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09.異邦人 ---「もう一人のわたし」より

B:「きみのふるさとの星を訪ねてみたいな。この宇宙を超えた、ものすごく遠い場所にあるけど、一生のうちにたどり着くもんなら、いってみたいな。」
A:「うん、思えば不思議だな。そんなに遠く離れているのに、君とこんな風に話せる。」
B:「奇跡としか言えないね。でもね、実は、淋しいんだよ、たとえ君と一日中しゃべりまくっても。」「特に最近、なぜか涙もろくなっている。ホームシックになったかな?」
A:「えっ!でも今きみは家にいるんじゃないか?!」
B:「そうだよ、パソコンの前で君とこうやって話しているよ。でも、だんだんとこの地球に慣れなくなっていく感じがする。もの悲し。」
A:「もしかして、きみも宇宙人なの?」
B:「どうゆうこと?この宇宙、あるいは他の宇宙に住む人はみんな『宇宙人』じゃないの?」
A:「うん、じゃきみは地球人ではない、よその人間かな?」
B:「それはあり得るよ。かつて、どこかからやって来た優しい仲間たちもこの星に住んでいた感じがする。でも今は帰っちゃったから、こんなに淋しくなったかも。」
A:「『かつて』というのは、いつのこと?ひょっとしたら古代エジプトのこと?ほら、その不思議なピラミッド、どうやって建てられたのだろう?」
B:「つい最近、幼い頃によく遊んだ公園が高層ビルになったの。友達とバイバイした夕焼け空も今は高性能材料に遮られた。それだけではない。あの頃、あんなに可愛かった微笑みが、みんな出かけちゃった、燕のように。」
A:「そうね。あの子たち、どこへ行ったのだろう?」
B:「若者たちが髪を切った頃から、この町は年を取り始めたの。だんだんとつまらなくなっていく。」「姿こそ見えないけど、感じ取っていたの、かつてここにいた優しい『仲間』を。あの頃は何もかも親切だった。わたしが少しの間旅に出て、再び帰ってきたら、まるでかの浦島のように、ふるさとの異邦人となったよ。」
A:「まあ、それは情けないな。でも何で皆行っちゃたんだろう?」
B:「しばらくの間しかいなかったかもしれないね。そういえば、そろそろ私も行かなきゃ(笑)」
A:「そうね、空が一面オレンジに輝く、髪を伸ばした若者と親切な子供たちが住む星を訪ねよう。あっ、それ、わたしの星じゃん!」