見出し画像

ボッコちゃん(ショートショート)

 星新一のショートショートの名作、ボッコちゃんを真似て、商売をしてやろうという男がいた。
 その前に随分昔の小説なので、知らない人もいると思うので、内容をかいつまんで話すと、・・・。
 ボッコちゃんはロボットのスナックの店員である。客がボッコちゃんと一緒に飲もうと思って店に来る。ボッコちゃんは客の相手をして、一緒に酒を飲む。勿論お代は客持ちだ。
 その客が帰った後、店のマスターがボッコちゃんの体からさっき飲んだ酒を取り出して、瓶に戻す。またそれを客に出すためだ。こうやって阿漕な商売をしていた。
 ところがある日、自殺志願の男がやってきて、酒に毒を入れる。ボッコちゃんと心中しようと図ったのだ。ところがボッコちゃんはロボットだから死なない。何も知らないマスターは毒の入った酒を別の客に出す。
 そういう内容だ。
 ボッコちゃんは既に完成していた。どう見ても本物の人間に見えるアンドロイドだ。ちゃんと客との受け答えもできる。完璧であった。
 あとは実際に店でお客に対応させて問題がないかである。
 男はあらかじめ来店した客には、アンドロイドであることを教えることにした。何かトラブルがあった時の用心のためである。作品のように自殺志願の男に来てもらっても困るからである。
 ところが、とんでもないことになった。基本、違う酒が混ざらないように、ウイスキーの水割り、しかも1種類のものしか出さないようにしていたのが、いざ、アンドロイドの体の中から酒を取り出してみると、ビール、焼酎、ウイスキーと、何かわからないものとのカクテルになっていた。何かわからないものはどうやら客の小便であった。
 いつの間にこんなことをしやがったんだ。男は怒りで、アンドロイドの胃の中を洗浄しながら、
「変なもの飲まされる前に断れよ、最新のAIが搭載されているんだろう」
と、アンドロイドをボコボコに殴りつけた。
 ボッコちゃんならぬ、ボコボコちゃんになった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?