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冥土喫茶に逝こう【実話】⑧

N市のメイド喫茶

 休みに入った。
 私は胸の鼓動を抑えるように、N市に行く準備をする。
 太陽の日差しが眩しく、肌が焼ける。

 私服はシンプルな服装だ。
 Tシャツにデニム、左腕に時計をして、ボディバッグを背負う。
 足元はビルケンシュトック。

 肌が弱い体質なのでハットをかぶり、日焼け防止。
 ぼうしという名前にして正解だったなと考えながら外に出た。


 熱気と夏の日差しが体に突き刺さる。
 今日も暑くなりそうだなと考えながら軽やかに駅まで向かう。

 N市には20代の頃、服を買いによく通っていた。
 30代になってGUやユニクロでこと足りると考えて、あまり行っていない。
 ただ、アウターやジャケットは良いものを買いたかったのでちょくちょく買い物には来ていた。

 N市までは電車で50分。
 夜にはK市に向かわなければならない。
 3、4軒回ってK市に行く予定だ。

 N駅に着いたが、いつも通り人が多い。
 土曜日なのだからあたりかもしれないが人混みは嫌いだ。

 N駅周辺にもメイド喫茶はあるのだが、今回は地下鉄に乗ってある場所に行く。
 いろいろ調べていると、N駅周辺に多くのメイド喫茶がある。
 また、N駅から少し離れた場所にメイド喫茶が固まっていた。

 地下鉄で5分。
 1軒目に向かう。
 1軒目のメイド喫茶はメイド業界では大手で、海外にもあるそうだ。

 扉を開けて店の中に入る。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
 K市のメイド喫茶と同じ掛け声をしてくれた。
 いらっしゃいませ、ご主人様は基本なのだろうかと考えているとメイドが私に話しかけてきた。

「お一人様ですか?」
「ええ、一人です」
「そうですか。よかったらこちらにお座りください」
 メイドは膝を曲げ、両手でテーブル席をさした。
 仕草が可愛い。

 私はその席に座り、説明を受けた。
 初めて来るお客には必ずするようで、ザックリ説明をするならメイドには手を出さない。
 暴言を言わない等などだった。
 入国料と呼ばれる入店料は500円でワンオーダー制。
 1時間ごとにチャージ料が発生する。

 せっかく他のメイド喫茶に遊びにきたのだから、TVで見ていたあれをやりたい。ケチャップで可愛い絵を描いてもらうオムライス。

「オムライスと生ビールください」
「かしこまりました」
 しばらくすると生ビールが到着。
 昼間から飲むビールは最高ですなと考えているとオムライスがテーブルに運ばれる。

 メイドがケッチャプを持っている。
「描いて欲しい要望あります?」
「ないよ。自由に描いて」
 その言葉を聞くとメイドは可愛い猫の絵とハートマークを描いてくれた。
 せっかくの記念にスマホで写真をとった。

 辺りを見渡すとカウンターとテーブル席があり、30人ほどのお客が入れるようだ。メイドとチェキを撮っているお客もいた。
 青と白のメイド服、膝上までのフリルスカートとニーソは、K市のメイド服とよく似ている。
 一定時間話すと他のお客のところに行って、話し出すこともK市の店とよく似ている。

 1時間後、私は会計をして店を出た。
 感想は普通。可もなく不可もない。
 10代の子ばかりであることと、危なそうなメイドはいなかった。
 普通は危なそうなメイドがいたらおかしいわけだけど。
 ただ客層が少し悪いと感じた。何か気持ち悪い感じをうけた。

 2軒目は小さい店だった。
 カウンターに5人座れ、店の奥にソファーが置いていた。
 ソファーには4人くらい座れるようだ。
 K市の店並に狭い。

 私はカウンターに座った。
 1時間ワンオーダー制で1000円のようだ。
 生ビールを注文しメイドと話していたがある疑問が浮かぶ。

 これはメイド服なのか。
 お姫様みたいな服装だな。
 たまたま当たったメイドのトーク力に1時間はあっという間に終わった。
 会計の時にお店のポイントカードを作ってもらい店を出た。
 お見送りの時に
「次も来てくださいね」
 と言われた。
 この店なら通って良いかな。

 こじんまりした店の方が私としては落ち着く。
 地元でもこじんまりした居酒屋で飲んでいるので、1軒目の大きい店ではなく小さい店の方が私にはあっていた。
 そういえば、いらっしゃいませご主人様と言われなかったな。

 3軒目は、2軒目と同じビルの3階にあった。
 店に入ると、いらっしゃいませだけ言われ私は席についた。
 6人ほどが座れるL字カウンターのみのメイド喫茶だ。

 入店料に500円かかり、1時間ワンオーダー制。
 オレンジと白のメイド服。
 膝上のオレンジのフリルスカート。
 そして、ニーソ!!
 ウサギのカチューシャをつけていた。
 1時間ほど話、店を出た。
 ポイントカードを作ってもらい、お見送りをしてもらう。
 お見送りの時に
「次も来てくださいね」

 2軒目と同じことを言われるとは。
 決まりきった台詞なのだろう。
 この店なら通って良いかな。
 こじんまりしたお店は、やはり落ち着ける。

 メイド巡りが終わったので、久しぶりにN市の街を散歩した。
 私が通っていた時と比べ、様変わりしている姿にいつか終わりが来るんだなと、しみじみと感じながら私はK市に向かった。

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