見出し画像

エキセントリック

 大学に入学して間もない頃だったかと思うが、先輩に連れられて、TV局にいった。プロポーズ大作戦という当時流行った番組の中の企画フィーリングカップル5対5の地方予選があって、それに急遽参加することになったのである。
 思えば高校時代にも、ぴったしカンカン(ぴったんこカンカンではない)の地方予選で、急遽同級生の女の子から出演するようにいわれて、参加して、適当にギャグをかませたけど、予選落ちした記憶がある。
 またか、という思いではあったが、先輩の依頼なので断ることも出来ず、一緒に行くことになった。予想通り僕が5番で、要するに一番おもろいやつ、変な奴がなる順番なのであるが、高校大学を通してよっぽど僕はエキセントリックな存在に見られていたらしい。
 オーディションの質問のなかで、自分は何に似ているか、という問題があり、当時丸眼鏡をしていたので「天皇陛下」(昭和天皇)といったら受けたが、チームは予選落ちした。
 大学祭の時も、ミスキャンパスに対抗するミスターキャンパスに強引に参加させられ、何やら寸劇をさせられたが、あまり受けずに、賞はもらえなかった。
 僕はその頃フォークギターを弾いて自作自演の歌を歌っていたのだが、コミックソングの方向に向かっておけば、意外と受けてメジャーになっていたかもしれぬ、とふと思わないでもない。そもそも高校のコンサートの時も僕が出るというだけで、コミックソングを歌うのかと思っていた人が多かったらしく、真面目な歌を歌ってガッカリさせた経験を持つ。
 そんな僕も平凡にサラリーマンになって結婚し、子供が出来て、今やほぼ隠居生活である。決してエキセントリックな人生は歩まず、無難な生活をしてきた。たまにそっちの方向にいったらどうだったかな、と思わぬでもないが、運命の神様はそっちへの誘惑をすることもなく、僕も当時興味はなかったので、これが僕の運命だったのだろうと思っている。実際それで幸せである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?