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浅田彰『歴史の終わりを超えて』読んだ、そして落合信彦大先生のこと

積読解消シリーズ。

Amazonに購入履歴がなく、もはや何年積んでいたのかもわからない。少なくとも20年は経っていると思われる。

ときは1990年代前半、浅田彰が世界の知識人にインタビューするというSAPIOの連載企画が初出である。

フランシス・フクヤマ、サイード、ジジェク、ボードリヤール、JGバラード、リオタール、ヴィリリオ、柄谷行人など、いかにもな面子なのが微笑ましい。
今なら各方面から小馬鹿にされるだろう。

タイトルからわかるようにフクヤマ「歴史の終わり」を肴にペチャクチャ喋るという企画である。

もちろん冷戦が終わったからといって歴史が終わるわけはなく、宙吊りになっていた歴史が再起動するだけ、というお話だ。いまウクライナでやってることはまさに宙吊りになっていた歴史である。

基本的にみなさんはフクヤマを批判しているが、そもそも歴史が終わるという発想がしょうもないし、そんなしょうもないものを批判してもいっそうしょうもないだけである。

第三世界ではしょっちゅう紛争がおこっているし、ロシアやウクライナもそういう範疇だろう。ただソ連が共産主義の旗手だったから後進性がわかりにくくなり、宙吊りになっていただけだ。

あるいはこの連載当時はバルカン半島がめちゃくちゃなことになっていた。ジジェクなどは心から嘆きつつも、ヨーロッパの東端がどこかを各々が主張しているのだと冷静な認識も示している。オーストリアとスロベニア、スロベニアとクロアチア、クロアチアとセルビア、どこまでが欧州なのか、古くからある問題だ。(古いと言っても、せいぜい19世紀以降だろうが)

それと柄谷行人が、戦前のリベラルとか共産主義者とかぜんぶ民主主義者で本物のリベラルは石橋湛山だけだったと指摘しているのは興味深かった。民主主義者というのは右だろうが左だろうが、国家につくしかない。大衆が求めるものにつくほかないからだ。
コロナ騒動で右も左も国家主義者になるのを予見していたかのようだ。

まあそれはいいとして。

中東の紛争は冷戦中もその後も続いていたし、今パレスチナでやっていることもその延長だろう。しかしこれとてさほど古い問題ではなく、オスマン・トルコ帝国崩壊以降の話である。

目新しいことがあるとすれば、ウクライナ戦争のためにパレスチナ問題が注目されにくくなっていたことくらいだろうか。

そういうようなことを山森みか先生のお話を聞きながら整理していたのだ。

恥ずかしながら私はベンヤミン・ネタニヤフが首相に復帰したのを知らなかった。2年前に失脚したときもう政治生命は終わりだと言われており、それを鵜呑みにしてしまったのだ。

ネタニヤフがその程度のことでへこたれる漢でないことを完全に失念していたのだ。

ところでSAPIOといえば落合信彦大先生である。

私は高校生のころ大先生の著書を読み漁っていたので、モサドとか特殊部隊とかについて無駄に知識をため込んでいた。

イスラエルの特殊部隊といえば栄光あるエンテベ空港奇襲作戦である。

テルアビブを出航し、アテネ国際空港を経由したのち、ハイジャックされたエールフランス便はウガンダのエンテベ空港に到着した。イスラエル人を人質にテログループは服役中のテロリストの解放を要求した。

もちろんイスラエル政府がそんなクソな要求を呑むわけがない。

ウガンダ政府もグルという無理ゲーなシチュエーションで、ベンヤミン・ネタニヤフらイスラエル特殊部隊はこれを急襲し、人質を救出、犠牲者わずか一名という空前絶後の戦果をあげたのだ。

その唯一の犠牲者が言わずとしれたヨニことヨナタン・ネタニヤフ、ベンヤミンの実兄である。

大先生はカウンターテロの取材を通じて、ベンヤミン・ネタニヤフと太いパイプを築いたものと思われる。

ネタニヤフさんがそんなガチの経歴の持ち主だということをすっかり忘れていた。

落合信彦大先生に私淑しておきながら恥ずかしいことである。


ちなみにエンテベ空港奇襲作戦は何度も映画化されている。一番のオススメはチャールズ・ブロンソン主演の『特攻サンダーボルト作戦』である。原題はRaid on Entebeなのに、ブロンソン主演だからってアホみたいな邦題つけやがって、、、許せん

邦題はあれだけど、中身はちゃんとした1970年代の戦争映画って感じで安心して楽しめる。


ヨニをリチャード・ドレイファスが演じた『エンテベの勝利』は大学生のころ、なにそれ観たいと思ってレンタルビデオ屋を回ったのだがどうしても見つけられなかった。

現実的な選択肢は最近の『エンテベ空港の7日間』だろう。

ロザムンド・パイクとダニエル・ブリュールがテロリスト役で、ヨニの扱いは小さいらしい。おそらく事実に近いのは本作なのだろう。

まあそのうち見るか。

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