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葛藤、逡巡からの力強い決意。間違いなく最高傑作!≠ME『アンチコンフィチュール』レビュー


「真っ白な天使の羽を真っ黒に染めるのどう?」と、若い女性のジェンダーロールからの解放を歌ったかのような力強いダンスナンバーの『天使は何処へ』から、一転して揺り戻しかのようなステレオタイプとも言える萌え感を強調した王道アイドルポップの『想わせぶりっこ』という、2023年のノイミーのシングルの流れというのは、意識的に見ている人ならば、一貫性がまるでないかのような違和感のあるものだったと言っていいと思います。

そんな違和感に対するアンサーとも言えるのが最新シングル『アンチコンフィチュール』なのかもしれないなと思いました。

一見すると、この『アンチコンフィチュール』も『天使は何処へ』のような、ジェンダーロールやステレオタイプな女性(アイドル)像の押し付けを否定しているようでいて、実際は【ひたすらな甘さ私みたい】【執拗に残る甘美な私も 好きだったような そうじゃないような】【今日の理想の人 どんな私 喉が焼けるように甘い私】と、ある種の女性アイドルが一般的に求められている魅力を自分があらかじめ纏っていることも、そんな甘い魅力を強力に持つことに対する憧れも真っ向からは否定はしていないのです。

それをまず前提として、それでもやはり【満足するならそこまでだ】【甘いだけが私じゃない】と、甘いだけに留まることを良しとしないという決意をするのです。
そしてもっと言えばその結論を導き出すのにきちんと【Do you love sweet
?自分が彷徨い 宙で散った】と葛藤している所を描くのがとても誠実だなと思います。
この葛藤は歌詞を書いた指原莉乃のプロデューサーとしての、「王道的なアイドルポップもやりたいけど、それと同時に現代を生きる女性としてきちんと表現して、強く世間に訴えていかなければいけない物もある」という葛藤を表現しているのだと思います。
この甘さへの一部的な肯定と葛藤が挟まれる事によって、サビの力強い決意が真に胸を打つのだと思います。
凄く良い歌詞だと思いますね。

そして『アンチコンフィチュール』は歌詞だけではなく、挑戦的な構成やアレンジが冴え渡る、音楽的な部分でもとても満足度が高い素晴らしい曲になっています。
まずA、Bメロの一般的なJ-POPに比べると音数が少なく隙間の多い洋楽的なアレンジの高級感がとても良い。
Bメロ前半、メンバーのウィスパーボイスが強調されるパートで訪れる静寂。痺れる。
歌メロもA、Bメロは今までにないような工夫のあるメロディーになっていて聞き応えがあります。
厳かな雰囲気のピアノの音も含め、A、Bメロの重厚さとヒリヒリするような緊張感は本当にかっこいい。
そこから一気に「これぞJ-POP」なメロディーの、力強いサビへとなだれ込むのもカタルシスがあってとても良い。
最終的にちゃんとこれはJ-POPだなと思わせながらも、通常のJ-POPのフォーマットから逸脱を見せて、洋楽ともK-POPとも違うオリジナリティを獲得しているという離れ業を見せているのが『アンチコンフィチュール』なのです。

振り付けも今までにない挑戦的な物で新鮮で良いですし、「甘さ」の表現が鮮烈な毒気を放つMVも素晴らしいですね。

間違いなくノイミーの最高傑作!!

カップリングにも触れておきましょう。
ノイミーらしい青春感溢れる、さややんこと谷崎早耶センターのラブソング『初恋カムバック』

サビメロの途中で切なさがさらに増幅するようなコード進行が良いですね。やっぱりこういうのも必要!

みるてんとしおりん、通称しおみるWセンターの『ヒロインとオオカミ』

これめっちゃくちゃ好きかも!イコノイジョイでは珍しいディスコ曲で、元ハロヲタとしては抗えない良さがあります!
全体に流れるハッピーで暖かいムードに自然と笑顔になっちゃいます!







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