見出し画像

冥土喫茶に逝こう【実話】⑦

twitterと24時間戦えますか♪
 目が覚め、私はカーテンを開けた。
 空を見上げれば夏の空だった。

 昨日の打ち上げは疲れがピークだったので断ってしまった。
 もったいないことをした。
 情報集めにはうってつけだったのに。
 仕事が忙しかったことを恨んだ。

 顔を洗い、朝ごはんを食べ、部屋の掃除をした。
 掃除をしながら考える。

 twitterをやろう。
 まいさんやあめさんなどのメイドや、店の常連たちにも言われていたことを思いだした。

 私としては性に合っていないと思っていた。
 しかし、他の方に言われたことと、twitterで情報集めとその時の人の感情がどのようになっているかがわかりやすいと考えた。

 人の感情はコロコロ変わる。
 今相手がどのような精神状態か、人目でわかるのがtwitterだと考えている。
 ただ、つぶやきがないとどのような状態か、わかりにくいというのが難点だ。
 つぶやきを見れば相手がどんな状態かわかる。
 ただし、相手の状態がわかるには相手のことよく知っていなければいけない。

 掃除が終わると、早速twitterのアカウントを作成。
 店のアカウント、知っているメイドや常連をフォローしていく。

 Twitterを始めると、おすすめツイートが表示された。
 表示されたのはN市のメイド喫茶のアカウントだった。

 他のメイド喫茶のことを知らない。
 K市のメイド喫茶並みに楽しい店はあるのだろうか。
 比較してみよう。
 何かと比較するということは大切なことだ。
 それに、情報は多い方がいい。

 2週間もたてばお盆。
 長期の休みになる。

 いろいろなお店を調べてみると、土、日曜日は12時から開店しているようだ。
 昼間はN市のメイド、夜はK市のメイドで遊べそうだ。
 最近、メイドばかりの生活になっているような気がするが、久しぶりに楽しいなと私は感じていた。

―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―

 会社の外で作業をしていると背後から
「今絶好調だろうね」
 社長が一言言ってその場をそそくさと離れて言った。
 背後から話しかけられたことと、社長がすぐに離れてしまったことで私は言葉を発することなく社長の後ろ姿だけを見ていた。

 別の日の昼ごろ。
 私は海にいた。
 海を眺めながら、メイド喫茶をどのように回るか思案していた。
 N市にはメイド喫茶が多数あり、どこのメイド喫茶を回るのがいいか。
 2週間に分けて回るかなど考えていた。

 そんな時、1人の男性が私に近づいてきた。
 左足が悪いようで引きずっているかのように歩いている。
 右手には缶ビールを持っていた。
 近づくにつれて男の顔がよくわかった。

 70台くらいの人で見事な職人の顔だった。
 長年仕事をしていると人はその職種の顔になる。
 営業なら営業の顔。職人なら職人の顔。商売人なら商売の顔。
 自分の仕事の生き様が顔にあらわれると。
 40になろうが50になろうが甘っちょろい顔の人もいる。
 仕事にも生きることにも真剣になれず、ただ生きてきた人間には出せない顔でもある。

「今何歳だ?」
「32です」
「そうか。今お前絶好調だろ?」
 社長と同じ言葉を言われて私は少し驚いた。

「ええ、今絶好調です」
「そうだろうな」
 その一言を言った後、職人の顔を持っているおじいさんはビールを飲みながら私から離れた。

 なんなんだあれは。
 それを言うために私に近づいてきたのか。
 確かに調子がいい。
 昔のCMに24時間戦えますか?というCMがあった。
 20代の頃なら24時間戦えるわけないだろと思っていた。
 だが、今24時間戦えますか?と問われれば私はこう即答する。
 戦えます!!

 もうすぐ休みだ。
 早くN市に行って、メイド巡りを楽しまなければ。
 頭の中はメイドでいっぱいだった。
 だから、その時は気がつかなかった。
 見ただけで、なぜ私が絶好調だとわかったのかを。

もし応援してくださる方がいれば、サポートをお願いいたします。いただいたサポート費は、より一層有用な情報をみなさまに届けられるよう大切に使わせていただきます。