プレゼント
今週から、仕事が盆休みに入った。
僕の会社では、この時期に一週間ほどの長期休暇が与えられる。
プライベートを満喫するタイプでもない僕にとって、これほどの長い休みを貰っても、正直持て余すことが多い。
大学の友人と会う約束があるくらいで、それ以外はほとんど予定は入れていない。だが、仕事のことを考えずに家でダラダラと過ごせるのは、充分に嬉しい。
家で本を読んだり、映画を観たりしながら、しばしの休息を堪能していた僕だったが、3日目になると少し飽きてきた。
ダラダラと過ごすのは好きだが、毎日同じことを繰り返していると、さすがに退屈に感じてくる。
気晴らしも兼ねて、僕はペットショップへと出かけた。
側面にミカンのイラストが描かれた小さな箱のおもちゃで、ボタンを押すと、箱の上面が開いて、中に入っている猫のミニチュアが、開いた隙間から前足を出す。
少し前に、このおもちゃに夢中になって遊んでいる猫の動画を見たことがあった。
家の飼い猫にもそのおもちゃで遊んでもらいたい。それ以来、そんなことを思っていた。
ペットショップに到着し、目的の商品を探すと案外すぐに見つかった。2000円もかからないぐらいのお手頃な価格だった。
家に帰り、すぐにそのおもちゃを開けた。
すると興味津々な様子で飼い猫が近付いてきた。顔を近付けて匂いを嗅いでいる。
興味が失せないうちにすぐにボタンを押してみた。
無機質な機械音と共に箱の上面が開いた。そして猫のミニチュアが鳴き声を出しながら、前足を隙間から覗かせる。
唐突な出来事に、飼い猫は困惑しているようだった。頭を低くして得体のしれない箱の様子を伺っている。
3回ほど繰り返すと、ようやくこのおもちゃの意図に気付き、箱の中のミニチュアを引っ張り出そうとし始めた。
気に入ってくれて良かった。
高い買い物をしたわけではないが、無駄な出費はしたくはない。飼い猫が夢中になっている様子を見て、僕は満足していた。
ところが、その後しばらく続けていると飼い猫の反応が変化してきた。
おもちゃから離れ、毛づくろいをし始めた。時折、顔をこちらに向けるが、再び毛づくろいの作業に戻る。
猫は気まぐれな生き物。理解はしていたが、僕はなんだか納得がいかなかった。その後もボタンを押し続けた。
挙句の果てに、飼い猫は腹ばいになって眠り始めた。おもちゃには気にも留めず、すやすやと寝息を立てている。
不服な気分を抱えたまま、僕はボタンを押すのを止めた。
無駄な出費をしてしまった。少しだけ後悔の念が湧いてきた。
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