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16の思いも天に昇る

プロローグ

 今年もとても暑い夏が始まり、セミがけたたましく鳴いている。
暑さとセミの声で頭がおかしくなりそうだ。
 寝苦しい夜が続くある夜、誰もが予想だにしていなかったことが起きた。
 湯本広は塾からの帰りで自転車に乗って帰路を急いでいた。
裏道から大通に出ようとした時、よそ見運転をしていた大型トラックに撥ねられた。
それは一瞬の出来事だった。
まるでゴムマリのようにポーンと、自転車と一緒に宙に飛び跳ねた。
 時刻は八時頃で暗かったが大通だけに目撃者が多く、すぐに誰かが連絡した。
道は混んでおらず早々に救急車が到着し、近くの病院まで搬送されたが、打ちどころが悪く、間もなく息を引き取った。
 広は勉強も運動も良くでき、誰もがうらやむ二枚目だった。また、ユーモアのセンスもあり、正義感が強く、誰にでも優しく接していたので、女子からも男子からも人気があった。
交通事故で亡くなったことが、翌日広の通っていた学校で告げられた。
 それぞれの思いが、広のいないことが教室の空気を重くした。
 日がじりじりと照りつけて来る。まだまだ夏は続きそうだ。
 

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