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全日本卓球選手権決勝の感想

昨日に続いて全日本卓球選手権の話。

女子シングルス準決勝

事実上の決勝戦と思われた準決勝早田ひなvs伊藤美誠。

第1ゲーム、早田ひなが得意のフォアハンドドライブで圧倒。

第2・3ゲームは伊藤の速攻が決まるようになり伊藤が連取。ポイントになるバックサイドへのロングサーブも、要所でフォアで回り込んで対応した。

第4・5ゲームは一進一退の展開だった。伊藤は早田の豪腕ドライブにタイミングがあってきたのか何本もブロックしてみせる。早田は緩いドライブを混ぜてタイミングをずらそうとする。早田が連取してゲームカウント3-2と追い込んだ。

第6ゲーム、後がない伊藤だが落ち着き払っており、速攻にミスがなくなってくる。早田はなんとかついていくが伊藤が取った。

第7ゲームは終始伊藤がリードする。早田はやることがなくなって来た感じになる。レシーブはなぜか吸い寄せられるように伊藤が待ってるいるところに行くし、強打すればそこに伊藤のラケットがあるみたいな。点数上は競っていたけど、伊藤が格の違いを見せる格好で勝利した。

テーマの一つであった伊藤のバックサイドへのロングサーブ。伊藤は要所で回り込んでフォアドライブ、フォア強打で対抗した。これが要所で決まるのだが、早田が懲りずに出し続けたのは正しいと思う。ときどきフォアサイドへロングサーブを見せつつ、バックサイドへ回転に変化をつけてロングサーブを出しいくつか得点した。また回り込んでフォアドライブを打たせてそれを狙うという展開もあった。伊藤は短いサーブにはほぼ完璧に対応してきたのでロングサーブ中心に組み立てるしかなかったし、そうしなければもっと一方的なスコアになっていただろう。結局のところ、どんな競技でもいっしょなのだが、ときどきやられたとしても相対的に確率の高いことをやり続けるしかない。だから中国人選手は伊藤のバックサイドに執拗にロングサーブを出しまくるのだ。

しかし本当にヒリヒリする好試合だった。超高速でボールが往復する中でいかに相手の読みを外すか、という卓球の面白さを存分に堪能できた。解説の福原愛さんが選手の心理を丁寧に説明してくれたのもよかった。その舞台に立った者にしかわからないことがあるのだ。

もう片方の準決勝は順当に石川佳純が勝ち上がり、決勝は東京オリンピック代表に内定している二人の激突となった。

女子シングルス決勝

長く日本のエースとして君臨してきた石川佳純だが、伊藤美誠ら若手の台頭で全日本優勝からは遠ざかっていた。下馬評では伊藤有利とみられており、第1ゲームはそのとおり伊藤のキレキレの速攻で11-4。

第2ゲームは伊藤の攻撃にミスが多く出て石川が取り返す。結果的にはここが最初のキーポイントだったように思う。

第3、第4ゲームは伊藤が世界ランク3位の実力を存分に発揮して連取。石川は攻撃しても伊藤のナックル性ブロックに対応できず得点できない。早田ひなのドライブも止めまくってたし、伊藤美誠、守備力もはんぱない

第5、第6ゲームでは、石川が速攻をだいぶ凌げるようになり、伊藤はミスが増えてくる。石川の攻撃は相変わらずあまり決まらないが、緩いボールを混ぜることでミスを誘う。結果、ゲームカウント3-3と追いつくことに成功した。

第7ゲームでも流れは変わらず、伊藤が攻めきるかミスるかという展開で、石川がリードを保って押し切った。石川らしい気持ちの良いドライブはほとんどなくて、押し切ったって感じでもなかったけど。

見かけ上は伊藤が終始主導権を握っているようにみえたが、途中からは先手を取ることにこだわらず、回転、コースで変化をつけて耐えるという石川の戦術がはまっていた。早田ひなのような破壊的な攻撃力はない以上はダサい卓球で勝機を見出すほかなかったのだろう。攻撃力はなくても、台上の技術や守備力に一日の長がある石川らしい作戦だった。大舞台でストレスの溜まる作戦をやり切る精神力もさすがというほかない。

早田伊藤戦のような激しい先手の奪い合いもスリリングだけど、勢いのある若手がベテランの術中にハマっていくのもまた卓球観戦の醍醐味である。


男子シングルス決勝

男子の決勝はどちらも決勝は初めてという及川瑞基と森薗政崇であった。

張本智和とか丹羽孝希とか林印儒みたいな切れ味で勝負するタイプばっかり普段見てるので、久しぶりに男子らしい、パワフルでダイナミックな根性卓球を見れてよかった。

森薗政崇はBSテレ東の「卓球ジャパン」にしばしば出演しておりなんとなく親しみをもっていたのだが結果は残念だった。


まとめ

勝負は時の運。結果は結果でしかない。トップレベルのアスリートの対戦は51:49くらいで正しいことをやり続けたほうが勝つ。しかしなにが正しいかは相手の調子とか会場との相性とかも関連してくるので無常だ。だから結果にこだわりすぎることなく、毎日やるべきことを継続して成長していくことが重要だと再認識した。

最後に、難しい一年間を過ごした選手の皆さんにお疲れ様といいたい。
そして込み入った情況のなか開催に向けて奔走した関係者の皆さん、本当にありがとうございました。

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