自然言語処理能力を鍛えるにはなにがいいか?

哲学者ソール・クリプキの訃報に接した。

私がクリプキの言語行為論について学ぼうとしていたのはもう20年以上前のことだ。あまりにも理解できなかったので、それ以降放置して忘れてしまっていた。だからついこないだまでご存命であったことを知らなかった。

言語行為論はよくわからなかったが、自然言語というのは思いの外やっかいなものであるということは理解できた。

というか言語をそんなメタな次元で理解する以前に、文章を普通に理解することすら簡単ではない。母語なんだから普通に生活していたら身につくというものではない。

理解するためにトレーニングとしてなにがいいかということをついこないだニー仏さんが語っておられたので、クリプキ氏の訃報ついでに色々と思い出してしまったのである。

ニー仏さんは大学入試がその取っ掛かりとしていいのではないかと指摘されていた。

しかし高校入試、中学入試でも十分に歯応えあると感じたのが石原千秋氏のこの書籍だった。

ただ個人的には、英語の資格試験をおすすめしたい。もちろんある程度の文法や語彙が身についていることが前提だが。

英語の資格試験はいろいろあるが、IELTSが一番いいと思う。書かれていることと、書かれていないことを峻別することを厳しく問われるからである。つまり行間を読まずに、行を読む訓練になる。

書かれていることと、書かれていないことが区別できなければ、事実と価値判断の区別という思考するための基本動作ができなくなる。

国語の入試問題よりもIELTSをすすめるのは、英語の勉強にもなって一石二鳥というのもあるが、「TRUE / FALSE / NOT GIVE 問題」の存在である。

これは、以下の文章は本文に照らして、TRUE「正しい」か、FALSE「誤り」か、NOT GIVEN「言及されていない」か?を選ぶ問題である。

正解がTRUEの問題は簡単なのだが、FALSEとNOT GIVENを判別するのはかなり難しい。限られた時間でしっかりと本文を読まないといけない。

これがIELTSを推奨する大きな理由である。しかも最近は日本語の解説書も充実しつつあるのも嬉しい。



英検はIELTSに比べて問題が素直すぎる。逆にケンブリッジ英検は意地悪すぎるし、日本語の解説書がほとんどないので、一部の英語マニア以外には推奨できない。

TOEICは悪くないが、書かれていないことを推測することも求められるので、自然言語処理能力の鍛錬という観点からはおすすめできない。


というわけで自然言語処理能力を鍛えるためにIELTSを推奨するわけだが、問題は受験料が高すぎることだよな。まあでも参考書で勉強だけして受験しないのもありだなあと思うのだった。

サポートは執筆活動に使わせていただきます。