今週のおすすめ本 vol.9
店舗とオンラインストアで取り扱っている本から、おすすめのタイトルを紹介するマガジン「今週のおすすめ本」。
今回は、これまでと少し趣向を変えて、取り上げる本を1冊に絞って、詳しく中身をご紹介したいと思います。
◎クック・トゥ・ザ・フューチャー 3Dフードプリンターが予測する24の未来食
著者は、食品学を専門にする大学教授・石川伸一さんと、イラストレーター・ライターの石川繭子さん。デザインやアート系の本を多く取り扱っているグラフィック社から出版されました。
本の内容を紹介する前に、ちょっと余談。
みなさん、「寿エンパイア」というグルメ漫画をご存知でしょうか。
寿司職人である主人公・松田と対決するライバルの1人に、3Dプリンターや培養肉を使った「未来寿司」というメニューで挑んでくる盛山というキャラがいます。
「未来寿司」は通常の寿司とは全く異なる、キューブ型のフラットな形状。ネタがハニカム構造になっていて独特の食感があるなど、常識を覆すものだったのです。「SUSHI SINGULARITY」というプロジェクトとコラボしたもので、ウェブサイトには色々な「未来寿司」のイメージが掲載されています。
バトル漫画における「データキャラ」って大体が頭でっかちで嫌味なやつで、噛ませ犬的な役割になりがちなのですが、盛山には一貫した主義主張があり、勝負も正々堂々と挑む好人物でした。
「未来寿司」には、生魚を食材にしないことにより「食べるために生きものを殺す」という問題の解決や、絶滅種の食材を復活させられるといった可能性が秘められおり、対決では主人公に敗れてしまったものの、とても印象的なエピソードになっていました。
「寿エンパイア」のこのエピソードを読んで以来、「テクノロジーと食」というテーマに興味が湧いていたので、「クック・トゥ・ザ・フューチャー」は個人的にも「こういうの待ってた」と言いたくなる1冊でした。
「クック・トゥ・ザ・フューチャー」のサブタイトルは、「3Dフードプリンターが予測する24の未来食」。現在、3Dフードプリンターは市販用のものも世に出てはいるのですが、まだまだ黎明期。それでは、現状でできることから少しイメージを膨らませて、「”2055年”にはこんなことができるようになってるかも」と想像してみようというのが本書の趣旨です。
3Dフードプリンターによる食の変化には、4つのステージがあると書かれています。
1.かたちが変わる
2.原材料が変わる
3.時空間が変わる
4.食生活が変わる
この変化によって、例えばどんな食べ物が生まれるのかというのがイメージ付きで紹介されています。
例えば、「かたちが変わる」の例として挙げられているのが、「物語チョコバナナ」。
バナナの断面にチョコレートでイラストが描かれていて、切っていくことで物語が楽しめるというわけです。
「食生活が変わる」の例として挙げられているのは、「登山遠足のアイス」。
小型の携帯用3Dプリンターが、登っている山の形状を記憶し、それをアイスにして出力してくれるという仕組み。
まさに魔法のようなアイデアですが、こういったテクノロジーが登場するなんて夢物語かというと、個人的にはそうも感じませんでした。子どもの頃に読んだ「ドラえもん」に登場したひみつ道具のいくつかは、もう現実に存在していますよね。スマートフォンなんかはその代表ではないでしょうか。
食についてのイノベーションは、きっとこれから起きていく。「クック・トゥ・ザ・フューチャー」はそんなことを感じさせてくれる1冊です。
本書では、こういった想像上の未来食のメニューだけでなく、コラムや日記調のテキストなど、読み物も充実しています。
本書を読みながら、食の未来に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
今回はここまで。
取り上げた本は、店頭、オンラインストアで販売しています。在庫数は限られているため、売り切れの際はご容赦ください。
本の取り置きや、在庫がない本の取り寄せも承りますので、お気軽にお申し付けください。それではまた次回。
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