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元ぼったくりバー店員の記録 第二章 その4 L’arc〜en〜Ciel

この新店舗には、前回と御多分に漏れずカラオケがあり、休憩中や開店前に歌う事が出来ました。
今まで客が使った事はありませんでしたが、今回初めて使われたのです。

客は30代前半くらいの男性でした。
会計額はごく平均で、軽くやって次に行こうという流れでした。

彼は、女の子との話で盛り上がってしまったのか、「カラオケいいですか!」と元気よく私達に聞いてきました。そろそろ帰りたかったのですが、特に断る理由もないので「もちろんです」と答えました。

1曲100円。ここでも値段を釣り上げようと思いましたが、小銭を拾うよりは大きいところで稼ぐべきだと思った為しませんでした。

入れた曲はL’arc〜en〜CielのReady steady go。
私も好きなので合いの手入れました。とても楽しかったです。

もちろん、仕事なのでぼったくりますが。

曲が終わって、会計になるとどちらが払うかでモメています。女の子が払うのはあり得ません。なので客に払わせます。しかし、手持ちもATMにもお金が無いので後日支払いになりました。

免許証の写真を撮って、誓約書を書いて、終わりでした。そして帰りの支度をしていると見張りから「客が戻ってる」との連絡が。

そのまま待っていると、確かに先ほどのラルクが帰ってきました。幸いノーゲストだったので店の外で話を聞く事にしました。

「どうしましたか?」と聞くと、「これおかしくないですか?」と。誓約書を見せろと言うので、ラルクのを見せました。これではなく女の方を見せろと言ってきました。

ここで最大のミス。個人情報なので見せられませんと言っていればすぐに終わるはずでしたが、見せてしまいました。

実は、誓約書を書くのは客だけではなく女の子も書きます。客に店を信頼させる、飽くまで私は中立ですよというブラフの為です。どうしても折り合いがつかない際にこの手を使っていました。

なので、時間短縮のために女の子には適当に書かせていたのですが、それを実際に見せてしまったのです。慚愧に耐えない失態です。油断していました。瑣末な事の積み重ねが即、死につながります。

それを見た客が「どういう事ですか?」と聞いてきました。「きちんと確認していませんでした」と答えると「おかしいですよ、女の子の免許証を見せてください」と言ってきました。一度オーナーに確認しますと言い、店の中に入りました。垣に相談すると、「電話を繋げたまま、乗り切れ」との事。

MAJICAと思いながらも、待たせていられないので外に戻ろうとすると、天啓が降りてきました。

免許証の写真さえ見せなければ、どうにでもなる。
今回の会計に店は関係ないんだから、後はそちらでやってくださいと言える。

戻った私は、こちらから女性に連絡すると言いました。それでも納得しない様子。どうしても店と女の子との癒着を暴きたいらしいです。

免許証を見せろの一点張りで引かないので、警察をダシにしました。

「あなたが司法関係者、または警察官であるなら分かりますが、一般の方には個人情報を見せられません」

もうひたすら私も壊れたロボットのように繰り返しました。そうすると、相手も諦めたのか「もういいです」とだけ言い帰って行きました。

最大の失態を乗り切りました。
まあ、この世はやられる方が悪いですから。勝たなければ誰かの養分です。
愚半意識の無い私に勝てる訳がありませんでした。

後日しっかりお支払い頂きました。

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