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オデッド・ガロー『格差の起源』読んだ

ようやっと読んだ。

ここでいう格差とは、国内の格差ではなく、国家間、地域間の格差である。

ジャレッド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』に書いてあるように、アフリカ大陸や南北アメリカ大陸のような緯度差の大きい地域は、ユーラシア大陸に比べて、農業牧畜では不利であった。

しかし一次産業において有利であっても、生産性の増大は人口増大を招き、一人あたりの豊かさにはつながらなかったのが前近代である。

近代以降に産業革命などにより西ヨーロッパでは生産性が爆発的に増大した。

これにより児童の労働の生産性が相対的に低下した。また平均寿命の延長により、人的資本への投資リターンが高まる。そして教育期間の延長することになった。子供である期間が延長したことで初産年齢が遅くなり、出生率は低下した。

また親の所得増加により子供の教育に投入できるリソースが増えた。親の生産性増加により子供の養育の機会費用が相対的に増大し、これまた出生率が低下する要因となった。

インフラの整備により子供の死亡率低下したことも出生率の低下に寄与した。

出生率は低下しても人口は爆発的に増大し、かつ一人あたりの豊かさも増大した。

その一方で、農業に特化した地域は相対的に没落した。また商品作物のような土地集約的な産業が発展した植民地は、富の不平等などを通じて成長が阻害された

こうした地域感の格差を埋めるために著者は男女平等が大事だと説いている。

女性への教育とそれに伴う初産年齢の遅延により、出生率の低下、持続可能な人口規模へ収斂が期待できる。

しかし、先進国では男女平等による出生率低下は行き過ぎており、特に医療により異常な高齢化をきたしている本邦では現役世代の負担が持続不能な水準に達しているが、著者は先進国のそうした状況を視野には入れていないようだ。

先進国は民族存亡の危機に晒される地域もあろうが、人類全体としては、長期的には心地よい人口水準に落ち着くかもしれないね。

東アジアの民族がいくつか滅びて、多様性が多少失われたとしても、長い人類の歴史からしたらたいしたことではないよね。

ただし過渡期の労働者は塗炭の苦しみを味わうだろう。出生率低下と異常な高齢化により、絶え間ない搾取と遺伝子の断絶に怯えて暮らすことになろう。


その他の雑多な情報。

米などの潜在収量が多く、より協力を必要とする作物を栽培する地域では長期志向、協力的な文化が育つ。

気候変動が比較的均一な地域では損失回避的、気候変動が域内で多様な場合は損失中立的な文化になる。

東アフリカから離れるほど遺伝子の多様性は失われる。

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