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田舎のホームセンター(農業編)

 田植えには田植え足袋と田植え長靴の2種類がある。踝までしかない緑色の足袋と、泥に埋まって外れないようにするため、ゴムバンドで締め上げる長靴だ。どういう使い分けをしているのかはしらないが、売れるのは長靴の方だ。価格も高いが、そっちのほうが作業性がいいのだろうか。田植え経験のない僕にはよくわからない。第一、この田舎の店にくるまで、田植え靴なんぞ売った経験がない。ずっと都会の店にいたからだ。
 もう田植えはどこも済んだと思うが、その土地によって田植えの時期は決められているらしい。
 筑豊地方よりも筑後地方のほうが田植えが遅い。よって筑豊の店にいた僕は筑豊の田植えが終わる頃になると、筑後地区に商品を回していた。1年でこの短い時季しか売れない商品は仕入れ量とか扱いが難しい。それでも園芸よりはましである。枯れないから。
 園芸といえば、これまた都会の店と田舎の店では売れ方や売れるものが違う。田舎は何てったって商売で植えることが多い。もうふにゃふにゃになったらっきょうでも、まとめて幾らにしてくれば買うよ、といってくれる。都会だったら、即ロス廃棄だ。都会は明らかに趣味の世界である。それでも小学校とかで大口の注文があったりすることがある。
 田舎の店はお客様は農家の方が多い。長靴で来店して、店の中の床を泥まみれにしてくれちゃって、あとでモップで拭き上げるのが大変である。だからこの店は他の店と違って、店入口のポーチ下のマットを2枚使っている。少しでも泥を食い止めるためだ。
 農業従事者は長靴を買う。毎週長靴が入荷すると棚に入れるのに一苦労である。おそらくこれほど長靴が売れる店は他にはそうないだろうと思われる。
 農業従事者は年寄りが多い。よって、サイズは小さいサイズの方が売れる。大きいサイズは売れない。小倉の店とは逆である。小倉の店は若い工業関係の人が多く足もでかいので、28.0cmとかザラに売れる。田舎の店は24.5㎝、25.0㎝が多い。女性もののまだ小さいものも需要はある。28.0㎝なんて滅多に売れないから、小倉の店と小さいサイズと交換したりしていた。
 農業の未来のためにもっと若者が参加して発展していくべきなのだろうけど、若者はみな、都会へいってしまう。日本の悪循環である。
 
 

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