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そして、火の鳥は再び立ち上がった。

暗い闇のどん底から。あれは冷たい死の世界だった。
黝く淀んだ石と苔が塊を成し、
うなじを垂れた曼珠沙華の花が、無色の吐息をする。
窒息する凪の狭間に、火の鳥は目を開けた。

逞しい歌声は霊を揺すぶり、金色に輝く羽翼は魂をも眩う。
ニンフたちはその光で眠りから覚め、鬼の群は喚きながら呪いをかける。
火の鳥は塵をはたきながら、ようようと昇っていく。
そして、翼を広げた。

オーーー
空気を張り裂けるような声が長引いた。
血に染まる空の色を、炎に燃ゆるその羽々が明かりを灯す。
一つひとつと、かくも鮮やかに。