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三線を片手に戦前・戦後を生きた沖縄おんな・山入端つるの自伝

本書の主人公、山入端つるは、1906年(明治39)に、沖縄北部の屋部村(現・名護市)で生まれた。男3人、女3人の末娘であった。

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8歳の時に父を亡くし、家族が貧困に陥ったため、つるは11歳で身代金付きの奉公に出される。そして13歳で辻の長姉・ナベのもとに引き取られるが、それを契機につるは、三線を習い、芸妓として成長していく。

19歳のとき、つるは辻を出奔。以後、三線を片手に職を転々としながらの渡世生活を送るようになる。

宮古、奄美、大阪、東京。

そして戦後に移り住んだ、沖縄移住者の多い神奈川県川崎市で、つるは沖縄芸能の発展に寄与。川崎市では無形文化財として沖縄民俗芸能が指定されているが、その背景にも、つるの多大な貢献があった。

つるは、東京で琉球料理店「颱風」を経営していたが、1974年に沖縄に引き揚げ、余生を郷里で過ごした。

そして2006年、百歳の天寿を全うした。

そんな一人の女性の聞き書きを、歴史学者・東恩納寛惇がまとめた異色の一代記が本書である。1959年に新聞連載され、1996年に書籍化、そして、このたび新版として本書が発行された。

公式ページはこちら。

https://borderink.com/?pid=162396244

時代とともに読み継がれてきた名著の復刻である。

記録作家である上野英信が記した『眉屋私記』の主人公、蔓栄は、山入端つるの兄で、上野はつるから多くの調査を行なっている。

その『眉屋私記』を顕彰した文学記念碑が、ふるさと名護市屋部に建立されたことは記憶に新しい。

この節目の年にあらためて、山入端家の波乱万丈の物語と、鮮烈に書き残された沖縄の近代史を知ってほしい。ぜひご一読ください。(え)