テナントのペットショップ
僕は山口県下関市のホームセンターに異動になった。冬であった。バカでかい店であった。総面積は全店一である。その代わり狭いスペースであるが、テナントが入っている。極めて稀なケースである。
ペットショップである。トリミングとかもするし、年末年始にはペットホテルもやっている。そのため正月には防犯の鍵を預けておかなければならない。
赴任早々、ペットショップのオーナーから、エアコンが壊れて、どうしようもないので、新しく買って欲しいといわれた。ペットショップはペットのために、それ専用にエアコンを設置している。家庭用のエアコンである。いつも暖房にしているので、部屋に入るとムッとする。それが3部屋あって、それぞれについている。3つとも壊れたらしい。
「修理じゃダメなんですか」
「何回も修理に出して、次は買い替えになるといわれた」
とのこと。テナントなので、基本エアコンとか水道修理とかメンテナンスはウチが持たなくてはならない。犬の毛が機械の中に入り込んで故障を起こし、短命に終わっているのかもしれない。
前任者は何もしてくれなかったとのことらしい。赤字経営が続いているので、怖くて上に言いきらなかったのかもしれない。
その辺僕はお構いなしである。というより、これはせんといかんことだろう。
会社の設備関係を担当している会社に連絡を取ると、
「家庭用だからうちは関係ない。電気屋回ったら」
といわれた。
早速EDIONとヤマダ電機に見積もりを取ってもらった。合い見積もりを取るのがルールである。ヤマダ電機のほうが安かったので、それで本部に申請し、許可が下りたので、設置した。おそらくはまた数年したら壊れるのだろうな、と思いつつも、とりあえず新品になったので、ぺットショップの女の子たちは大喜びであった。
翌年、バレンタインデイでその子たちからチョコレートをもらった。周りの従業員たちからはびっくりされた。今まで誰ももらったことがないらしいのだ。エアコン設置のお礼だろうとは思ったが、連中に自慢してやった。