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#551 時事・ニュース論16|原作者・出版社・脚本家を巡る権利問題について

これについても書いておきましょう。
先日発生してしまった、非常に痛ましい事件ですね。


事の顛末とは?

昨年2023年10月~12月まで日テレで放送されたドラマなのですが、原作が連載中の漫画なんですね。
まだ連載中の漫画をドラマにする中で、ドラマ独自のエンディングを作る必要があり、その辺は非常にデリケートであり、タッチーな話なのですが…
今回、原作者が意図しない形のストーリー進行が行われ、業を煮やした原作者が「この脚本では納得いかない」と、原作者自らが脚本を書いたんですが、そうすると脚本家はそれはそれで納得がいかず…
そうしたすれ違いがSNSなどで投稿され、心を痛めた原作者が結果として自死してしまうという悲しい結末となりました。

「誰が悪いのか?」などを考えても仕方ないのですが、色々な問題が今回の事件で見え隠れしておりますね。


原作者・出版社(TV局)・脚本家の関係性

まず、原作者に対し、出版社から打診があるんですね。
「あなたの漫画がドラマ化したいという要望がありました」という話です。
それは原作者も素直に嬉しいと思いますが、テレビ局はとんでもない提案をしてきたりします。

かつて阪神ファンの森田先生が、登場人物全員に阪神の選手名を付けたROOKIESという名作がありましたが、読売テレビが「巨人の名前にしてドラマ化を」という狂った打診をしたらしく、森田先生が秒で断ったというエピソードも有名ですが、テレビ局はその程度の倫理観というか「数字が取れれば漫画原作だろうとなんでもいい」というスタンスな気がします(読者も来てくれるので)

そして漫画家も、森田先生クラスであれば断れるでしょうが、
前述の通りまだまだ売れたての漫画家とかは嬉しく飛びついてしまうでしょうが、番組によっては原作者の意図しない展開を迎えたりするんです。

ここで、しっかりとコミュニケーションがとれていればまだマシなのかという気もしますが、恐らくこの辺はしっかりできてないんでしょうね。
なので今回の件も脚本家が悪いというだけでもない気がしてますし、このミスコミュニケーションが原因な気がします。

テレビ局は脚本家を雇うのですが、脚本家→TV局→出版社→原作者というルートでのやり取りになるので、脚本家と原作者は遠く、その長い経路で歪みが生まれるのでしょう。
なので、ここをコミュニケーションを強化するしかないですよね。それしか言えないです。


これから実写化はどうあるべきか?

1. 連載中の作品は扱わない

今回の事件を機に、これは徹底されるのではないでしょうか?
かつて「いいひと」という草彅君主演のドラマも、連載途中の改編を原作者が許さず連載を終了させたエピソードもあるようなので、漫画家に迷惑をかけるのは言語両断ですね。
改めましょう。


2. 原作者の意思を第一とする

これもやるべきでしょうね。
脚本(台本)は少なくとも目を通してもらったりする必要があるでしょうし、原作者の意図にそぐわない内容は改めるという工程を挟むべきでしょうね。


3. オリジナリティは出さない

上記2に通じるものですが、もう原作をひたすら順守するイメージでもよいかなと思いますが、なかなかそうもいかないようです。

よくあるのは「性別が変わる」とかですが、その辺は視聴率とかその手の兼ね合いがあるのでしょう。
かつて「こち亀」が実写からされた時、主人公の両さんは香取慎吾ではなくラサール石井を推す声が多かったのですが、彼には思想的に問題がある…というのは後の話で、単純にラサールが主役で視聴率が取れないとTV局は判断したのでしょう笑


4. オリジナリティを出して、いっそのこと別物を作る

これは原作に設定を足していき、足しまくったところで元の設定を変えるというコペルニクス的転回ですね。
この辺も頑張ったらいけるんじゃないかなとか勝手に思ってます。


まとめ

とにかく、今回の件は出版社とテレビ局においては反省すべき内容となったでしょうし、今後このような原作者の意向に沿わない実写化は流石に減っていくと思いますが…やはり無くしていきたいですね。

そしてこれまでの論と矛盾するのですが、「池袋ウエストゲートパーク」「半沢直樹」とか、オリジナルが故に良い実写化ももちろん多く存在するので、その辺が難しいですね。

とにかくこの事件は色々と考えさせられる事件でした。

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