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首相を騙した日本の官僚 ー 普天間移設妨害事件


鳩山政権の挫折

「最低でも県外」

2009年に民主党への政権交代が起きた際、鳩山由紀夫さんは普天間基地を「最低でも県外」へ移設したいと宣言しており、首相就任後、さっそくこの問題に取り組みました。

人口密集地にある普天間基地を、沖縄県外へ移設する計画。これは無理なことではありませんでした。アメリカ軍自身も、沖縄の米軍基地が中国の攻撃に対して脆弱すぎるため、グアムやハワイへの移転を検討していたからです。
もし中国とアメリカが戦闘に入れば、中国は弾道ミサイルなどで沖縄を攻撃できますが、そうした攻撃に沖縄の基地は耐えられないのです。

これはアメリカの軍事シンクタンク「RAND研究所」も2008年に指摘していたことで、鳩山さんも本の中で言及しています。

誰がこの国を動かしているのか (詩想社新書)

鳩山さんはそういう事情も知った上で、普天間基地を沖縄県外に移設することは十分可能だと考えました。
民主党政権内部には、必ずしも鳩山さんの方針に同調しない勢力もあったようですが、この「最低でも県外」は政策の目玉になりました。

鳩山さんは、候補地として鹿児島県の徳之島を検討していました。これは、徳之島の人たちから「高齢化が進み、この島は生き残れない、活性化させるためには基地の誘致を」という話を聞いていたからだそうです。
徳之島に誘致を希望している人たちがいる事実は、県外移設に大きな可能性をもたらしました。

沖縄本島と徳之島

挫折した徳之島への移設

結論から言うと、こうしたチャンスにも関わらず、県外への移設は実現できず、辺野古新基地の建設が続けられることになりました。鳩山さんは沖縄の人たちに謝罪し、総理の職を辞しました。

ところが、後に明らかになった経緯を見ていくと、たいへんな事実が浮かび上がってきます。
それは、首相が内密に進めようとした徳之島移設案を、妨害のためマスコミに暴露した官僚がいたこと。
そして、官僚が虚偽文書で首相を騙したということです。

日本の官僚が、なぜそんなことをしたのか。官僚たちは誰のために仕事をしているのか。


県外移転断念への経緯

官僚の裏切り

徳之島に候補地を定めた鳩山さんは、2009年4月6日、外務省と防衛省から幹部を二人ずつ首相官邸に呼び、秘密の会合を持ちました。そして「徳之島移設案」を説明し、協力を求めたのです。

みんなに官邸に来てもらって、そこでお酒も出したんですよ。二合ほど呑んだと思います。ずいぶんと前向きになってくれて、「やりましょう!」というとてもいい雰囲気になった。
そこでいちばん大事なことは、このメンバーが互いに情報を交換しながら、それを外部に漏らさないことだ。漏れた瞬間、この話は潰されてしまう恐れがあるから、それだけは気をつけてくれといいました。「はい、わかりました」ということで、みんな上機嫌になって別れたわけです。
ああ、この連中はやってくれるんじゃないか、期待できるなという気持ちになりました

鳩山さんの発言:第80回UIチャンネル(2014年12月8日)[動画の20:00あたりから]

ところがその翌日、朝日新聞の夕刊一面に、その秘密会合の内容がリークされたのです。

これはショックでした。自分が実現したい政策を、いちばんの腹心だと思っている人たちに伝えたら、すぐに裏切られたという話ですからね。
もうこの交渉は彼らには頼れないと感じました。メンバーのなかに、明らかにこの案を潰そうと思っている人間がいる。そのことがわかったので、精神的なダメージは非常に大きかったですね

鳩山さんの発言:第80回UIチャンネル(2014年12月8日)[動画の21:00あたりから]

このリークによって、寝耳に水だった徳之島の人たちから猛反発が起き、反対運動が巻き起こります。
事前に誘致の希望が出ていたことなんか、大多数の徳之島住民は知りませんから、政府が勝手に徳之島に押し付けようとしているのだと感じたのです。
鳩山さんは「これも民意である」と住民の反対意見を尊重し、徳之島案を強行しませんでした。

虚偽の説明資料

そうした騒動が起きている2010年4月19日、鳩山さんのところに3人の官僚がやってきます。そして、彼らは「普天間移設問題に関する米側からの説明」という資料(極秘)を鳩山さんに示し、徳之島への移設は不可能であることを説明したのです。
その資料が、鳩山さんの手元に残っています。

普天間移設問題に関する米側からの説明(1枚目)
普天間移設問題に関する米側からの説明(2枚目)

資料によると、要するに「移設先は沖縄本島にある訓練場との距離が65海里(65nm=120km)以内でなくてはいけない」ということが、米軍のマニュアルで定められているから、徳之島ではダメだという話になっています。
(徳之島だと100nmを越えてしまいます。)

これがアメリカの意向であるという説明ですから「どのみち県外移設は無理」だと、官僚たちは鳩山さんを説得したわけです。


偽文書であることが発覚

安倍政権の佐賀移設案

普天間移設問題が起点となって、鳩山さんは首相の座を降り、やがて民主党も政権から退くことになりました。
しかし、その後の自民党政権では、安倍首相が「普天間の移設先候補に佐賀を考えている」と言い出します。

それを聞いた鳩山さんは「徳之島よりずっと遠いのに、なぜ佐賀が候補地になるのか?」と不思議に思うわけですが、官僚が持ってきた説明資料は「極秘」なので、期限の切れる5年後までは内容を明かせません。

そこで、説明を受けてから5年が経ったあと、鳩山さんが外務省に「この資料の内容はどうなっているのか、改めて説明してほしい」と尋ねます。
ところが驚いたことに、外務省では「極秘文書の管理簿にこんなものはありません」と返事をしたというのです。

外務省が公文書を偽造していた

鳩山さんからこの事実を聞いた立憲民主党の川内博史さんは、外務省北米局の日米安保課を通じて、鳩山さんが説明を受けた「マニュアル」が存在するのか、正式な外交ルートで問い合わせます。
すると、アメリカ大使館から「そのようなマニュアルは確認できない」という正式回答が返ってきたのです。

川内さんは、2015年10月から外務省に対して、文書の出所や説明者について確認していますが、外務省では不自然な異動が行われ、未だに誤魔化されたままになっています。

その間、川内さんは、鳩山さんが残していた文書と、確認されている真正の公文書の「極秘」印の照合鑑定を自費で依頼し、それらが同一であることを確認しています。つまり、鳩山さんが見せられた偽文書は、明らかに外務省で作成されたものなのです。

こうなると、もはや外務省や防衛省の官僚が、意図的に鳩山首相を騙したと断定せざるを得ませんから、問題は重大です。

2018年11月1日の衆院予算委員会で川内議員が問い詰め、外務省北米局参事官を参考人として要求しますが、自民党内閣はしらばっくれるのです。


沖縄に基地を置きたがっているのは誰か

オバマ大統領もグアムへ移転と発言

自民党が政権を奪回した第二次安倍政権のもと、2015年4月に日米首脳会談が行われました。
会談後の会見で、オバマ大統領は「沖縄からグアムへの移転を推進する」と明言しましたが、なぜかその同時通訳は「沖縄の普天間基地の移転について、 より柔軟に対応したいと思います」となっていました。
原文とはまったく異なる内容で、意図的な改変をNHKが事前に用意していたとしか思えません。

このオバマ発言の後で、共に会見に臨んでいた安倍首相は「普天間飛行場の危険性を辺野古移設によって」と、辺野古に決めた発言をしています。

多くの人がNHK同時通訳の「誤り」を指摘すると、NHKは4月29日の放送で「誤訳」を謝罪しましたが、オバマ大統領のスピーチ文から考えて「誤訳」したと受け止めるのは難しいです。
自民党政権が辺野古にこだわっており、その意を受けたNHKが、オバマ大統領の「グアム」発言を改変した疑いが強いと思います。

NHKが「誤訳」を謝罪した旨の報道

誰が得をするのか

日本の国益を考えれば、在日米軍基地の存在による地元の負担や、日本政府が米軍駐留のために支払っているコスト(「思いやり予算」など含む)をなくすことが必要です。
在日米軍基地が存在することは、北朝鮮や中国との戦争に巻き込まれるリスクを増やすだけで、日本国民にとってのメリットは非常に小さいのです。

また、辺野古海岸は地盤が悪く、移設のための基地工事がいつ終わるのか、見当もつきません。工事が延々と続き、半永久的に国の予算が垂れ流されるだけではないかという、強い疑問があります。
巨額の金を土建業者などに垂れ流し、美しい自然の破壊を続けているだけなのです。
そして、そうした業者は自民党に献金を続けているだけでなく、そもそも自民党の國場幸之助衆院議員なんか、地元の土建業者である國場組の一族です。

辺野古受注業者から献金

コリアゲート事件との相似

また、在日米軍基地、とりわけ海兵隊基地の存在は、北朝鮮との戦争が終わっていない韓国にとっては重要です。
韓国政府が米軍基地を自国内に留めようとした政界工作事件として、1976年に発覚した「コリアゲート」が知られています。
この事件では、在韓米軍を撤収させようとしたニクソン政権の判断を覆すため、大韓民国中央情報部(KCIA)が実業家の朴東宣と統一教会を通じて、米国政界に賄賂を含む数々の工作を行いました。
この事件に関する米下院の報告書は「フレイザー報告書」と呼ばれ、統一教会の活動に関する貴重な調査資料になっています。統一教会は韓国政府(KCIA)と結びついた反共活動を展開しており、アメリカ政府が工作の標的になった事件が、コリアゲートでした。

この事件を知っていると、普天間移設を妨害する活動に関しても、やはり韓国の影を疑ってしまいます。
実は「鳩山さんを追い落とした高級官僚の1人はガチ信者だった」という証言もあり、真偽の確認は困難なものの「やっぱりそうなのか」と思わざるを得ません。
統一教会は全国の大学に「原理研究会」(CARP)という組織を持っており、そこから官僚や政治家秘書など、多くの人材を政官界に送り出しています。高級官僚に信者がいても、なんの不思議もありませんし、そういう人が「普天間移設の妨害工作」を行ったというなら、とても納得できる話です。

これが事実なら、日本国民に対する重大な背信であり、コリアゲート事件に匹敵する大スキャンダルなのですが、自民党政権の圧力下にある日本のメディアは、あまり追及も報道もしていません・・・。

統一教会問題は決して単なる宗教問題ではない

改めて訴えておきたいのですが、統一教会問題は単なる宗教問題ではありません。
各メディアでは、多額の献金や、教義に基づく児童虐待、家族の破壊など、信者の被害が大きく報じられています。また、そうした教団と政治家の密接な関係が報じられ、日本の国民は改めて「政治と宗教」という問題に目を向けています。
もちろん、これらのことは重大な問題ですが、そこだけで問題が閉じてはいないのです。

過去の「コリアゲート事件」や「イラン・コントラ事件」に見られるとおり、統一教会の持つ様々な組織や信者は、北朝鮮と戦争状態にある韓国の実利のために、アメリカや日本の政治に直接影響を及ぼしてきています。
僕は、普天間問題に影響を与えた可能性は、非常に高いと思っています。

日本の政治や安全保障の問題を考えるとき、まず考えるべきことは、日本は「朝鮮半島の南北対立」における重要なプレーヤーであり、韓国やアメリカに利用される立場である、ということです。

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