは必要だ。
 女性はしたたかな人が多いが、男性にもしたたかさは必要だ。

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