男親の子育てについて科学的に分かってきたいくつかのこと
子どもが生後6ヶ月になった時点で、父母に生活での役割の重要度(親、働き手、友人など)を評価してもらった。その結果、「父親」に多くの比率をあてた男性は、そうでなかった男性より自尊心(自己肯定感)が高い傾向にあった。ところが、女性の場合はその逆で、「母親」の比率が高いほど自尊心が低い傾向にあった。
1980年代の調査結果であるが、これは現代にも当てはまるのではないかと思う。
本書にはこうある。
自分自身に満足している男性は、他の主要な心理的役割を放棄することなしに、父親というアイデンティティに対して、より多くのエネルギーを注ぐことができるようだ。(中略)エネルギーを注いだ分、父親は親子関係から何かしらのものを取り戻す。それがまた、彼らの自尊心をいい方向に保つ助けになるのだ。
この結果からすると、女性はより社会に、男性はより家庭に、深く関われるような環境にすることで、夫婦ともに自尊心や自己肯定感が高まるということかもしれない。
育児に取り組んでいる父親の多くが、子どもの夜泣きに悩んだり苦しんだりした経験があるだろう。男性である著者も同様で、彼のエピソードと文章が本書ではもっとも印象深かった。
物語を読み聞かせしたり、くすぐったり、レスリングごっこをしたりしながら、目がとろんとしてくるときをうかがう。そうなればそのまま眠りにつかせてしまえるし、自分自身も救われるのだ。
子供がまだ赤ん坊だったときのことで思い出すのは、こういう記憶だ。眠れぬ夜を何度も過ごしているときは、これが永遠に続くのではと思うものだが、そんな時期は突如として終わりを告げる。子供は成長し、真夜中に気を落ち着かせる方法を自分で見つけていく。(中略)
眠れぬ夜を過ごした翌日に職場でどんなことが起きたかーーーへとへとだったとか、かいぎをすっぽかしたとかーーーを、私は何一つ思い出せない。でも、子供と過ごした時間ははっきりと覚えている。
さて、この夜泣きに関してだが、こんなことが紹介してあった。
父親よりも母親の方が昼夜ともに子供の世話をするが、父親が子育て全般により多く関わるほど、乳児の夜間覚醒が少なくなる。
【参考文献】
Infant Sleep and Paternal Involvement in Infant Caregiving During the First 6 Months of Life
また、子どもの発達における父親の役割としてちょっと驚くような話もあった。
驚いたことに、父親は子供の言語発達に関して、たんに重要であるだけにとどまらず、母親よりもさらに重要であることがわかったのだ。(中略)しかもそれは両親の教育水準や子育ての質を「上回る」影響を与えていた。
本書では、このように人間も含めた動物実験などから得られた知見を紹介してあるが、タイトルから想像するような「父親のための育児本」ではない。ハウツーを期待して読むとガッカリするだろう。