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『躁鬱大学』を読んで:「今ここ」を生きる

最近躁鬱に関する記事が伸びているので、味を占めて躁鬱についての話を書きます。
鬱病患者のことって、意外と関心が持たれているんですかね…?
どちらにせよ、伸びるのは嬉しいことです。自分をネタにして伸びるのはもっと嬉しい。

さて、今回取り扱う本は、坂口恭平『躁鬱大学』
裏表紙に書いてあるあらすじを引用します。

今日も仕事で失敗してしまった。自分は何もできない……と悩んでいても自分が苦しくなるだけ。やりたくないことは一切やらず、苦手なことには手を出さず、できることがもっともっとできるようになって、むちゃくちゃ褒められるほうが心地良いじゃないか。人生ボチボチ、努力は敵、今のままで大丈夫。気分の浮き沈みの激しさに苦しんだ著者が発見した、愉快にラクに生きる技術を徹底講義。

坂口恭平『躁鬱大学』裏表紙あらすじ

この本を書いた著者は、私と同じ躁鬱を抱えています。
躁鬱としての生活を長く送る中で、自分にあった生活や生き方を見つけて、それを講義形式で書き連ねた本になっています。

はっきり言うと、はじめこの本を読んだ時、私は著者に対して酷い嫌悪感を覚えました(ごめんなさい)。
あなたのことについて私はわかっていると言うような語り口をするわ、内容がぐちゃぐちゃなところがあるわ、自分の性癖について好き勝手書くわ、そんでもってその中身が一々生々しいわ、ただれた性生活について堂々と公表してかつ自分を擁護するわ……
真面目キャラとして生きてきた人間として、鼻につく文章があまりにも多かったのです。

普段なら、こうなったら読むのをやめてメルカリに投げちゃうのですが……なぜか、この本ではそういうことはせず、最後まで読み進めてしまいました。
それもサクサクと。

それは、きっと「躁鬱人(気分に波のある人の総称として、作中で使われています)」としての生き方が、この本を通してなんとなく分かってきた、掴めてきた、そのような実感があったからです。


この本を通じて私が特に印象に残った点について、箇条書きでまとめます。
あ、引用ではないですよ。いちいち引用箇所を探すのが面倒くさいので。論文ではありませんからね。

  • 人と関わりすぎない

  • やりたくないことはやらない

  • やりたいことをやることを通じて、人を幸せにすればよい

私はこれまで、これの逆をずっとやり続けてきました。
人と積極的に関わりに行き、やりたくないことも率先して引き受けて、とにかく人のためにがむしゃらに動くことで人を幸せにする。
このような生活を、これまでずっとやり続けてきたのです。
その結果、(医者の見立てでは)高校1年生から、躁鬱としての道を歩み始めてしまったのです。

人と関わりすぎない、やりたくないことはやらない、やりたいことをやることを通じて人を幸せにする。
これらは、私にとって大きな発見でした。
やりたいことだけをやって、自分にとって楽なように生きていいのか、と衝撃を受けました。

もちろん、それとともに、「そんな生き方できるわけない」という気持ちも抱きました。

しかし、私の過去の生活を振り返ってみると、実はそうでもないことに気づきました。

私は中学から高校のはじめまで、YouTubeでゆっくり実況やゆっくり茶番劇などの動画を作っていました。
(動画はとうの昔に消しましたが)
これをやっていた時は、ただただ夢中で動画制作に励んでいました。
そして、当時は毎日5時間程度しか寝ていない生活を送っていましたが、それも苦にならないくらい、とにかく楽しかったのを覚えています。

そして、ここで身につけた動画の技術を使って、中学校では新入生歓迎会の動画を、高校では文化祭のオープニング動画を担当し、あらゆる生徒を喜ばせたり驚かせたりすることができました。

私は知らない内に、やりたいことを突き詰めることを通じて、人を幸せにすることができていました。

つまり、著者の言っていることは机上の空論ではなくて、私達「躁鬱人」にとって的を射ていることなのでしょう。
これに気づいた時、彼の言葉がすとんと私の中に降りてきて、受け入れることができました。


彼の言う生き方は、アドラー心理学やらなんやらで時々説かれる
「今ここを生きる」
ということに繋がってくるように思えます。

自分のそばに「今」いてくれる人とともに、自分が「今」やりたいことを、「今」やって、この場、この瞬間を生きていく。

過去の自分や、過去言われた事、過去の人間関係……
これらは、今振り返っても仕方ないですし、ただただ鬱になって沈んでいくだけです。

そして、未来の自分や、未来に起きる事、未来の人間関係……
これらは考えていても誰にもわかりませんし、不安になるだけです。
なにより、これらは「今」に意識を向けることで、見えてくるものでしょう。

今、ここでやりたいことをやり、一緒にいてくれる人とともに生きていく。
こうすることで、自分にかかる負担もとい人にかかる負担を削り、気持ちを楽にして生きていくことができるのかもしれません。

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