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石原千秋『受験国語が君を救う! 』おもしろかったよ

石原千秋氏の本を以前に紹介した。

あと何冊か読んでみたいと思ってバイオグラフィーをみて選んだのがこれ。

面白そうなタイトルなので手にとってみたのだ。

まず、国語の入試問題には価値観が入り込んでいることを指摘。常識や良識に反してそうな文章は出題されないし、小説なら登場人物は道徳的に良い人ばっかりだ。まあ、白饅頭師匠の文章を出題した大学もあるというから、よくわからないが。
(白饅頭さんの本は、イメージに反して良識満載です)

そして問題の正解についても、あまりにも不道徳なものが正解になることはめったにない。そういうところで受験生を選別しているわけだね。
また受験国語特有の常識も必要になる。例えば、絶対などの断定的な言葉が入っている選択肢は除外するなどだ。

ということを踏まえた上で、実際の高校入試の問題をいくつか例にとって解説していくという感じで進んでいく。

まず驚いたのは、説明文がけっこう難しくて、しかも読み応えがあるのだ。これを中学3年生にやらせるのかよって感じだ。大人でもけっこう間違えそうだし、中3ならズタボロではなかろうか。

著者によると、あるものは難しめだが、あるものは進学校の中学入試よりもやさしいレベルらしい。てことは僕は小6のときにはこんなことやってたんだな。中学受験にもいいことあるんだね。

そして受験国語を解くには、要約文型と消去法型の2つの能力が必要なのだという。前者はざっくりと文意を把握する能力、後者は選択肢の文言が本文にあるかサーチする能力といいかえられる。

そして意外なことに、登場人物の気持ちはどれか?みたいな問題で必要なのは、ざっくり把握する能力ではなく、サーチする能力なのだ。これがないと正解を絞り込めないのである。もちろん著者は、小説を楽しむだけなら前者だけで十分だし、むしろそのほうが豊かな読解が可能になるかもしれないと言っている。だがこれは受験国語なのだ。

ちなみに説明文はもちろんのこと、小説でも私は一つも間違えなかった。登場人物や筆者のお気持ち的な問題は、高校生のころずっと苦手だったのに。

それは、消去法型の能力が当時と今では段違いだからだ。

IELTS、ケンブリッジ英検のreadingでは消去法型の読解力が厳しく問われるのである。程度の差はあれ、英検やTOEICも同様である。

大人になってからこれらをやり込んだおかげで、本書の例題を一つも間違えなかったのである。やはり母語だとふわっと読んでしまって、細かくサーチできてなかったんだろうなあ。外国語だと、もっと機械的に読むからね。


そして著者は、この2つのタイプの能力を同居させることが、受験国語には必須だと強調する。その上で、人間は案外いろんなことを身につけられるものなので、それは可能だと付け加える。つまり受験国語によって、様々な能力を身につけることを学べる。

さらには、複数の自分を飼うことで、いまここにいる自分や、過去の自分を客観的に、あるいは間主観的に観察できる。この能力は自分を社会の中で正しく、あるいは有利に位置づけていくために必須である。

だから「受験国語は君を救う」なのである。

以上、長々と書いたが、文字が大きく行間が広いのでとても読みやすい。一読推奨である。




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