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コーンフラワーとターメリックのケーキ

トウモロコシ粉にハマった話を⬇️ここ⬇️でしたが、

例の、見つけて舞い上がってしまったレシピの一つがこの「コーンフラワーとターメリックのケーキ」である。ちなみに在仏。

まず香辛料の問題があった。友達の家でご馳走になったお料理に使われてて欲しくなったり、スーパーでふとその気になって買ってしまったものの、その後思ったほど使わず持て余してしまう。そんな、かなり残った状態の香辛料が結構溜まっていた。使いこなせず居座っているのが気になる。そこにターメリックがおった!

そもそもターメリックって、自分の中では基本しょっぱい物に使うもので、甘い物に使うという概念がなかった。南アジアや中東のお菓子として出されたのなら分かるし、心躍らせながら興味深くいただく。でも自分で作るお菓子に使ってみるって発想は全くなかった。

次にレシピ。大抵材料と作り方を見れば、写真が無くとも何となくどういう仕上がりになるか見当がつく。だけど、こればかりはどんな味になるのか想像しにくかった。完成写真はあった。ターメリックの黄色が目立っているのが分かる。でも味はもちろん分からない。

レシピはこちらの岡部加菜子さんのを使用。画像使用などが不可なので、詳細はサイトを参照してくださいな。ここでは材料だけを羅列。

・トウモロコシ粉
・薄力粉
・ターメリック
・カルダモン
・ベーキングパウダー
・塩
・砂糖
・牛乳
・米油
・トッピング用白ごま

https://tomiz.com/recipe/pro/detail/20231011090120

味への戸惑いの原因は材料で、このレシピは更にトウモロコシ粉とカルダモンを使っている。胡麻もね。香りの良いケーキだろうことは想像つくけれど、味が分からぬ。「カルダモン+ターメリック+砂糖」が難しい。しょっぱい系なら分かるんだよ。両方とも個性が強いから味が喧嘩しないのかなあ。

トウモロコシ粉も薄力粉のようにパンやケーキに使うことがあるのは知っていた。けど作ったことがなかった。ここで語ったように、ポレンタから外郎もどきと似非葛餅へと進化し、和物を食べられるのが嬉しくてネチョネチョ系ばかり作っていたのだ。ついでに言っておくと、大麦を使って横山詠津子さんのレシピで、これまた邪道大麦もち甘味和物も始めてしまっていた。

ボレンタの感覚と南米料理から、トウモロコシ粉を使うと重そうなケーキになりそうな気はした。トルティーヤだってポテチより重いじゃない。一枚の重さじゃなくて、お腹にくるって意味だよ。が、味がとにかく気になる。玉子も使ってない。冷蔵庫ほぼ空っぽで玉子なんてないもん。それでも出来る。もうお祭り状態。フィーバー、フィーバー!

なんたって未知の味との出会いと正当な在庫整理が一気にできるのだ。しかもバターじゃなく油系のケーキ。その上材料が液体も含め全部グラム表記。最高としか言えない。仕上がりが想像つかない、こんなに楽しそうなレシピに出会ったのは前回がいつだったか思い出せない位あまりにも久しぶり過ぎて、一人静かに興奮し、はしゃいでいた。

カルダモンは相当昔になんとか使い切った。また激高ではないけど高い方の部類で、このケーキが合わなかった場合、再度在庫化するのがみえていた。しかも使うのは少量。だから使わないことにした。

はやる気持ちが強烈過ぎたのと金欠なのもあって、未知との遭遇はもう、なるべくあるものだけで試作することにした。「カルダモンの替わりに玉子を買えば他のトウモロコシ粉を使ったケーキも作れるよ」という理性も囁く。米油も普通の油に変えた。白ごまも手元になかったので諦めた。もはや別物に近い。

もう一刻も早く作ってみたいという思いで操業不能となってしまっていたのだ。結局一番の肝となる「ターメリック+カルダモン+砂糖」はお預けになって、在庫消費が主になってしまったような気がしないでもなかった。

とにかく作ってみる。2倍の量にした。こっちだとそれが標準サイズなんだよ。砂糖の量は抑えた。作業は簡単だった。2倍の量のターメリックを量るときの嬉しさと言ったら!もう幸せ全開。喜びを抑えきれない。多分いい笑顔をしてたと思う。


型に流し入れた生地

焼く前の生地をみると、ターメリック関連の変化なのか小さな赤い点状の物が見える。この写真だと分からないね。前に作った病気の伊達巻を思い出した。これは別途記事にする。伊達巻の件も頭をかすり、黄土色に赤という、ますます仕上がりが分からなくなる困惑状態。

一番の難関は焼きだった。オーブンがないから、ケーキを焼くときはいつもフライパンを使って作ってる。が、大家さんが工事してIHに代えた。家賃も上がった。要は火が変わったのだ。

オーブンもそうだけど、使い慣れてないので作るのって、作り慣れたものでも難しいんだよ。火加減と時間がね、温度設定ができるオーブンでさえも。

なのに初めてのレシピを ほぼ初めて使うIHでって、かなりチャレンジャー。ヒーターは2つあるけど、どっちのが火力が強いのかも分からんという。ポレンタ&なんちゃって和菓子部隊での感覚から、今まで使ってないほうが弱いとみてそちらを選び、火の強さも勘で決めた。

更に今までは、フライパンにアルミ箔で軽く蓋をして、その上に鍋蓋を置くという作り方をしていた。直接鍋蓋を使えればいいんだけど、フライパンより小さかった。アルミだけだと浮いてしまって空気が逃げるので重し代わりに蓋を置く。だがしかし。

その使い慣れたフライパンはIHに適合してないので使えない。器も初物を使うことになる。しかも合う蓋がないという。うーむ、うぅーむ…と考える。すると突然あっ!と閃いてやってみたらドンピシャだった。ラッキー。


型にフライパンで蓋をする

これをフランス語で Système D という。あるもので何とかすること。Système D の女王を自他共に認めているのもあって大満足。何よりアルミ式より楽になったのが嬉しい。あれだと生地が膨らむとアルミにベッタリくっついてもったいないし、それを見た瞬間の気の抜け方も半端なかったし、見た目も難だしそこがちょっと気になっていたのだ。それがこれだとまずないだろう。至極ご機嫌。

弱火で焼き続けていると、ターメリックの良い香りが広がってくる。油だけ敷いて粉は振らずに焼いている。弱火過ぎたのか、下はそれなりに焼けているようなのに上が生だ。ひっくり返さねばならぬ。これが難しい。下にフォークをいれるとそれだけでヒビが入る。下の焼き具合が甘いのかな。もうちょっと焼いた方がいいのかもしれんと放っておくことにした。

そして再度挑戦。やっぱりどうやってもひび割れる。もう諦めてフライパンからケーキを横滑りさせてお皿に移し、ひっくり返したフライパンを被せて天地を返し、上部だった部分の焼きに再び入る。いい匂い。移動のときに落ちたかけらをつまみ食いしたらカリカリといい感じになっていた。味はまだハッキリ分からない。


上下を返したケーキ

厚さ自体はそんなに無いので、思ったより短時間で焼けた。早速試食。切ろうとナイフを入れ…おぅおぅおぅ、途端にひび割れる。焼き立てだと生地がまだ柔らかいものだけど、フライパンだと多少固めになるんよね。焼きすぎたかなと思いつつ一切れ取り出すが、が、が、もろい!上下は焼きが入っているので普通だけれど中がもろい。で、全体がすごく崩れやすい。表題に使っている写真の先端部分のかけ具合がそれを語っている。


脆いので切り口がボロボロ。うまく切れない

崩れたかけらを食べてみた。異国の味だ。もろさの割に重くどっしりしている。やっぱりトウモロコシ粉を使ったからかな。喉に詰まりそうで牛乳が欲しくなる。ターメリックと砂糖の組み合わせはありだよ、すごく気に入った。塩もいい感じで味を締める。難点はもろさ。これ、ケーキだけ持って、と言っても崩れるから持てないけど、それでも無理して食べ歩いたらヘンゼルとグレーテル状態でどこを歩いたかハッキリ分かるよ。


ターメリックの鮮やかな黄色。脆さで中心に近い部分が欠けているのが分かる

作り方も勝手にアレンジした。先に粉類を全部量ってから牛乳そして油を入れて混ぜただけ。洗い物面倒臭いからー。珍しいケーキなのに物凄く簡単。

他にない味に魅了され、しばらくターメリックのみでリピートしていたこのケーキ、とうとうカルダモンとの邂逅の時がやって来た。フランス語で言うところの Jour J ですよ。重要な日のこと。英語の D-Day の直訳。相変わらず胡麻なしで。完成型への道は遠い。

いつものようにターメリックをニコニコと量り、いよいよカルダモンさんの入場。ところが瓶を振っても振っても0gのままで1gにすらならない。それでも振り続ける。流石にターメリックより多くない?秤がおかしい?と思い、秤をリセット。改めて振るもやっぱり1gにすらならない。カルダモンの香りがかなり強くなってきて不安になったので、そこでやめた。

秤も電池がなくなってきてるのかと思いつつベーキングパウダーを量ったらちゃんと表示してくれた。つまりカルダモンは匂いの割に、必要量を使ってないということになる。

そしていつものように焼いた。待ち時間ワクワク。より一層異国のいい香りがする。カルダモンが効いてる。私が通常作るものでは、こういう香りは出ない。お洒落なサロンにでもなったような気がした。完成。

もろいのは既に分かっている。病気の伊達巻と違い、焼くと赤い点は消えるんよ。ジャムなんかに使う尖ってないナイフで切った。ほわんと立ち上る芳香。言われなければお菓子というより食事系の匂いだね。いつものように崩れたところをつまみ食い。周りはカリカリ、中はどっしり。そして初の邂逅は、分量より少ないはずにも関わらずカルダモンの自己主張が強い。レシピにも書いてあったけど、これは濃いミルクティーと合いそう。いつもドシンと構えていて、カルダモンに比べ量も多いはずのターメリックが少しかわいそうになるくらい。

次に作るときは、カルダモンを少し抑えてみようかなと思う。ターメリックに愛着が湧いちゃって、きれたらもう買う気だもの。

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