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ボクは愛に殺される(完結)

【十章/最終章】

結局、人間という生き物は、
代償なしには何かを得られないのかもしれない。

ボクの身の丈に合わない幸せを得たから、
こんな地獄に突き落とされたんだ。

ボクはこの先、この世界で、どう生きていけばいいんだろう。

ここには何もない。
誰もいない。

好きな人も、嫌いな人も、誰もいない。

白い光が、天から差し込んでいる。
ボクは地獄じゃなくて、天国に行く人間だったのかな。

なんて思っていたら、
点滴のパックが見えて。

ああ。

また、消えられなかった。

親友と同じ場所には辿り着けなかった。

そして、みちゃんもいない。

こんな世界で生きていくなんて。
どうしたらいいんだろうね。

わかんないや。

命以外の全てを失ってしまった。


12時間も自発呼吸ができなかったらしい。

退院して家に帰れば、AEDのゴミ。

はは…そこまでいけたなら、あと少しで。
あと少しでこの苦しい世界とサヨナラできたのに。

ボクの生きる世界は、これからもっと暗く暗くなっていくんだろう。

裏切られ、傷つけられ、見捨てられて。

そうしてどんどん、自分を嫌いになって。

それでもボクは、人間を、世界を、

嫌いになんてなれない。

無限の孤独を味わうくらいなら、
また絶望の淵に落ちることになったとしても。

また人を信じ、愛し、腕を切り、内蔵を傷つけ、死んで、またあの天井の白い光を見ることになるほうが、マシだ。

あと何回これを繰り返したら、
親友は天から手を差し伸べてくれるのかな。

きっと何回繰り返しても、
世界を嫌いになんてなれないんだろう。

思えばボクを殺してしまうのは、

いつも、ボクが愛した人だった。

【完】



【エピローグ】

死んでいく人間は、何度も見てきた。
何人も知っている人が、自ら命を絶って逝った。

ボクには何が足りないんだろうね。
結局いつも、あと一歩のところで向こうに行けないんだ。

こんな世界、早く抜け出したいだなんて。
とっくの前から思ってることなのにね。

結局、ボクはなんでもないただの弱虫で。
弱いから人を好きでいるしかなくて。

独りでいることを選ばなくて。
自分と向き合う時間を作らなかった。

孤独を知る者は幸せを知る者だけだと誰かが言っていた。

ボクは、本当は幸せなのかもしれないけれど。
幸せな時は、確かにあったのだけれど。

その目の前の幸せな世界を、
"幸せそのもの"に壊されていくから、
それは無かったことになって、
ボクには、
本当に、
死ぬ勇気すら、
何もかも、

どうしようもないね。
そんな人間の、自分語りでした。

【ボクは愛に殺される 完】

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