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隕石怪獣(ショートショート)

 惑星Xから地球を滅亡させるための隕石怪獣が、とりあえず1体だけ送り込まれた。地球側は怪しい隕石を早くも発見し、大気圏に入る前に破壊してしまいたかったが、それもできず、怪獣の隕石はやすやすと大気圏を越えて、地上に降り立った。
 人類は成り行きを見つめた。隕石はそのままの形で地上に降り立ち、未だ怪獣の姿に変身はしていない。
 地球防衛軍が現地に着いた。
「まいったな。普通の隕石なら大気圏で小さくなって消滅しているものなのに、あの石は全然変わっていない」
「普通に地球に落下した隕石とは違うようですね。どこかの星からのプレゼントかもしれません」
「プレゼント?それは迷惑な」
 ともかく念のため放射能を遮る服を着た隊員たちが、隕石の調査に当たった。調査の結果、生き物であることが判明した。
「何だって。生き物。では今眠っているのか。起きだしたら、暴れまくるんじゃないだろうな」
「その心配はどうやらないようです。生き物は大気圏突入の際に死んでしまっているようです。生命反応がありません」
「では何とか早く宇宙に捨ててしまえんものかな」
「むつかしいですけど、やってみましょう」
 ところが重くて宇宙へ持って行くどころか、10cmも動きはしない。
「細かく砕くことはできないのかね」
「やってみましょう」
 だが大気圏を耐えた石である。容易には壊れてくれない。まずは成分の分析から始まった。
 それによるとどうやらこの石は水に弱いことが分かった。
「なんだ、水か。水ならどこへでもある。ちょうど天気予報ではもうじき雨だ」
 やがて雨が降った。石は溶けだし、怪獣の姿が露わになってきた。だが死んでいるという情報なので怖くはない。
 ところがその時、どの時?突然怪獣が動き出したではないか。死んだって言ったのは誰だよ、という責任論に走ってはいけない。怪獣は起き上がり、のっしのっしと街に向けて歩き出したではないか。地球防衛軍はあわてた。
 そのうち、ちかくにいた隊員があやまって、怪獣を踏みつけてしまった。ブチッと音を立てて怪獣は潰れて死んだ。まるで、ネズミのように。
 隕石はもともと握りこぶしくらいの大きさだったので、怪獣の大きさもそんなものだったのである。

 

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