見出し画像

元ぼったくりバー店員の記録 その5 初出勤



説明会が終わり、新宿をぶらつき帰宅しました。
私は思いました。世界は広いな、と。まだまだ私の知らない世界があり、更に裏を見てみたいという気持ちが芽生えました。

そしてついに出勤日、六本木に着きました。
煌びやかな景色とは裏腹に、何か艶めかしい雰囲気を感じました。人の欲望が渦巻くからでしょうか。

某所で待っていますと、友人とこの前の説明会の時とはまた違う男が来ました。名前は鶴田といい、同い年のチャラ男でした。
そしてもう1人が港。この男が前回に歌舞伎町で偶然出会った友人であり今回の見張りです。グループのリーダーですね。
こうして3人揃ったのでバーに向かいます。


店に入る前に、店前に置いてあるおしぼりを回収します。もちろん新品です。こういった所はきちんとしています。ぼったくりバーなのに。
次は前の日に残っていた片付けや皿洗いをします。基本的に客に疑われないように設備は綺麗にします。ここらへんは普通の飲食店よりはかなり厳しく行っていました。
勘ぐられる可能性を限りなくゼロにします。

そして誰かが掃除している間に1人が買い出しに行きます。メニューと照らし合わせて足りない物を買いに行きます。ここだけの話ですが、私はおやつをたくさん買っていました。したたかに。

そして店に戻り、メインバーテンは同い年の鶴田が行い、新人だった私はサブバーテンで見張りは港でした。
あ、たまに女の子が早く来たりした日はお話ししてました。楽しかったです。

後はひたすらアポ取り、アポ取り、アポ取りでした。しかし、私が1件取る間に鶴田は3件取っていました。こいつ天才か?と思いました。素直に嫉妬しました。
やり方を聞くと、使っているアプリの数が圧倒的に違いました。私の2つに対し彼は10個ほど使っていたのです。それでは勝てる訳がありません。
ここで私は「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉を思い出しました。愚者でした。
こうして賢者になった私は彼とアポ取りを続け伝説のアポ取りランナーになったのでした。それはまた別のお話です。


…食材の仕込みをして”お客様”を待ちます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?