今週のおすすめ本 vol.19
店舗とオンラインストアで取り扱っている本から、おすすめのタイトルを紹介するマガジン「今週のおすすめ本」。
今回は、稲垣えみ子さんと大原扁理さんの対談本『シン・ファイヤー』をご紹介します。
「ファイヤー(FIRE)」といえばビジネス書でよく目にするワードですが、sceneにはビジネス書のコーナーはありません。「FIRE」の関連本なんて今まで取り扱ったことはないし、僕自身も読んだことはないのですが、そんな当店でもおすすめしたい1冊になっています。
「FIRE」って何?
FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取ったもので、「経済的自立」と「早期リタイア」を意味する言葉です。投資をしたり、支出を抑えながら人生の早い段階で一定額の貯蓄を手に入れて、あとは仕事を引退して気のままに暮らそう、というのがざっくりした内容です。
お金の不安を無くすためにお金を貯めるという矛盾
一生を過ごすのに必要なお金を早いうちに手に入れてしまえば、あとはお金の不安から逃れられる、ということなのですが、本当にそうなのでしょうか?何が起こるか分からない今の世の中で、お金だけあれば不安なく生きられるとは思えません。そもそも、「お金の心配」から逃れるための手段が「心配がなくなるまでお金を貯めること」というのが、根本的に矛盾しているような気がします。
では、本当の意味で「お金の心配」から自由になるための「シンのFIRE」=「シン・ファイヤー」を見つけようというのが、本書の主題です。
それぞれ異なる方法で経済的自立を果たした、個性的な二人
稲垣えみ子さんと大原扁理さんの二人の対談形式で進んでいく本書。ここでお二人がどんな方なのかをご紹介します。
稲垣えみ子さんは、1965年生まれ。朝日新聞の記者を務めるエリートサラリーマンでしたが、40代から自分の生き方に疑問や不安を感じ、50歳で会社を退職。ワンルームマンションに住み、家電などを手放すことで生活をダウンサイジングさせながら、執筆活動をしています。
大原扁理さんは、1985年生まれ。フリーターをしていた25歳の時に、東京の郊外の低家賃のアパートに引っ越し、週2日の仕事のみ、年収90万円で隠居生活を始めます。一時期は台湾に移住していましたが、この本が書かれている時は親の介護のために日本の実家で生活をしているようです。
詳しい経緯や今の暮らしぶりなどは対談内で語られていますので、気になった方は本を手に取って読んでみて下さい。
世代も歩んできた人生も全く異なる二人ですが、行き着いたところはなんだか似ている。「FIRE」が目指すところの「早期引退」を、多くのビジネス書が説いているのとは全く違う方法で達成している、というのが面白いところです。
「結局なんだかんだいってお金だよね」の思考から抜け出す
お金にとらわれない生き方をする、といっても、稲垣さんと大原さんの人生はなかなかに特殊で、正直簡単に真似できるものではありません(笑)。
どのようなかたちで「ファイヤー」を実践していくかは、「FIRE」のように画一的な方法ではなく、読んだ人がそれぞれに考えていくことなのだと思います。二人がお金についてどのように考えているのかを知ることが、自分にとっての「ファイヤー」を見つけるヒントになるかもしれません。
「FIRE」に欠けているものを補完する「シン・ファイヤー」
多くの人がなぜ「FIRE」を目指すのか。職場の人間関係の悩みや、先の見えない人生の不安などから解放されたい、という願いがあるからだと思います。しかし、「FIRE」が示しているのはいわゆる「財テク」で、「FIRE」を達成すれば不安や悩みがなくなる、といったことは担保されていません。
「幸せになりたい」というのが本当のゴールで、お金の問題はそれを解決する手段の一つでしかない。では、「幸せ」って一体何なんなのか。「シン・ファイヤー」では、まずそれを考えることがスタートだと二人は語ります。
今回は、稲垣えみ子さんと大原扁理さんの『シン・ファイヤー』をご紹介しました。触れているのはほとんど冒頭部分のみで、全体では350ページとかなりボリュームのある本ですが、対談形式のためとても読み進めやすい1冊になっています。
取り上げた本は、店頭、オンラインストアで販売しています。在庫数は限られているため、売り切れの際はご容赦ください。
本の取り置きや、在庫がない本の取り寄せも承りますので、お気軽にお申し付けください。それではまた次回。
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